いまどき、LAにもこんな店の名前はないだろう。
「侍」。
だが、その外観はどう見ても和風スタイルではなく、明らかにダイニングバー。
何故、この店に入ったかというと、他に行くところがなかったから。
「一番搾りガーデン」を出て、神谷町駅に行く途中、居酒屋はなく、この当時絶頂を迎えていた「オレのフレンチ」を通り過ぎて、この「侍」という店に迷い込んでしまった。
我々が入店したときには、他に客の姿もなく、「いよいよこれは変な店に入ってしまった」とおおいに後悔したのである。
しかも、生ビールを頼むとサントリーの「プレモル」が出てきて、いよいよ「最悪だな」と。しかも550円。入店してから5秒で、自分の運命を疑いたくなった。
せっかく、おいしい「一番搾り」を飲んできたのに、何故嫌いなビールで〆なければならないのかと。
メニューを見て、驚いた。
どうやら、イタリアンのバーらしい。
パスタやピザ、カルパッチョなどがメニューに並ぶ。だが、これらも「一番搾りガーデン」の魅力的なメニューと対比してしまうと、遠くに霞んでしまいそうな貧弱さだった。
もしかすると、それは気分的なものなのかもしれない。
でも、
「有機ズッキーニとフルーツトマトの柚子マリネ」(500円)
「キタアカリと乾塩ベーコンのポテトサラダ ~黒トリュフの香り~」(500円)
「黒胡椒コンビーフと米粉のバゲット」(500円)
「白身魚のさっくり揚げ 一番搾りのころも」(700円)
「北海道生乳使用 カニクリームのひと口コロッケ」(500円)
といった「一番搾りガーデン」のメニューを眺めた後に、
「鮮魚のカルパッチョ」(680円)
「スパイシーポテト」(580円)
「海老と小柱のアヒージョ」(780円)
「鮪とアボカドの焙煎ごまマヨネーズ和え」(880円)
「ゴボウチップス」(680円)
という「侍」のメニューを見ると、どうしても貧弱さを感じてしまうのだ。
いずれにせよ、あまり食指が進まないものばかりだった。
試しに「鮪とアボカド」を頼んでみたが、出てくるまでに相当の時間を要した。我々の他に客は誰ひとりいないのに。
家に帰って、この店の情報を探した。
「食べログ」の点数は3点にも届かない評価だった。
「和×伊で餐すアットホームなダイニングバー」。
「食べログ」に書かれた同店のコピー。
アットホーム?
求人欄の注意点として、近年よく言われるキーワードが「アットホーム」である。
評論家に言わせると「それ以外に取り柄がない」から。だが、実際はアットホームどころか、近年はブラック企業の隠れ蓑として「アットホーム」という言葉が多用されているという。
アットホームという言葉は実に便利らしい。
ようやく出てきた酒肴に我々はすでに白けてしまっていた。
スポーツバーにもなるというこの店。我々の気分はイタリアのアッズーリか。それとも日本代表のサムライブルーか。
とにかく、「一番搾りガーデン」で昂揚していた気分はすっかりブルーなものになってしまった。
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