



・・・客間の 暖炉 には赤々と火が焚かれていた。 (中略) 火は薪にまつわって煙と共に、 身を撚るように募るかと思えば、 まだ黒い薪と薪の間に、 静かな明るい安息に満ちた火の宿りを見せた。 (中略) 火は或る薪には衰えかけて、 細かい亀甲なりの尉が、白い羽毛の堆積の ように不安に慄えている下から、 穏やかな赤い火色を万遍なく透かしていたりした。 薪の堅固に組んだ紐帯が、1番根元で崩れかけて、 危うい均衡を保ったまま、 空中に浮かんだ砦のように、 しばし火に輝いて、厳かに見える刹那もあった。 【三島由紀夫著 「天人五衰」~「豊饒の海」 第4巻】 |


気温は、10度ちょっと。
昨日とさほど変わって
いる訳ではありません。
大きく違うのは太陽が
その光を出し惜しみして
いるという事。
同じ空なのに、
いかにも寒々しい
空になっています。案の定・・
お昼頃にはポツポツと雨が・・。冷たい雨です。
ただ、こんな風に記していますが・・
反面、こんなお天気だからこそ、
妙にほっとしている私がいるのも事実です。
昨日のようにお天気が良いと、
家の中にいてもやけに落ち着かなくて。
そんな時、本来の外出好きな?
私の姿を垣間(かいま)見た気がして、思わず苦笑い。
今日などは心おきなく? 家で楽しむ事が出来ますから。


【梅の記事】 以降、
お香の香りを楽しんでいます。
そう言えば、この季節だけは
不思議にお香なのですよね。
他の季節は、
すっかり忘れていますのに。
そんな事もあって、
お香の香りは私にとって、
そのまま2月の香りとなって
しまったという訳です。
細~く立ち昇る一筋の青い煙。
今日は薔薇のお香を。
本物の香りです。
ストーブの上には、
やかんのお湯が、グツ、グツ・・
~と規則正しい音を
響かせています。
この空間。
あまりにも寛いでしまって、
ついうとうとしてしまうのが
難点ですけれど。眠りへの最高のプロローグ。
それにしても三島由紀夫の今日の引用文。
暖炉の火の情景を描いたものですが、
これ程の名文を知りません。
ふと思ったのですが、もしこれを英語に訳したとして、
果たして作者の言わんとしている事が正確に伝わるのか・・。
甚だ疑問です。
氏の文章も然る事ながら、改めて日本語の豊潤な語彙にも。
今日は、こんなお天気ですので、
春・・チューリップの先取りです。
桃の香りのフレーバーティーと共に。
春まで、もう少しの辛抱ですね。