「20年前に行った事があるけれど、新聞に出ていた文学館って、最近はどうなってるの?」
という義母のひと言で、
折しも前橋文学館で開催される「リーディングシアター」に、
義母を連れ立って行くことにした。
リーディングシアターなるものが、どんなものかを知らないだろうと思っていたが、
地元紙を毎日、隅から隅まで読んでいる義母のこと、
説明せずとも充分、理解している様子…
ただ、1つ気になったのは
高齢者特有の聴覚障害を持っている義母に
果たして、どのくらい聞こえるかだ。
開場30分前に入り、席を探す。
「私は右側がいいの」
という義母のために、なるべく前の方、上手側に席を取った。
開演直前、
「 声を鍛えている方々ばかりなので、きっと大丈夫ですよ」
と義母の耳元に話しかけると
こっくりと頷き、嬉しそうに微笑んだ義母だったが、
始まって30分くらい経った頃の表情は
淋しそうだった。
( やはり、聞こえていないんだ…)
高齢者の難聴には、
マイクを通しても聞こえない音がある…
その事を私は、いつも行っている高齢者施設でのボランティア演奏で経験している。
義母の場合も、やはり、マイクで拡声した音は聞き取りづらいらしい。
終わってから
「 聞こえていましたか?」
と訊くと
「半分くらいかな…」
と答えた義母だったが、
きっと、それは私への気遣いだ。全然聞こえなかった、とは言いづらいのだろう…。
「せっかく来たんだから、館内を見学して帰ろうっと」
と明るく言う義母のあとについて、
「月に吠える」関連の展示を見て回る...。
アニメの展示を後半から見ていた私が
「これは、何でしょうね。朔太郎の事をアニメ化したんでしょうかね?」
と義母と話しかけたとき、
たまたま横にいたスラリとした大学生風の女子が
「 朔太郎をアニメ化したわけじゃないんですよね」
と、答えた。
間違った私の解説に我慢ができなかったらしい…
ひと通り説明してくれたが、
正直いうと、ややこしかった…💦
礼を言ってから、
「要は作品からインスパイアされて描いたアニメってことかしら? … あなたは、ここの方?」
と訊くと、
「いえ、単にファンなだけで…」
と言いながら説明時の真剣な表情とは対照的な、ややはにかんだ表情で、
「うわっ、どうしよう!」
と、恥ずかしそうに笑った。
マニアックな大正ロマンファンや文学ファンしか行かないイメージを持たれがちな前橋文学館に、
若者が興味を持って集うのは、とても良い事だ。
街の活性化にもつながる。
思えば、
朔太郎は3年前に亡くなった義父の、青春時代からの“憧れの人”であった。
マンドリンも朔太郎の影響で始めたらしく、
詩を書いたり、エッセイを書いたりするのが趣味だった義父は、
自分のガソリンスタンドの看板に、
勝手に『広瀬川』を使い、
あとで聞いた話だが、
著作権の問題で物議を醸したこともあったらしい…。
「お父さんが元気で、ここに来たらさぞかし、喜んだでしょうねぇ」
義母にとって、朔太郎は義父の思い出の中に存在している。
そういえば私も、数年前、
この朔太郎のブロンズ像からインスパイアされてラジオドラマのプロットを書いたことがあった。
時間がある時に、脚本化できないものか…。
今年は、「月に吠える」発表から100年の記念すべき年なのだそうだ。
今日は、朝から曇り空 ☁️
しみずゆみ 🤔
