講演で訪れるのは3年ぶりの南牧村。
早く着きすぎたので、
会場に行く途中にある、
道の駅「オアシスなんもく」に立ち寄った。
時間潰しに、あれこれ見て回っていると
目の前にカメの甲羅のような不思議な形のパンが…。
触ってみるとズッシリと重く
その上、まだ温かい。
とりあえず、他の手作りパンや特産の墨パイなども見てから…と思っていると、
正面の出入り口から
カラフルな中折れハットをかぶった細身のオジサンが大きなハッポースチロールの箱を抱えて入ってきた。
そして、
例の“変わった形のパン”の前に行って箱から出したパンを並べ始めた。
( もしや、この人が作った? )
他の商品を見ながら、さりげなく様子を見ていると
オジサンはレジのところに行き、
「今日は、これで最後」
と行って、
レジにいた男女のスタッフと世間話を始めた。
店内には、
私、ひとり…。
パンを買うのか買わないのか…気にしているようにも見える。
菊芋のコーナーで、立ち止まって
( どうやって、食べるんだっけ?)
と考え込んでいると
オジサンが
「最近は交通事故より、風呂で亡くなる人の方が多いらしい」
と、急な冷え込みによるヒートショックの話しをしているのが聞こえた。
なんとなく、客の私が買うのを待っているようにも思えた。💦
店内を一周して、
最後に例のパンを2つ手に取ってレジに行くと、
オジサンが
「食べましたか?」
とポツリと私に訊いてきた。
「いえ、初めてなんですけど美味しそうだったから」
というと、
オジサンは、満足そうに頷いた。
飄々とした雰囲気の不思議な人だった。
職人肌という言葉が当てはまる印象だ。
講演会の会場に着き、
商工会の職員にパンの話しをすると、
「バターなどの材料にも相当こだわりがある人ですよ」
と教えてくれた。
帰宅してから、
食べてみると評判どおりの、
生地にしっとり感と粘りがあって、その弾力性にまず驚かされる、
そして噛めば噛むほどに、ほんのりとした甘さが広がってくる…
土日に行くと売り切れで買えないという理由がわかるような気がした。
ホンモノの“とらおさん”に出会えたのも、
きっと何かの縁に違いない。
ここでしか買えないものが、ここ南牧村にはあるのだ。