明日30日から始まる日本シリーズ、中日対ロッテ。地上波での全国中継が行われないなど世間でいうところの「不人気カード」、あるいは「3位のチームが日本シリーズに出場することの賛否両論」などあり、そっちのほうで話題となるカードである。
さてこの組み合わせ、落合監督対西村監督という、川崎球場を沸かせた(まあ、沸かせたというほど観客がいたかどうかは別の話として)元ロッテ・オリオンズのチームメイト同士の対戦。落合監督の「渡り歩いた人と一筋の人」という表現が面白い。戦前の予想では落合監督率いる中日のほうが安定した戦いで有利との声が大きいが、個人的にはパ・リーグファンとして、また「ロッテファンのファン」として、新人西村監督率いるマリーンズのほうを応援したい。
また、前回のこの対戦は1974年、ロッテの金田監督が生まれ故郷のナゴヤ球場で涙の胴上げという映像がニュースでも流された。この時のエースは村田兆治。千葉の試合で始球式なんぞやったら盛り上がるやろうな・・・。
さて、その時代に存在した球場も時代の流れにより次々に姿を消している。先日も広島市民球場の解体にあたっての「終球式」なるものが行われ、広島市の秋葉市長がマウンドで投げ終えた直後に無職の男に硬球を投げつけられるという事件が起こった。
「昭和レトロスタヂアム 消えた球場物語」。坂田哲彦著、ミリオン出版。
著者は野球の専門家というよりは「消え行くものや職業」に関する著作を持ち、この一冊も「昭和」の一ジャンルとしての球場に焦点を当てたものである。
その今は消えた球場として後楽園球場をはじめ、大阪、川崎、ナゴヤ、駒沢、日生、西宮、藤井寺、広島、そして平和台など、当時の観客席やら売店、球場周辺の雰囲気などを写真を多用して紹介している。
現在のドーム球場や豪華なスタンドを持つスタジアム、最近は地方球場でも近代的な造りの球場が増える中、こうした「夏草の匂い」のする球場がかえって懐かしく感じられる。特に日生、藤井寺は近鉄ファンとして、そして地元ファンとして身近な存在であった。昨今の球場のファンサービス向上やきれいなスタンドも悪くはないのだが、時にはこうした野趣ある、レトロなアブナイ雰囲気の中で観戦してみたいと思うのである。
もし、タイムスリップができるとすれば、ぜひ一度行ってみたいのが本書の表紙にある、オリオンズの本拠地であった東京スタジアム。下町に建てられた「光のスタジアム」というキャッチフレーズにも引かれるものがあるし、球場建設に私財を投じたオリオンズの名物オーナー・永田雅一の雰囲気も味わいたいものである。1970年にロッテが優勝した際にはグラウンドに多くの客がなだれ込み、まず真っ先に永田オーナーを胴上げしたというエピソードも微笑ましい。今では考えられないな。
・・・とまあ、日本シリーズではゲストのタレントを出すのもいいが、こうした「プロ野球の歴史」についても合間合間で紹介するというような放送上の工夫もすれば視聴者も食いついてくると思うのだが・・・。やはり今の地上波に求めるのは無理というものかな。いずれにしても、日本シリーズをナマで見ることのできるファンの皆さん、熱い声援で試合を盛り上げてくださいな。