まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第13回中国観音霊場めぐり~石炭記念館、琴崎八幡宮

2020年08月02日 | 中国観音霊場

本山岬を見てから、宇部市街を抜けてときわ公園に向かう。駐車料金はかかるが入園は無料とある。

ときわ公園は常盤湖を囲むように広がる公園で、大正時代に渡辺祐策(すけさく)たちが宇部市に寄贈した湖周辺の土地に開かれた。この渡辺祐策は現在の宇部興産につながる炭鉱や鉄工、セメント、紡績などさまざまな事業を興し、現在の宇部の発展に大きく寄与した人として地元では顕彰されている。

ここで行こうと思ったのは、石炭記念館。かつての竪坑櫓だった建物が公園の展望台になっているが、訪ねた時は新型コロナウイルスの影響で展望台は閉鎖、展示スペースのみの見学である。

記念館の前に、D51が保存展示されている。18号機という若い番号で、初期に登場した車両である。東北や九州で走った後、最後は美祢線で石灰石輸送で活躍したという。SLは石炭を動力としていただけに、こうした石炭に関するスポットで保存されているのも似合うように思う。

そのD51と向かい合うのが「坑夫」の像。1907年、荻原守衛の作品だが、「宇部炭田発祥の地記念」としてここに寄贈された。荻原守衛とは、安曇野の碌山美術館で知られる荻原碌山。「坑夫」はその代表作の一つである。

そして記念館である。宇部の炭鉱は海底炭田で、江戸時代から採掘が行われ、明治時代に本格的な産業となった。館内には採掘で使われた工具などがさまざま展示されている。

また、かつての坑道も再現されている。最盛期は1940年、年間430万トンの石炭が採掘されたという。この年は日本全体でも最も多くの石炭が採掘されていて、その送料は5631万トンとある。炭鉱といえば北海道や筑豊のイメージが強いが、宇部もその数パーセントを支えていた形である。

戦後はエネルギー革命のために石炭の採掘量も減少し、炭鉱もやがて閉山していくのだが、宇部炭田も1967年を最後に閉鎖された。しかしその後も宇部は工業の町として生き続けている。これは、炭鉱を経営していた渡辺祐策が、「埋蔵量に限りのある石炭を掘りつくす前に、石炭で得た富を無限の技術に転換しなければならない」として、さまざまな工業を興していたことによる。

記念館の外にもさまざまな機械類が展示されている。

せっかくなので公園内を少し歩く。宇部市は「UBEビエンナーレ」という野外彫刻展を1961年以降、2年に一度開催している。入賞作は宇部市街のあちこちに展示されていて、ときわ公園の中にもさまざまな作品が並んでいる。現代美術の世界というのは何かとわかりにくいイメージがあるのだが、公園に彩りを与えているのは確かである。

その中でもっとも有名とされるのがこの「蟻の城」という作品。他の作品は時期が経つと他の作品に置き換えられるそうだが、1962年に制作されて以降、この地にずっと置かれている。作者の向井良吉という人が「宇部をテーマとした彫刻」をと依頼されて、市内の工場の廃材を使って制作した。この人は現在の「UBEビエンナーレ」につながる野外彫刻展の開催の中心的人物だったこともあり、それを顕彰する意味もあるのだろう。確かに、宇部のイメージに合っているように見える。

他の彫刻展や、ペリカンの飼育などを見てときわ公園はおしまいとする。宇部の様々な歴史がうかがえるスポットであった。

時間的にもう1ヶ所くらい行けそうだということで向かったのが、琴崎八幡宮。宇部の産土神社である。開かれたのは平安時代、大分の宇佐八幡から分霊を石清水八幡に勧請した際、海の時化のためにここから近い琴芝に留まった。後に鎌倉時代の厚東氏、室町時代の大内氏によりこの地に移され、以後は毛利氏、江戸時代の福原氏によって長く保護された歴史がある。

訪ねた時は毎年恒例という「風鈴まつり」が行われ、雨の中ではあるが風鈴の音が響いていた。昔から鈴の音は神楽や巫女の舞にもあるように神様に捧げる音であり、禍を払う力があるとされている。短冊にはさまざなま願いが書かれている。特に今年はコロナという禍を払ってほしいという願いが込められているようだ。

また縁結びのご利益もあるようで、2本の木が根元でつながっていることから「夫婦小賀玉」と呼ばれる神木もある。さまざまな願いが書かれた絵馬も。

琴崎八幡宮まで訪ねることになるとは来る前にはまったく思っていなかった展開で、これも雨とレンタカーの効果である。少し早いが、帰りは一度国道2号線まで上がって、新山口駅に戻ることにする。ここに来てまた豪雨になったかと思えば、しばらく走ると小やみになる。朝の山口市内と合わせても、目まぐるしい天気の変化である。

新山口駅の南側に広がるイオンモールの一角にあるガソリンスタンドで給油をして、少し時間が早いがクルマを返却。宇部線の列車まで時間があるので、南北自由通路の「垂直の庭」でしばらく休憩する。そうするうちに空が明るくなり、晴れ間も出てきた・・・。

コメント