まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第14回中国観音霊場めぐり~「DENCHA」に乗る

2020年08月15日 | 中国観音霊場

8月14日、この日は北九州近辺をぶらつく日である。中国観音霊場めぐりと言いながら、中国地方には足を踏み入れない。

朝6時に小倉に到着して、この日のお目当てである「やませみ・かわせみ」「いさぶろう・しんぺい」連結の臨時列車は博多発10時40分である。それまでに博多に着けばいいのだが、臨時列車が鹿児島本線を走るのなら、往路は変化をつける意味で筑豊本線・篠栗線(福北ゆたか線)で向かうことにする。

そして、筑豊本線を訪ねるなら、折尾~若松の区間(若松線)にも乗ってみたい。同区間は非電化路線であるが、数年前に珍しい車両が導入されたと聞き、久しぶりの同区間訪問としよう。今回の3日間の行程は青春18きっぷも使用する。

小倉6時23分発の羽犬塚行きに乗車する。若松に行くのなら、戸畑で下車して若戸渡船に乗るのも面白い。ただ、他の季節ならそうするだろうが、この日も朝からうだるような暑さである。戸畑駅から渡船乗り場、渡船降り場から若松駅まで歩くのもしんどそうだ。ここは普通に?鉄道で折尾まで行き、そこから乗り換えとする。

この辺りは八幡製鉄所に代表される重工業と、駅前に高層マンションが立ち並ぶ光景が対照的に続く。その中で大きな空き地が現れる。2017年に閉園したスペースワールドだが、現在も駅名は残る。この跡地に、2022年の開業を目指して西日本最大級のイオンモールが建てられるという。そうなるとさすがに駅名もスペースワールドのままというわけにはいかないだろう。

折尾に到着。この駅も再開発工事中である。以前は鹿児島本線が高架を走り、筑豊本線(福北ゆたか線、若松線)は地平のホームから出ていた。福北ゆたか線は電化されたが、若松線は、鹿児島本線の高架下をくぐるガードの寸法が狭いために架線を通すことができず、非電化のままだった。また、折尾駅にはもう1本、鹿児島本線と福北ゆたか線の短絡線があり、このホームが本線とは離れた場所を走っている。これらの線路をすべて立体化することで乗り換えの利便性を向上させ、道路や駅前の整備を進めるという。かつての懐かしい建物をイメージした駅舎もできるようだ。

2020年8月の時点では福北ゆたか線、若松線の高架化が完了しており、工事中の通路を歩いて移動する。通路には工事の概要を紹介するパネルや、駅係員の手作りイラスト、九州豪雨の復興を祈願した折り鶴などが飾られていて、殺風景にならないようにしている。

これから乗るのは7時ちょうど発の折尾行き。折尾駅ホームが高架化されても若松線じたいは非電化のまま。それなのに列車番号の末尾には電車を示す「M」の文字が入る。これが珍しい車両「DENCHA」である。JR九州のBEC819系という車両で、種別としては「蓄電池駆動電車」という。「”D”UAL ”EN”ERGY ”CHA”RGE TRAIN」の頭文字をとって「DENCHA」である。

技術的な細かなことは省くが、要は架線下を走るときは架線からの電力で走るとともに、搭載された蓄電池に充電する。そして非電化区間ではその蓄電池を動力として走るのである。とうとう鉄道にもそういう技術が本格的に導入されることになったか。ただし、蓄電池で走行できる(他にも照明や冷暖房なども賄う必要がある)のはまだ短い区間ということで、現在実用化されているのはこの若松線と、香椎線である。この技術が進むと、現在「◯◯線の早期電化実現を!」という運動がなされている区間でも、架線を張ったりトンネルを広げるよりも車両を進化させることで「電車化」することも可能となるだろう。 

若松に向かう列車はパンタグラフを下ろしている。車内に入る。いわゆる「水戸岡デザイン」というやつで、ロングシートの形状も独特である。まあ、短時間の乗車であればこのくらいで十分である。

確かに、架線のない下を電車が走っていく。車内のモニタでは現在の動力モードが表示されていて、現在は蓄電池からエネルギーを供給しているという流れが紹介されている。

15分で終点の若松に到着。ホームに着くとスピーカーから、ジャズの名曲『聖者の行進』が流れる。もっとも、この曲を耳にするとつい、漫才のおぼん・こぼんの「お椀出せ! 茶椀出せ!」のネタのほうがイメージされるのだが・・。なぜジャズでのお出迎えということだが、駅舎内に説明が出ている。

若松駅は現在はホーム1本きりの終着駅だが、かつては広大なヤードを持ち、筑豊からの石炭の積み出しで賑わっていた。現在、駅近辺に建っている高層住宅も、もともとはヤードの敷地だったという。また、若松の港も中国・上海との物資の行き来で賑わっていた。戦前の上海は文化の最先端都市で、そこからジャズも入ってきた。若松の町おこしの一環で、2018年から列車の到着時、そして日中の時間帯の発車時にジャズの名曲を流している。

折り返しの列車まで少し時間があるので、かつての操車場跡や、洞海湾の景色を見に行く。9600型蒸気機関車が置かれているが、かなり損傷が激しい。

若戸大橋も朝日を受けて輝いている。

次に乗るのは7時55分発の折尾行き。この1本後、8時12分発の直方行きに乗れば途中で動力が変わるシーンを見られたかもしれないが、直方まで1本早い列車で先行するために乗り込む。こちらも同じように蓄電池での運転だ。

8時11分、折尾の福北ゆたか線・若松線の高架ホームに着く。次に乗るのは8時21分発の福北ゆたか線経由の博多行きで、直方でいったん下車するつもりなのだが、ホームの案内に表示されていない。平日と休日で時刻表を見間違えたかなと改めて紙の時刻表を検索するが、時刻は合っているようだ。そして改札口横に掲示されている時刻を見ると、同じ直方、飯塚方面の列車ではあるが、「Aのりば」とある。先ほどの高架ホームが6・7番のりばだったのに対して、これは短絡線のホームから出る列車である。その鷹見口へは北口から250メートル離れているとあり、先ほどホームを探している間に時間が経っており急いで向かう。

まるで「鷹見口」という駅名であるかのような表札がかかる建物に到着する。駅員が顔をのぞかせて「直方方面?急いで向こう側のホームに行ってください。踏切が鳴ると渡れなくなるので」と急かす。確かに、私が踏切を渡って数秒後に警報音が鳴りだした。ロングシートの車両に乗り込み、遠賀川沿いの筑豊エリアを走る。

別にこれに乗り遅れたからといって、次の列車は若松から直方まで直通する「DENCHA」である。ちなみに直方から博多へは同じ列車に乗るのだが、直方で15分ほどの時間を取った。久しぶりに駅を向かうが、あるものを一目見たかったからである・・・。

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