博多から「かもめ9号」で長崎を目指す。西九州新幹線は9月23日に武雄温泉~長崎間で先行開業するが、博多から長崎へは乗り換えとなる。それがいつまでなのかはまだ何も決まっていない。さすがに未来永劫ではなく、どこかで佐賀県が折れざるを得ないのだろうが・・。
ともあれ、現在の形の「かもめ」が走るのも2ヶ月弱である。私自身「かもめ」に日頃から乗っていたわけではないので、お名残惜しいというのとは異なるが、今回は往復でお別れ乗車である。そして西九州新幹線開業後、機会を作って新しい「かもめ」に乗るつもりだ。
「かもめ9号」の入線前、隣のホームには長崎からの「かもめ4号」が到着した。885系の「白いかもめ」車両である。カメラを向ける人もちらほらいる。
そして南福岡側からやって来た「かもめ9号」は787系。かつての「つばめ」として登場したが、九州新幹線開業後はこの「かもめ」も含めて各線を走っている。885系との対比で「黒いかもめ」とも呼ばれているが、本人?はあくまでも「つばめ」当時の誇りを胸に秘めているようだ。ここで白黒の「つばめ」が揃ったことで、カメラの数が一気に増えた。
8時52分に発車。私が乗った指定席車両は3分の1ほどの乗車率。もっとも、自由席はもう少し乗っているだろう。3連休の次の普通の土日ということで、普段はこのくらいの利用かと思う。
二日市までは先行列車の影響かトロトロ走ることもしばしばだったが、そこから先は快走する。鳥栖で長崎線に入る。サガン鳥栖の本拠地「駅前不動産スタジアム」に隣接して、バレーボールの久光製薬スプリングスの新たな練習施設が建設中である。鳥栖が誇る2つのクラブチーム。
長崎線に入り、新鳥栖では九州新幹線からの乗り換え客が乗ってくる。現時点では、新幹線から博多の他に新鳥栖て「かもめ」に乗り換えるパターンも使えるが、西九州新幹線先行開業後は、新鳥栖乗り継ぎパターンも同様に面倒なことになるのだろうな。
佐賀平野を快走して佐賀、肥前山口に停車する。西九州新幹線先行開業に合わせて、町の名前である「江北」に改称される。ここで、武雄温泉につながる佐世保線と分岐する。この先の長崎線諫早までは並行在来線として、23年間はJR九州が面倒を見るのだが・・それだけ長く運転を続けるというのは、西九州新幹線の全線開業までそのくらいかかるかもしれないというサインでもあるのかな。
肥前鹿島を過ぎて、有明海を望む区間を走る。九州西国霊場めぐりで訪ねた車窓でもあり、太良町を訪ねたのもわずか数ヶ月前のことだが懐かしさも感じる。
長崎県に入る。残念ながら左手に雲が広がっていて、雲仙は見られなかった。
右手後方から高架線路が近づいて、諫早に到着。大村線、島原鉄道も含めた交通の要衝であり、前回の九州西国霊場めぐりではリニューアルされた駅舎、コンコースを見ることができた。その時フェンスとシャッターで防がれていた新幹線改札口が開くまであと2ヶ月弱である。
諫早を出て、喜々津を過ぎると市布経由の短絡線に入る。元々の長与経由からのショートカットで、間には長いトンネルも挟むのだが、西九州新幹線開業とともに快速、普通のみの運転となる。これも歴史の移り変わり。
長崎市内に入り、ビッグNスタジアムの横を通過して浦上に着く。そして、今度は左手後方から高架線路が寄り添ってきた。新幹線は長いトンネルを抜けていきなり市街地に顔を出すようだ。駅周辺も新幹線開業にともない全面高架化、そして開発工事が進んでいる。
そして到着した行き止まり式の長崎駅ホーム。長崎駅にはちょうど令和改元のタイミングで訪ねたツアーの帰途に「かもめ」に乗り込んだのだが、この時は地平ホーム。そして隣接して車両区の留置線があった。現在の駅は西に移る形で、留置線があったところに設けられている。在来線ホームの隣、少し高い位置に新幹線ホームも完成している。
一方、在来線ホームにはハイブリッド気動車のYC1系が停まっている。長崎線、大村線、佐世保線の快速・普通列車はほぼこの形式に置き換えられている。そのこともあってか、西九州新幹線開業後は現在電化されている長崎線についても架線を撤去して、非電化区間として営業するそうだ。電車の運転にかかる設備を減らしてコストを削減するためという。地域によっては電化を熱烈に希望するところがある一方、電化から非電化に移行する地区も出るようになるとは、時代の流れ、技術開発によるところ。
高架化された駅に降り立つのは初めてで、これまで思い出の中にあった長崎駅とはまったく別の駅となった。もうしばらくすると新しい歴史が始まるということで、今はその前夜の風情を味わうことにする。
駅の西口は一足早く出島メッセ長崎という多目的施設が完成しているが、かつての駅構内であった東口はまだまだ工事が進んでいる。新幹線開業後しばらくは工事が続くそうだが、こちらが整備されるとまた大きく表情が変わることだろう。いつの日か楽しみにしたいものだ・・・。