まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

出雲坂根の「延命水」と「奥出雲おろち号でのスイッチバック

2023年06月12日 | 旅行記F・中国

G7広島サミット開催中の5月21日、広島をクルマで抜け出して木次線の出雲坂根にやって来た。駅前には駐車スペースがあり、ここにクルマを停めて、「奥出雲おろち号」で備後落合まで往復する。それまで1時間以上あるのだが、しばらくは駅でのんびりすることにしよう。

ここ出雲坂根は「延命水」で知られている。木次線の列車の停車中に汲むこともできるが、多くはクルマ、バイク等で訪ねる。駅舎横の水汲み場のほかに、道路脇により多く湧き出ている一角があり、大きなペットボトルやポリタンクに汲むならこちらからが適している。これだけ垂れ流して大丈夫かとちょっと気になるが、私も今回クルマでということで2リットル入りの空のペットボトルを2~3本ほど積んできており、こちらでありがたくいただくことにする。

さて、駅舎横では「奥出雲おろち号」の客を迎えるための準備が進んでいる。名物の焼鳥や、出雲そばの弁当、仁多米のおにぎり、地元野菜の惣菜などが並べられる。缶ビールもある。「奥出雲おろち号」に乗車するならビール片手に「飲み鉄」というところだが、今回はクルマなもので・・。

そば弁当とおにぎりを買って、先に国道沿いの東屋のテーブルでいただく。ちょうど風が吹き、暑くもなく寒くもなく、心地よい気候の中である。

その後は駅内をぶらぶらする。急勾配を克服するために建設されたスイッチバックだが、今は1日数本の列車が行き交うだけである。ただ、このスイッチバックがあるから木次線が観光スポットになっているのも確かである。「奥出雲おろち号」の運転が終了した後は、山陰線の観光列車「天地」が木次線を走るそうだが、運転は出雲横田までで、このスイッチバック駅までは来ない・・。

列車の時刻が近づくと見物客の姿も少しずつ増えてきた。クルマなら出雲坂根で「おろち号」の発車を見送り、そのままおろちループを上って、道の駅の展望台からスイッチバックを上ってきた「おろち号」を再び眺めることも十分できる。

「おろち号」が出雲坂根に着くところを外から見るのは初めてである。構内踏切の横で到着を見ることにしよう。

出雲横田方面から、改造して運転台がついた客車を先頭に入線してきた。トロッコ車両、座席車両に乗客は散らばっているが、乗車当日は満員御礼のようであった。やはり団体客が目立つ。しばしホームが賑わう。

私のほかにも同じく出雲坂根から乗る客もちらほら見かける。ドライブがてら来たのであろう、子ども連れの場合、片方の親や祖父母が一緒に乗り込み、もう片方の親などがクルマで追いかけて目的地の駅で出迎える・・という光景も見られる。

さて、私の割り当てられたボックス席だが、ここまで乗って来た他の客の荷物で占められていた。復路もあるのであえてそこに無理に座らず、幸い空いていた先頭部に陣取る。ここでスイッチバックを思いっきり体感しよう。

出雲坂根で1回目の方向転換のために数分停車した後、客車側が最後部に、今度は機関車がけん引する形でスイッチバックの2段目を上る。駅が少しずつ遠ざかり、高度を上げていく。

ポイントを覆うシェルターを過ぎたところで停車。2回目の方向転換として、運転手が再び客車側の運転台に来る。そして3段目へゆっくりと進む。

いくつかのトンネルを抜け、景色が開ける。右手におろちループ、道の駅を見る。あちらからも多くの客が手を振っている。ここは最徐行で通過する。

三井野原に到着。ここで下車する団体客もあった。

スイッチバックも体感できたし、トロッコの座席を通り過ぎてもう1両のリクライニングシート車に向かう。こちらは控え車両として、トロッコと同じ番号の座席を利用できるが、実態は空いている好きなところに着席している。昭和から平成のはじめにかけての「客車列車」を体感できるとあって、これはこれで貴重なものである。

先ほどのトロッコ車両の端に、「おろち号ラストラン! あと186日」(乗車した5月21日時点)というボードが掲げられていた。計算すると今年の11月までという意味である。この記事を書いている時点ではカウントダウンももう少し進んでいる。そして最後ということで、6月、7月の一部日程では追加の特別運転も行われる。この特別運転についてはツアー客専用ということで、別途申込が必要とのことだが、軒並み満員御礼だろう。

旅程の都合で三井野原で下車する客もいるが、この先の備後落合までの区間もカラマツ林などの自然が豊かで、のんびりした田園風景を楽しむことができる。

12時36分、備後落合到着。数時間前はほとんど人の気配もなかったが、数十人とはいえ「おろち号」から降り立った客で賑わいを見せる。

国鉄OBの永橋則夫さんによる備後落合駅のボランティアガイドも行われる。折り返し時間は20分ほどだが、駅の風情を一通り味わうならこのくらいでも十分である。

さて出雲坂根からの復路はトロッコ車両の窓側の席を確保しており、今度はトロッコで風を受けることにしよう・・・。

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