ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

穴は穴でも

2011年01月05日 | アホな小話
夫が言った。

今朝、シャワーしてた時、ふとコレ(恭平の洗顔料)が目に入り……、


ええっ!?ケ◯の穴の汚れもスッキリ!?」と勘違いして読んで、一瞬パニックに陥ったらしい。



日本語に堪能、というのも、時と場合によってはえらいことになるんだなあ……。
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新年初凹み

2011年01月05日 | ひとりごと
生徒がやめた。ふたりやめた。お兄ちゃんと妹。
父親から電話がかかってきた。
いつも付き添いでレッスンを見ていた役者をやっている父親だ。

「まうみ、実は、今年からショーンのピアノの先生を替えたいと思っているんだ。あんなふうに大きな声で叱りつけない先生に」

びっくりしたけれど、うっすらと予感はあった。
この夏、彼に、とても難しい曲を渡した。発表会のための曲だった。
とても難しいけれど、彼が気に入りそうだと思った曲だった。
案の定彼はとても喜び、早く弾けるようになりたいと興奮していた。

ショーンは、生まれながらに顔の片方の筋肉が下がっている男の子で、問題のある左側の目尻からはずっと、ねっとりした分泌液が涙のようにこぼれていた。
口元も下がっていたけれど、言葉は普通に話せるし、賢い子供だった。
全くの初心者だった彼は、音符やリズムや感情の表し方をひとつずつ学んでいった。

間違いを指摘すると、どんなに柔らかく言ってもショックを受けるようなので、冗談で「指に直接文句を書くぞ!」と、ペンを彼の指に近づけて書くふりをしたらすごくウケた。
ゲラゲラ笑って嬉しそうに間違う彼を見て、わたしもゲラゲラ笑った。
彼はたまに、わたしにそう言って欲しくて、わざと間違えて弾いたりもした。

そういう具合に、他の子供よりも時間と手間がかかったけれど、そんなことは別にどうでもよかった。
彼は学びたかったし、うまくなりたいという気持ちを強く持っていた。
ところがそれが高じて、まだちゃんと読んでいないうちから、速いテンポで弾く癖がついてしまった。
どんなに言ってもなかなか直らなかった。
だから今回は、速く弾きたくても弾けないほどに難しい曲を渡して、片手ずつ、ゆっくりと、しかも短い小節数ずつ、コツコツと学ぶ経験をさせようと思った。

最初はうまくいきそうだった。
いろんなことがあった。
毎週行き先が違って、何度も修正しなければならなかったけれど、夏の終わりには暗いトンネルの向こうに出口のあかりが見えてきていた。

夏休み後半に、家族旅行で1ヶ月近く休んだ彼が再び戻ってきた。
見えていたあかりが消えたどころか、トンネルのどの地点に居るのかも判断できないぐらいの状況に戻っていた。
長い休みの後にはこういう事がよく起こるので、起こったことにはあきらめがついたが、彼は一旦良い状況に居たのだから、元に戻るのにそんなに長くはかからないと思っていた。
ところが……。
あっという間に9月が終わり、10月も半ばになり、あまりの状態に急にパニックになったわたしは、彼を怒鳴りつけてしまった。
初めてのことだった。
彼は涙をポロポロ流しながら、それでも「ボクは大丈夫、ボクは大丈夫」と言って弾き直すのだけど、大丈夫なはずがない彼は、何回弾いても間違いを直せなかった。

次のレッスンを休み、その次のレッスンの日に父親から、「ショーンの様子がおかしいので、もう二度と彼をあんなふうに叱りつけないで欲しい」と言われた。
もちろんわたしも大反省していたので、父親とショーンに心から謝り、「もう二度とあんな教え方はしないから」と約束した。

それから発表会までは、気を抜けないレッスンが続いたのだけど、彼も持ち直し、わたしも曲自体をアレンジしたりして、楽譜を完全に弾かないまでも、聞いた感じは全く違和感のない演奏に仕上げることができ、発表会で彼は見事に弾いて喝采を浴びた。

その後のレッスンに来るたびに、彼はその曲を、それはそれは嬉しそうに弾いてくれた。
これはボクの十八番だよ!と得意そうだった。


でもきっと、わたしが彼の心につけた傷の深さは、そんなことでは癒されなかったのだと思う。
練習しないとまた、まうみに叱られる……あんなふうに……。

「ショーンが来ないってことは多分、サラも来ないってことですよね」
「うん。彼らは一緒に学ばせたいからね」

大好きな家族だった。ショーンもサラも、照れ屋さんで可愛い子供達だった。
全くのゼロから、本当によく弾けるように成長してくれた。
ほんの2年半の間だったけれど、楽しかった。ありがとう。
コメント (14)
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