わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

抹茶々碗 (黄瀬戸)

2010-05-07 22:05:56 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
美濃焼きの、黄瀬戸の茶碗に付いて、お話します。

2) 黄瀬戸茶碗

  黄瀬戸の茶碗は、室町時代から、作られていましたが、桃山時代に、美濃で焼かれた陶器群が、

  代表的な作品と、成っています。

 ① 黄瀬戸には、その釉の色調により、「ぐい呑み手」「菖蒲(あやめ)手」「菊皿手」が有ります。

  ) 「ぐい呑み手」は、 懐石の時の、酒盃に多く見られる物で、釉肌に光沢があり、

     白い海鼠(又は、卯の斑)が、出ています。後で述べる、伯庵茶碗の釉肌に、似ている為

     「伯庵手」とも言われます。

  ) 黄瀬戸茶碗に、使用される釉は、「菖蒲手」と呼ばれる、釉肌が油揚げの様な感じで、

     別名、油揚手と言われています。 「菖蒲手」の由来は、菖蒲の彫り物文様のある、

     黄瀬戸を代表する、「どら鉢」から来ています。

  ) 菊皿手は、前述の両者より、やや時代が後(江戸時代)で、雑器類が多い様です。

     大萱の隣の、大平(おおひら)や、笠原(多治見の南)で、大量に焼かれた、菊形の小皿から、

     この名が生まれました。厚手で釉は光沢が強く、鮮やかな黄色で、細かい貫入があります。

     緑には銅緑釉が掛かり、これが流れて黄、緑、入り交じり、派手な感じがします。

 ② 黄瀬戸茶碗の特徴

  ) 見込みや外側に、箆で彫ったり、押し型で、簡単な模様が有ります。

  ) 「胆礬(タンパン)」による、銅緑や、鬼板による、褐色の線を描いています。

      胆礬は、表から裏に、緑色が抜ける、「抜け胆礬」と呼ばれます。

  ) 釉肌は、光沢が無く、柔らかです。

  ) 菖蒲手の茶碗は、元々は、懐石の向付け用に、作られていました。

     碁笥底高台が多く、外底に輪形の縒り(より=目土の代わりに使う紐土)の痕(五徳痕という)の、

     焦げが有ります。

 ③ 黄瀬戸茶碗を造る

   前回お話した、瀬戸黒茶碗と、器の形、大きさは、大差有りません。

   違いは、土に志野の「五斗蒔」を使い、独特の黄色い釉と、胆礬を使っている事です。

 ④ 黄瀬戸の名物茶碗には、

  )黄瀬戸伯庵茶碗(室町時代):利休門下の、茶人曾谷伯庵が、利休に懇願して、貰い受けた

    一碗で、小堀遠州が、伯庵と命名したものです。元々は、朝鮮風の食碗の様です。

    12の約束事があるそうで、枇杷色、海鼠釉、高台片薄、キラズ土、茶溜り、竹の節、飛び釉、

    シミ、高台内縮緬絞り、小貫入、端反りなどで、他の茶碗と比べて、特別変わっては、

    いません。  口径:15.0 高さ:8.2 高台径:5.9 

  )黄瀬戸茶碗 銘、朝比奈(あさひな) 桃山時代作

    半筒の志野風の茶碗に、黄瀬戸釉を掛けたもので、轆轤挽き後に、胴に一条の箆痕がある、

    力強い作行です。  口径:13.1 高さ:8.9 cm

 ⑤ 現代の作家

   各務周海氏(かがみしゅうかい)(2009年没、享年67)は、恵那の栗皮灰をベースとして、

   桃山の名品と、遜色ない、油揚手の黄瀬戸を、効率の悪い穴窯で、焼成しています。

   やや、「かせた」(焦げた)味の釉で、その味わいは、黄瀬戸の銘碗「朝比奈」を、彷彿させます。

黄瀬戸の話は終わりにし、次回は、織部について、述べる予定です。
  
コメント
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