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エリック・ロメール監督『木と市長と文化会館』

2008-07-05 15:15:37 | ノンジャンル
 昨日の朝日新聞の朝刊に「今夏のボーナスの平均手取額は75万3千円、妻のへそくりは平均356万3千円」と出ていました。私は今パートで働いていますが、ボーナス5千円、へそくり0円です。世間とのギャップを改めて感じる記事でした。

 さて、スカパーの260チャンネル「洋画★シネフィル・イマジカ」で、蓮實重彦氏が絶賛した、エリック・ロメール監督の'92年作品「木と市長と文化会館」を見ました。章立てになった構成になっています。
 まず、最初に小学校教師のマルクの授業風景。
 そして、第1章「92年3月の統一地方選の直前にもし社会党の支持率が下がらなかったら‥‥」の字幕。電車の中で雑誌「未来」の編集長ともう1人の男が政治談義をしています。
 第2章「選挙での落選後、もしジュリアンが小説家ベレニス・ポリヴェージュと恋に落ちなかったら‥‥」の字幕。市長の恋人で小説家のベレニスを市長が村の草原に連れて来て、ここに図書館、野外劇場、プールなどを備えた文化会館を建設する計画だと話します。
 第3章「もし草原のヤナギが驚くほど長い歳月を乗り越えていなかったら‥‥」の字幕。マルクは妻と娘のゾエとともに草原に来て、この古いヤナギの木とともにこの草原を潰すことなどバカげている、と激昂します。市長は恋人らに文化会館の設計図を見せます。
 第4章「“未来”のプランディーヌ・ルノワールがラジオを録音する時に、もし留守番電話のプラグを抜かなかったら‥‥」の字幕。事務所でプランディーヌの上司がプランディーヌ同席のもと、市長・ベレエスへのインタビューをします。次にプランディーヌは市長のもとへ行き、インタビューを行ない、村を訪れて、文化会館建設賛成の村人、自然主義の農民、唯一村で放牧で牧牛を育てている男性、自分の意見を滔々と述べるマルクらへのインタビューをします。
 第5章「雑誌の編集段階にもしブランディーヌがユニセフの取材でソマリアに行かなかったら‥‥」の字幕。ソマリアから1人息子の待つ自宅へ帰ってきたブランディーヌは、自分の記事が大幅に削られていることで編集長に電話で抗議します。「教師は図書館より木がお好き」と題された、たった2ページの記事では、自分の発言が全てカットされているのに市長は恋人とともに呆れます。
 第6章「市長の娘ヴェガが教師の娘ゾエが歩いていた道に、もし運悪くボールを蹴らなかったら‥‥」の字幕。ボールを拾った縁で、独りぼっちのヴェガと遊んであげるゾエ。「翌日」の字幕。2人が遊んでいるところへ市長が来ると、ゾエは文化会館反対の理由として、子どもが遊べる草原を残してほしい、と訴え、市長は新しい考え方を教えてくれたことに感謝します。
 第7章「もしお役人がいつものように熱意のない仕事をしていたら‥‥」の字幕。今はユネスコで働くようになったブランディーヌと市長が道端で出会い、市長は文化会館の計画は地盤のせいでわずかな補助金も役人によって削られ、頓挫したことを伝えます。計画の中止を授業中に知ったマルクは大喜びで、生徒たちの前で環境問題を解決することを訴える歌を歌います。市長と恋人と女性合唱団は、田舎のコミュニティーの素晴らしさを讃える歌を歌い、映画は終わります。

 最初から最後まで台詞の嵐で、字幕を追っていると、それだけで映画を見ずに終わってしまいます。政治談義を一々聞かず、全体の流れだけ追って見ていると、俳優たちがリラックスして演じている様子や、明るい画面などが見えてくると思います。したがって、最初におおまかなストーリーを知っておいてから見る方がいいかも知れません。ラストシーンも納得できる内容で、'92年の段階でコミュニティーの大切さを政治的な点でも意識する先見性が素晴らしいと思うとともに、当時のフランスの社会党、言い換えると'68年の革命世代はやはり物の見方が違うな、と感心しました。蓮實氏のようにフランス語が分かる人は文句なく楽しめるでしょうし、字幕版より吹き替え版があれば、その方が楽しめると思います。楽しい映画です。オススメします。