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ジャン=ピエール・メルヴィル監督『影の軍隊』

2010-05-21 16:30:00 | ノンジャンル
 今日、近くの小川で鮎の遡上を初めて見ました。小さな滝を小さな無数の魚がピョンピョン飛び跳ねている様子はいかにも健気でつい応援してしまいました。

 さて、ジャン=ピエール・メルヴィル監督・脚色の'69年作品『影の軍隊』をNHK・BS2で見ました。
 「数々の苦い思い出がいとおしい。過ぎ去った青春の証しだから」という字幕。第二次世界大戦でドイツに占領されたフランス。田舎の収容所に送られたレジスタンス活動家フィリップ(リノ・ヴァンチュラ)は脱走の手はずが整ったところでパリのゲシュタポ本部に連行されますが、見張りが若い兵士一人になったところでその兵士を刺殺して逃亡に成功します。密告者の若者を仲間のフェリックス(ポール・クロシエ)らとともに絞殺するフィリップ。フェリックスは昔の仲間のジャン(ジャン=ピエール・カッスル)に偶然出会い、仲間に引き入れます。ジャンは見事に仕事を果たし、フィリップはロンドンへ赴き英国政府に援助を申し出ますが、フェリックスがゲシュタポに捕まったとの報を受け急遽帰国します。フィリップがいない間にリーダーとして活動していたマチルド(シモーヌ・シニョレ)はフェリックスの奪還計画を立てる一方、ジャンは自らを密告者に仕立ててゲシュタポにわざと捕まりフェリックスの元へ行きます。マチルドらはゲシュタポ本部への侵入に成功しますが、既にフェリックスは虫の息でした。ジャンは自分の青酸カリをフェリックスに与え、彼を拷問の苦しみから救い自分を犠牲にします。フィリップも再びゲシュタポに捕まり、死刑の執行となりますが、そこへ駆けつけたマチルドらに奇跡的に助けられます。隠れ家に潜むフィリップの元に、マチルドが捕まり娘を人質に取られ彼女が仲間を売ったことが知らされると、フィリップは彼女が自分たちに処刑されたがっていると理解し、仲間に彼女を路上で射殺させますが、撃たれた瞬間の彼女の表情は死を覚悟していたものではありませんでした。マチルドを処刑した直後のフィリップらの沈痛な表情のアップで映画は終わります。
 寒々とした沈うつな色彩、時にはフィックスとなり、時にはゆるやかに流れるカメラ、救出したフィリップの手をマチルダが車の中で握るショットはほとんどブレッソンの映画を見ているようで、涙してしまいました。またマチルダが射殺され背中を下にして倒れ込むシーンは、これまたロッセリーニの『無防備都市』に匹敵する、あるいはそれの上を行くほど鮮烈なものでした。今回初めて字幕入りで見ましたが、以前に見ていたことが信じられない位の衝撃的な映画体験をしたように思います。また、5月革命の翌年の'69年にこのような作品をメルヴィルが作ったということにも何か暗示的なものを感じました。なお詳しいあらすじをお知りになりたい方は、私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)の「Favorite Movies」の「その他」の場所にアップしておきましたので、是非ご覧ください。