瀬尾まいこ『僕の明日を照らして』

　瀬尾まいこさんの最新作『僕の明日を照らして』を読みました。
　お母さんと最近結婚した歯科医師の優ちゃんは、すぐにキレて中２の僕に暴力を振るい、その後必ず自責の念にかられてくよくよします。僕の本当のお父さんが死んですぐにお母さんは一人で僕を育てるためにスナック勤めを始めたため、優ちゃんが来るまで物心がつく前から一人で過ごしてきた夜の怖さに未だに脅える僕は、優ちゃんに暴力を振るわれても一人の夜の生活に戻るよりはましだと思っています。優ちゃんは自分も厳格な父から暴力を振るわれながら育ったことを告白し、僕と優ちゃんは優ちゃんのキレる癖を治す方法をいろいろ試しますが、暴力はエスカレートする一方です。そんな折り、僕は部活の先輩のふがいなさに腹を立てて、その先輩のスパイクを軽い気持ちから捨てると、それが学校中の大事件となってしまい、すぐに自首した僕を引き取りに来た優ちゃんは、人を傷つけることは絶対にこれからしないと誓ってくれと今までにない真剣な様子で頼むのでした。そして優ちゃんにそう言われたことで、それまでは、クラスでトラブルが起こると、人が傷つくようなことを平気で口にして切って捨てていた僕に変化が起き始めます‥‥。
　すがすがしい青春ものが得意な瀬尾さんがDVの話から始めたので最初はとまどいましたが、絶対に最後は青春ものになるはずだという確信のもと読み進めると、まさに期待していた、あるいは期待していた以上の素晴らしい結末が待っていました。生き生きとして自然な会話は時に吹き出してしまうほどのリアリティであり、一日で一気に読んでしまった今現在、私はこの小説が瀬尾さんの最高傑作であるような気がしています。生きているうちに読んでおきたいと思わせるほどの素晴らしい小説です。心の底からオススメします。なお、詳しいあらすじをお知りになりたい方は、私のサイト「Nature Life」（http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto）の「Favorite Novels」の「瀬尾まいこ」のコーナーにアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。