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北尾トロ・えのきどいちろう『愛の山田うどん 廻ってくれ、俺の頭上で! !』

2013-03-15 06:57:00 | ノンジャンル
 ロマン・ポランスキー監督・共同脚本、ジョディ・フォスター、ケイト・ウィンスレット出演の'11年作品『おとなのけんか』をWOWOWシネマで見ました。歯を折るケガを負わされた息子の両親と、その加害者の両親の4人が、相手に謝罪したり、責めたり、味方になったり、敵対したりと、次々と立場を替えながら演じる室内劇であり会話劇でしたが、そのユーモラスな展開を結構楽しめました。

 さて、北尾トロさん・えのきどいちろうさんの'12年作品『愛の山田うどん 廻ってくれ、俺の頭上で! !』を読みました。埼玉県を中心に直営店を多く経営する、回転するかかしの看板がシンボルマークの“山田うどん”について、基本的に北尾さんとえのきどさんの文章が交互に現れるように構成されている本です。
 北尾さんは高校2年のときに山田うどんと知り合いますが、大学に入学して足が遠のくようになります。ある時、ひとりで所沢街道を走っていると、山田うどんの回転看板に出会いますが、それも15年くらい前のことで、以来、山田とのつき合いは断たれてしまいます。それに対し、えのきどさんが山田うどんに似合うと思う感情は、どうしようもない退屈、こんなことをしてていいのかなぁという焦燥感、寂しさや疲労感、青春時代の色んな後ろ向きの感情がとりあえず空腹感だったことと結びついていると書きます。そして大学時代、夜中に車で1人で訪れる山田うどんが、えのきどさんの山田うどんの原体験だったと言います。
 トロさんはえのきどさんと作っている雑誌『季刊レポ』の宣伝のために、2人で毎週『レポTV』というネット番組を放送しているのですが、2011年11月の夜、ふとしたことをきっかけに、2人が山田体験、つまりかかし看板のたのもしさ、まだ何ものでもなかった自分たちに山田が与えてくれた温もり、けっして高級な味ではなく、どこにでもあるような麺やツユのありがたさ、必ず空腹感を満たしてくれるボリューム、これらを共有していることに気付きます。2人は山田の魅力を再発見し、えのきどさんは早速パソコンで“山田うどん”を検索しますが、トップの検索ガイドに何と「山田うどん まずい」が出ているのに驚きます。えのきどさんは早速トロさんにメールを打ち、2人は“山田”の今を知ることを決意します。えのきどさんは浅草店に実際に行き、今の山田うどんを食べてみますが、奇跡のように昔とおんなじ味で、フツーにおいしいものでした。そして彼は月一レギュラーの文化放送の朝ワイド『くにまるジャパン』で山田うどんのことを訴えますが、出番が終わりスタジオを出ると、文化放送の社員がわらわらと集まってきていて、皆山田のことだったら自分にもひとこと言わせろと寄ってきます。そして放送の反響に驚くえのきどさん。ある日、ついに文化放送の元へ山田食品蚕業株式会社から「山田うどんストラップ」が大量に送られてきます。トロさんもえのきどさんに歩調を合わせ、出演したラジオ番組で山田について語っていると、ついにえのきどさんの元へ山田の社長秘書から、社長が是非会って御礼を言いたいと言っているというメールが送られてきます。
 2人はこちらから足を運んで、所沢にある山田食品産業の本社へ向かいますが、そこで、山田家の次男の道朗氏が偶然ラジオを聞き、情報を会社に伝えたことがきっかけとなり、ラジオを聞いて食べにきた客が相次いだこともあって、ストラップを送り、やがてラジオ好きの社員がえのきどさんが番組出演のたびに話題にしていることを知り、『レポTV』そして『季刊レポ』へと調査の手が伸びて、とうとう連絡を取るに至ったことを2人は知るのでした。2人は山田うどんについての本を書きたい旨を社長に伝えると、社長はその場で多くの資料をくれ、また初代社長である会長にまで会わせてくれ、2人は山田うどんの歴史を聞くことができます。その後、2人は本の中で、山田うどんの埼玉性や安くて満腹をモットーとした経営方針などについて語り、合わせて、急死した会長の葬儀の様子、創業以来深い仲だったキッコーマンの現特別顧問・高梨兵左衛門氏や現社長へのインタビュー、工場見学、国道50号線・山田うどんの旅と続き、平松洋子さん、下関マグロさん、本橋信宏さん、乙幡啓子さんからの特別寄稿もあって、最後は現メニューの写真入り紹介、そして山田うどんの歴史の一覧で本は終わります。
 あっと言う間に読める手軽な肩のこらないノンフィクションでした。暇のある方にはお勧めです。

 →Nature LIfe(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto