gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

フェデリコ・フェリーニ監督『フェリーニの道化師』

2013-10-11 10:18:00 | ノンジャンル
 フェデリコ・フェリーニ監督・共同脚本の'70年作品『フェリーニの道化師』をWOWOWシネマで再見しました。
 夜、少年がベッドで寝ていると、屋外から「ロオム! 柱を縛ったか?」という大声が聞こえてきます。少年は椅子を窓に寄せ、そこに乗って窓の外を見ると、「そら、引け!」という声とともに、サーカスのテントが立っていくのが見えます。翌日、母にそのことを聞くと、「あれはサーカスで、悪いことをすると連れていかれるよ」と教えられます。象の調教。看板を取り付ける者。テントに入っていくと、奥の赤い幕の中から男が登場し、馬の曲芸が始まります。始まったサーカスは、騒々しく、残酷で、異形のものに満ち溢れ、異国的で、馬鹿馬鹿しく、想像的で、理不尽で、無邪気で、不条理で、奇怪で、美しく、醜悪な、とんでもなく楽しい見せ物でした。帰宅した少年は、母からこっぴどく叱られます。
 少年はサーカスで見たものから、当時周囲にいた様々な変わった人々を想起します。お前の畑に種を撒いてやると盛んに言う助平な農夫、身長が1メートル30センチしかなく、精神病院と修道院を往復していた修道女、大戦の傷痍軍人で、暗記しているムッソリーニの演説を一日中口にしている男、ケンカばかりしている駅馬車の馭者たち、駅に列車が到着すると一斉に窓から顔を出し、列車が出発すると一斉に駅長に向かってブーイングし始める悪ガキたちは、駅長の横にファシストがいると、今度は列車が出発すると一斉にファシストの敬礼をします。戦争映画を見た翌日から、軍服を着て壁に突撃するようになった男。
 フェリーニはこの映画のスタッフを次々に紹介し、当時活躍していた道化師の現在を調査し始めます。南フランスのサーカスに行くと、そこでは豹を飼いたいと言うアニタ・エクバーグと再会します。280箇所も猛獣に噛まれたと言う男。道化師見たさに病院を抜け出て、サーカスの観客席で笑い死ぬ男。パリでは道化師に詳しいレミイに取材します。パリのサーカス“冬”を取材するフェリーニたち。やがて道化師のステージが始まり、その横でインタビューを受けていたフェリーニの頭にはバケツが被さり、インタビュアーの頭にもバケツが被さります。やがて一人の道化師の死が告げられ、その弔いが始まり、最後にはラッパを吹いた2人の道化師が舞台を去り、映画は終わります。
 火を吹く男、大きな砲弾を背中に乗せる男、頭を斧で割られる道化師、魚を丸のみする人魚、大男を完膚なきまでに倒したアマゾネスの女に挑戦すると言って、観客席から現れた女性はコートを脱ぐと下は豹柄のスーツを着たジャングル女、などなど、最初のサーカスの素晴らしさがこの映画の白眉でしょう。その後の日常にいる変人たちの存在も、現在イタリアに精神病院の入院施設がないことに思いを及ぼしたりもしました。山田宏一さんが著書で「映画史に残る映画」の一つとして挙げていた映画の1つだったことも付け加えておきます。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto