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日本・中国・韓国3国共同編集『新しい東アジアの近現代史(下)』

2013-12-29 12:09:00 | ノンジャンル
 トニー・スコット監督・共同製作の'05年作品『ドミノ』をWOWOWシネマで見ました。“これは真実の物語、おおよそは‥‥”の字幕。保釈保証人となり“賞金稼ぎ”をするドミノが、FBIの犯罪心理学者の尋問を受けています。1千万ドルの現金強奪事件に巻き込まれたドミノは、事件のあらましを語り、最終的に仲間を全て失います。ドミノの母をジャクリーン・ビセット、リアリティー番組のプロデューサーをクリストファー・ウォーケン、よく分からない役をミッキー・ロークが演じていました。いくつものグループが登場し、ストーリーは錯綜し、途中から話を追うのをあきらめて見ましたが、滲んだ画面やズームアップが多用され、ラストの壮絶な銃撃戦も見物でした。ラストに“ドミノ・ハーヴェイの思い出に捧げる”という字幕があり、冒頭の字幕と会わせて、ドミノという女性は実在したのでしょうか?

 さて、'12年に刊行された、日本・中国・韓国3国共同編集『新しい東アジアの近現代史(下)』(副題「テーマで読む人と交流 未来をひらく歴史」)を読みました。上巻のまえがきに書かれていたように、「('05年5月に刊行された) 『未来をひらく歴史』では、日中韓3国の学生と市民が近現代の歴史的事実を正確に理解し、あやまった歴史認識を直すことに焦点をおいた。そのために3国の間で争点となるトピックや事実を中心に内容を構成した。これに対して〈新書〉(本書のこと)では、東アジア近現代史の変化を世界史の流れと関連させて体系的に理解することに目標をおいた。そのため各国史を該当国の委員が執筆する方式を捨てて、章別に執筆を分担し、東アジア近現代史の構造的な変動に焦点をあてて叙述することにした。日中韓3国の国家体制と相互関係の構造的変動を東アジアの国際関係のなかでとらえること、東アジアだけでなく、東アジアを取りまく国際関係、とくに欧米との関係の中で把握することに留意した。
 しかし、構造的変動に関する叙述だけでは、そのなかで生きている民衆の具体的な姿が埋もれてしまいかねない。さらに民衆の活動と交流が近現代史の流れとどのようにかかわるのかが見えなくなるおそれもある。そこで、私たちは、3国の民衆の生活と交流を扱う本を同時につくることにした。すなわち、上巻では東アジア
3国の近現代史の構造的変動を時系列的に扱い、下巻では民衆の生活と交流を主題別に執筆することにしたのである。(後略)」
 では、実際にどういった内容が取り上げられているかというと、「1章 憲法――国の仕組みと民衆」、「2章 東アジアの都市化――上海・横浜・釜山」、「3章 鉄道――近代化と植民地支配、民衆生活」、「4章 移民と留学――人の移動と交流」、「5章 家族とジェンダ――男女の関係・親子の関係」、「6章 学校教育――国民づくり」、「7章 メディア――つくられる大衆意識と感情」、「8章 戦争と民衆――体験と記憶」、「9章 過去を克服し未来へ向かう」という章立てがなされ、アジェンダからグローバル化まで、そしてもちろん慰安婦の問題も取り上げられていました。特に興味深かったのは、戦争体験とその記憶を1つの章を立てて論じているところで、「加害者のなかの被害者民衆」、「冷戦体制下の記憶の断片と内面的な抑制」、「不徹底な過去精算のなかでの多様な集合的記憶の形象化」、「日本社会から排除された少数者の記憶と南北分断」、「侵略と抵抗に対する集合的記憶の強化」といった項目が見られ、「靖国神社式の記憶に対する訴訟と個人の記憶・追悼」と題されたコラムも掲載されていました。
 多くのことが学べる本であるとともに、政治家による靖国参拝が話題になっている今日、参拝している政治家にはもう一度こうした本によって歴史を勉強し直してほしいと切に思いました。

→「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/