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斎藤美奈子さんのコラム・その16 & 山口二郎さんのコラム・その2

2018-01-27 07:16:00 | ノンジャンル
 恒例となった、水曜日の東京新聞に掲載されている、斎藤美奈子さんのコラム「本音のコラム」の第16弾。
 まず、1月17日に掲載された「同じ日本人」と題されたコラム。
「十四日、杉原千畝を顕彰するリトアニアの『杉原記念館』を訪れた安倍首相は『杉原氏の勇気ある人道的な行動は世界中で高く評価されている。同じ日本人として誇りに思う』と語った。
なんだかなあ。杉原は『日本人』の立場を超えた国際人として行動した点が評価されているわけでしょ。それを自国の手柄みたいにいう?
 一方、政府は来日中の『核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)』のベアトリス・フィン事務局長と首相との面会を断った。これまた、なんだかなあ、である。昨年、ICANがノーベル平和賞を受賞した際にも無視した安倍首相。そんなに『日本人』が好きなら、平和賞の演説を行ったサーロー節子氏や核廃絶運動を闘ってきた被爆者も『同じ日本人として誇りに思う』とコメントすればよかったのに。ノーベル文学賞のカズオ・イシグロ氏には『長崎市のご出身で』『日本にもたくさんのファンがいます』という祝辞を嬉々として出したくせに。
 自分に好都合な人物や事象は『民族の誇り』に矮小(わいしょう)化し、不都合な人物や事象はあからさまに退ける。中華思想っていうんですか。どちらも国際的な評価に耳をふさいでいる点では変わらない。そのうえ、慰安婦問題でこじれていることを理由に平昌五輪への出席を見送る? この人とは『同じ日本人』でいたくないよ。」

 また、1月24日に掲載された「両社の言い分」と題されたコラム。
「『いまごろになってなんで蒸し返すんだよ』がJ社の言い分である。『金まで払って、これでおしまいにしようと合意したんだ。追加措置など受け付けられるかよ』
 『いや、あの合意ではだめだとわかったんだ』がK社の言い分である。
『合意は合意だ。破棄はしない。われわれの要求は彼女たちに謝罪してほしい、それだけだよ』。
 彼女たちとは、かつてJ社の社員のために性の奉仕をさせられたK社の女性のことである。K社では、最近社長が交代した。J社との合意は2年前、前社長のもとで交わされたもの。前社長が事実上更迭された後に、就任した新社長は、被害者の女性たちと会い、当事者の意見も聞かず、社長同士で合意したことを謝罪した。J社はそれも不快だったらしい。
 当時は合意の破棄も視野に入れていたK社だったが、『せめて正式な謝罪を』に落ち着いたのは彼らなりの譲歩だったのだろう。が、J社はその交渉すら突っぱねた。
 以上、慰安婦に関する日韓合意をめぐる、最近のゴタゴタである。ただ謝罪してほしいというだけの韓国の要求を、日本政府はなぜそこまで強く拒否するのか。こちらはどこまでも加害者だ。問題を前向きに解決するだめのアイデアを、両国で出し合えばいいじゃないの。約束が違うといって怒る加害者。盗っ人たけだけしいという言葉を思い出す。」

そして日曜日の東京新聞に掲載されている、山口二郎さんのコラム「本音のコラム」の第2弾。
1月21日に掲載された「独立した良心」と題されたコラム。
「リトアニアを訪問した安倍首相は、第二次世界大戦中、ナチスドイツに迫害され、外国に逃げようとしたユダヤ人にビザを発給した杉原千畝・駐リトアニア公使(当時)を日本の誇りと称賛した。そのこと自体には同感である。問題は、杉原の功績を現代日本にどのように生かすかである。
 当時、ドイツと同盟国だった日本はユダヤ人保護には否定的だった。杉原は外務省の訓令を無視して、個人としての良心からビザを発給し続けた。上位下達を旨とする官僚主義の対極にある人物だったからこそ、危険を冒してまでユダヤ人を助けたのである。この問題は現代社会の大きな問題である。杉原のような良心的人物の対極には、自分の思考を放棄して、非人道的な命令に唯々諾々と従うアイヒマン(ホロコーストに加担したナチス親衛隊将校)もいた。
 日本外務省は長い間杉原を冷遇した。いまなお権力者の顔色をうかがうアイヒマン型官僚が跋扈(ばっこ)する現代日本においてこそ、杉原精神が必要である。首相が杉原をそこまで称賛するなら、公務員研修や学校教育で、組織の規律は順守する一方で、正義、人道に関わる問題についてはしばしば個人としての判断で命令を破ることも必要だと教えるべきである。それは、今の日本政治の方向を百八十度転換することを意味する。」

 どれも胸がすくような、すがすがしいコラムでした。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で私と同僚だった伊藤さんと黒山さん、連絡をください。首を長くして福長さんと待っています。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)