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黒沢清監督『予兆・散歩する侵略者』第四話・その1

2018-06-06 07:49:00 | ノンジャンル
 ビルの屋上。柵を超える真壁。「あっ、高い。あー、怖いなあ」。つたい歩き。「すごいなあ。これが死の恐怖か」。
 眠りこけるタツオ。それを見つめるエツコ。
 出社するエツコ。「あの、笠谷さんは?」「倉庫なんじゃないかな?」。
 倉庫。エツコが忍び足で歩いていくと、笠谷があぐらをかいている。「あっ、笠谷さん」「君か」「何があったんですか?」「ダメだった。私は結局彼女から逃れられない。最後の日まで服従することに決めた。申し訳ない」「笠谷さん、諦めるんですか? 本当にそれでいいんですか? 何か他に方法があるかもしれないじゃないですか」。笠谷、右手を挙げると、向こうに妻が立っている。近づいてくる妻。逃げるエツコ。従業員、妻が通ると、次々と倒れる。追い込まれたエツコ。「いつもお世話になっております。笠谷の妻です」。エツコ、物を投げつける。「あなたが今イメージしているそれは? 何だろ? まず言葉にしてくれる? 頭の中でいいから。そうそう、あ、嫌悪感て奴ね。そう。嫌悪感。それ、いただきますよ」。エツコの額に指先をつけようとするが、止める。「どういうこと?奪えない。あなた一体何者?」。エツコ、笠谷の妻を突き飛ばして逃げる。
 葉子、病院へ。(中略)
 廊下で「第一外科 真壁」のプレートを見て部屋の中に入る。
 葉子「真壁さんですよね」「ええ、何でしょう?」「私、山際エツコの友人で佐伯葉子と言います」「ほう、それで?」「端的に言います。真壁さん、すごい秘密を隠してますよね。私どうしてもそれが知りたいんです。もちろん誰にも言いませんから」「僕の秘密ですか?」「ええ」「言ってもいいけど驚くんじゃないかな」「構いません」「じゃあ言いましょう。我々は地球を侵略しに来ました」「あー、なるほど。ということはあなたたちは」「宇宙人ですね。信じられます?」「ええ、信じます。そうですか。宇宙人。でもまるで人間みたいに見えますね」「あなたの目の前にいるのは真壁というれっきとした人間です。でも今は僕が彼の外見や記憶を借りて、こうやってあなたとしゃべっているんです」「ふーん、それであなたはエツコに興味を持ってますよね」「ええ」「どうしてです? どうして彼女が選ばれたんです?」「それ気になります?」「すごく気になります。エツコは私にはない何か特別なものを持っているんですか? それは何です? そんなものがあるって私エツコから聞いてません」「エツコさんは特別な人間です。だからサンプルとして生かしておくことに決めました」「私じゃダメなんですか? 私をそのサンプルにすることはできないんでしょうか?」「あなたはすごく大胆な方ですね。面白い。じゃあちょっとお話を聞かせてもらおうかな」「何でも話しますよ」「あなたのような人がもっている概念。興味あります」。
 急いで帰宅するエツコ。「タツオ?」。タツオ、横たわって苦しんでいる。「タツオ、どうしたの?」「痛い。耐えられない」。右腕を左手で握っているタツオ。「真壁を裏切ったからだ。俺が心から服従すれば痛みは収まる。でももうヤだ。エツコ、腕の付け根をきつく縛って。頼む」。タオルで縛るエツコ。「もっと、もっときつく。あ、ありがとう」「どうするの?」「(中略)エツコはここにいて」。台所に行くタツオ。「何してんの。止めて!」「大丈夫だ。失血さえ抑えられれば」「変なこと考えないで」「他にどんなこと考えられるんだよ」「あの男を強く拒否するの。心の底から」「そんなことできたら苦労しないんだよ。俺は自分でも嫌になるぐらい弱い人間なんだ」「分かった。真壁さんにその痛み、取ってもらう」「そんなこと無理だ」「ううん、私の願いだったら、きっと聞いてくれる」。
 病院。真壁が通ると、次々に人が倒れていく。
 病院へ向かうエツコとタツオ。
 病院内。倒れている人たちを見てタツオ「これはひどい。小森先生!」。小森は目を開けたまま失神。「あいつら、俺が選んだ人からしか奪わないって約束したのに」「真壁さんの部屋に行ってみよう」「ああ」。
 部屋へ向かう2人。
 ネームプレートを触り、エツコ「もういない」「分かるのか?」うん」。
 扉を開き、部屋に入る。「あいつ、何をする気なんだ?」「次の段階に進んだのかもしれない」「次の段階って? でも痛みは消えた。俺、ガイドから解放されたのかな?」「ほんと?」。微笑み合う二人。「あ、そうだ。エツコ、ちょっとここで待ってて」「え? 何?」「ひとつ用事を思い出した」「私も行く!」「ダメだ。君は待ってて」。扉を閉めるタツオ。残されたエツコは部屋の中を調べていると、目を開けたまま失神している葉子を発見する。葉子! どうして? ごめんね。ちゃんと説明しておけばよかったね」。毛布をかける。(明日へ続きます……)

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