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ジェフリー・ディーヴァー『ブラック・スクリーム』その4

2021-11-28 11:03:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。

 ライムはパソコンで検索した。(中略)
 またキーボードを叩く。それから画面を確かめて言った。「これで解答になるか? 預かり現金額(CASH TENDERED)。換算レート(EXCHANGE RATE)。外貨額(CONVERED AMOUNT)。換算額(TRANSACTION AMOUNT)」。(中略)
 セリットーが代わりに答えた。「パスポート写真か。くそ、面倒なことになったな」(中略)

「第二部 トリュフ畑のある丘で 9月22日 水曜日」

 ここがその場所なのか。これがずっと待ちわびてきた瞬間なのか。(中略)
 容疑者はあのなかにいるのか。
 人がいることは確かだ。廃屋には明かりがともっており、揺れ動く影は、何者かが室内にいることを示している。(中略)
 すなわち、まもなく姿を現すということだ。(中略)
 その先には身を隠してくれるものが一つもなかった。(ナポリ近郊の森林警備隊巡査である)エルコレは急ぎ足で私道に踏み出した。
 ちょうどそのとき、四輪駆動のピアッジョ・ポーターのバンが車庫から飛び出したかと思うと、速度を上げながらまっすぐこちらに走ってきた。
 エルコレは一歩も引かなかった。(中略)
 バンは停まらなかった。(中略)エルコレは黒い大型の拳銃を持ち上げた。(中略)
 無骨なバンは速度を落とし、甲高いブレーキ音を鳴らしながら停止した。アルビーニは目を細めてこちらを凝視したあと、バンから降りてきた。(中略)
「あなたを逮捕します。ミスター・アルビーニ」
「何の罪で?」
「とぼけるな。まがいもののトリュフを売りさばいているだろう」
 周知のとおり、イタリアはトリュフの産地として名高い。(中略)
「早く、ミスター・アルビーニ。面倒はよしましょう」エルコレはさらに距離を詰めた。(中略)
「おまわりさん! おまわりさん!」
 アルビーニが向きを変えようとした。エルコレは低い声で「動くな」と言い、人差し指を立てた。丸ぽちゃの容疑者が凍りつく。
  息を切らしながらやってきた自転車乗りは、銃と容疑者に視線を投げはしたものの、気にする様子はなかった。(中略)「この道の先です、おまわりさん! 見たんだ! すぐ目の前で起きた。一緒に来てください」
「え? 落ち着いて。もう一度ゆっくり説明してください」
「人が襲われえたんですよ! 停留所でバスを待ってた男性が襲われたんです。その人が座ってるところに、別の男が来て、すぐ近くに車を駐めて、降りて、バスを待ってた人につかみかかって、もみ合いに」(中略)
「その男は銃を持っていましたか」
「いいえ、見るかぎりでは」(中略)
 だが、アルビーニは好機を見逃さなかった。自分の車に飛びつき、運転席に飛び乗って叫んだ。「さよなら、ベネッリ巡査!」(中略)

 バス停留所に何台もの車両が集結し始めていた。(中略)
「ここでもみ合っていたんだね?」
(自転車乗りの)クローヴィはうなずく。
 エルコレは言った。「小銭で11ユーロと、紙幣で30リビア・ディナールあります」
「リビア・ディナールだと? なるほど。浅黒い肌をしていたと言ったね?」(国家警察ナポリ本部の警部・)ロッシはクローヴィに尋ねた。
「はい。北アフリカ人だったのかもしれません。いや、十中八九、そうでしょうな」
 (国家警察ナポリ本部巡査・)ダニエラ・カントンが来て、現金を見やった。「科学警察もこっちに向かっています」
 科学警察は、現金やもみ合いの痕跡に番号札を並べ、靴跡や車のタイヤ痕の写真を撮るだろう。それから、エルコレがやるよりよほど効果的に現場を捜索するはずだ。(中略)
「若者のいたずらだろうという話ですよ。見当違いの憶測でしょう。私はカモッラクラスの組織がからんでいると思います。最低でもチュニジア人ギャングが起こした事件だろうな」(中略)
 ダニエラは厚手の小さなカードを指さしていた。「新しいものです。お金と一緒に落としたんでしょう。そのあと風でここまで飛ばされてきたんですね。ディナール札も一緒に落ちていました」
「プリペイド携帯電話のカードか。いいね」ロッシはビニールの証拠品袋をポケットから抜き取り、カードをそれに収めた。「郵便警察に分析させよう」(中略)
 (ナポリ県上席検事の)スピロがロッシに言った。「ディナール紙幣やプリペイド電話カードだが、被害者のものと断定することはできないな。おそらくそうではあるだろうが、犯人は最近リビアに行ったという可能性も否定できないぞ」
「いえ、それはありえません」エルコレ・ベネッリは、ささやくような小さな声で言った。(中略)
「何だと?」スピロが険しい顔で言い、エルコレを見つめた。そこにいるのを初めて見たというような目だった。
「リビアに寄ってからイタリアに来る時間はありませんでしたから」
「いったい何の話をしている?」(中略)

(また明日へ続きます……)