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町田智浩『さらば白人国家アメリカ』その2

2016-12-08 04:37:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
・「マーケティングのプロであるトランプは的確にサイレント・マジョリティのニーズをつかみ、彼らを共和党から奪い取った。だが、予備選は制しても、本選ではどうか。『アメリカを再び偉大に』というスローガンは白人にしか響かない。アメリカが昔のほうが良かったのは白人だけで、黒人もラテン系もアジア系も過去より今のほうが確実に生活や立場が良くなっているからだ」
・「それに白人の人口は減り続けている。1980年に人口の8割を占めた白人は、現在は62%にすぎない。わずか27年後の2043年には白人が全人口の半分を切りマイノリティに転落する。その恐怖が人種差別的なトランプへの支持につながっている」
・「(前略)ヘリテージ財団に資金を提供しているのは、AIGやオールステートなどの各種保険会社、シェヴロンやエクソンモービルなどの石油会社、ボーイングやロッキードなどの航空会社、ファイザー、グラクソ、ノヴァーティスなどの医薬品会社などだ」
・「特に、シンクタンクにお多額の寄付をしているのは石油産業だ。現在、世界の課題になっているCO2規制は石油化学産業の商売の邪魔なので、地球温暖化をなんとかして否定しなければならない。09年、クライメートゲート事件が起こった。『地球温暖化はイギリスの科学者がデータを改竄したデッチ上げ』とするスキャンダルだ。このデッチ上げ説を世間に広めたのはケイトー研究所というシンクタンクだった。ケイトーの大口出資者は、石油化学コングロマリットの大手、コーク産業だった」
・「まだ40代前半のルビオは老人の党になってしまった共和党が生き残りのために求めてやまないものだ。アメリカでは高齢になるほど共和党支持率が高くなり、44歳より下はぐっと民主党支持率が高くなる」
・「マリファナの『非犯罪化』が世界的規模で進んでいる。『非犯罪化』というのは、マリファナの組織的な栽培や販売は規制するが、個人的な使用や所持をいちいち法で罰するのはやめようとする動きだ。アメリカでは2008年以降、各州で非犯罪化が進み、さらに『医療用マリファナ』を認める法律も州民投票で可決している」
・「コロラド州では12年の住民投票で嗜好用マリファナの合法化が決まり、14年元旦から施行された。(中略)一度に買えるのはわずか1オンス(約28g)。(中略)値段は350ドル以上と、闇ルートでの値段よりもかなり高め。その理由は35%の税金が課せられているからだ。(中略)その税収の最初の4000万ドルは公立学校の運営に回される」
・「だが、中西部はドイツや東欧、北欧からの移民が多く、宗教や民族的には一枚岩ではない。彼らの保守思想は宗教よりは自由主義、リバータリアン的、政治的、思想的な保守なのだ。そして個人の自由を至上のものとするリバータリアンは、麻薬や売春や銃の所持については基本的に規制すべきでないという立場なのだ」
・「アメリカは30年代以降、ずっとリベラルが支配していた。ローズヴェルト政権が始めたニューディール体制は、福祉による資本再分配、政府の市場への介入、規制強化による社会民主主義的な中央集権的政策だった。ニューディールは実に強固で、50年代に共和党のアイゼンハワーが大統領になっても体制は崩せなかった。一方当時のアメリカの保守は、赤狩りのマッカーシー上院議員や、ジョン・バーチ協会のように、KKKとあまり変わらない、人種差別と反ユダヤ主義と反共とキリスト教原理主義が入り混じった、素朴で粗野で無教養で暴力的で狂信的な田舎者ばかりだと思われていた。いわゆる『旧保守(オールド・ライト)』である」
・「だが、イエール大学出身のウィリアム・バックレーは55年に創刊した雑誌『ナショナル・レビュー』で、差別的な旧保守を批判し、ニューディールを乗り越える保守理論を構築しようとした。(中略)それは『新保守(ニュー・ライト)』という新思潮となり、80年代にレーガン政権の理論的バックボーンになった」
・「現在、アメリカの大企業や大資本からの政治資金はほとんど野放しだ。その扉を開けたのは、2010年に最高裁が出した『シティズン・ユナイテッド判決』だった。(中略)この判決によって、PAC(政治家と直接接触しないで勝手に応援する団体)への企業や団体による政治献金に金額の上限がなくなった。またたく間に数十億ドル規模の巨大PACが乱立した。これをスーパーPACと呼ぶ」
・「最高裁判事は終身で、大統領でも更迭することができない。誰かが死ぬか引退した時しか任命できない。だから任期最高8年の大統領よりも長く影響力を持つ。いや、実際、大統領以上に大きくアメリカの歴史を変えてきたのだ」(また明日へ続きます……)

町田智浩『さらば白人国家アメリカ』その1

2016-12-07 03:46:00 | ノンジャンル
 町田智浩さんの’16年作品『さらば白人国家アメリカ』を読みました。
 本文からいくつか引用すると、
・「(前略)トランプ支持者の平均像は、夫婦で年収7万ドル台の中流、中高年の高卒の白人ということになる」
・「福音派はアメリカの人口の25%を占める聖書原理主義的キリスト教徒。南部に多く住み、60年代まで政治とは無縁だったが、70年代から選挙に動員されるようになった。73年に最高裁が、人工中絶を合法とする判決を下したので、聖書の教えに従って中絶を再び違法化するためだ。法律を変えるには最高裁を変える必要があるが、最高裁判事を任命できるのは大統領だけ。なら、福音派の力で大統領を選ぼうと、投票に動きだしたのだ。1980年にロナルド・レーガンが福音派の支持を得て大統領になって以来、福音派は共和党を支える最大の票田となってきた」
・「実際の話、不法移民による暴力犯罪は多いのだろうか?(中略)アメリカの暴力犯罪件数は現在も減り続けている」
・「殺人事件全体の数は減っているものの、乱射事件の件数は近年増加している」
・「(前略)銃をむき出しで携帯することをオープン・キャリーと呼ぶ。オープン・キャリーは、アメリカのほとんど全部の州で許されている。拳銃でなくて、アサルト・ライフルでも肩からぶら下げたまま、日曜日の歩行者天国にも、ショッピングモールにも、子供連れであふれる公園にも行ける。禁じられているのはカリフォルニア、フロリダ、ニューヨークなど海外からの観光客が来る州だけだ」
・「トランプはメキシコをスケープゴートとして利用しているだけだ。かつてヒットラーがユダヤ人をそうしたように」
・「国境に万里の長城を築くという公約にも現実味がない。高さ10メートルの壁を国境線600キロに建てる場合、建設費はCNBCテレビの試算によれば250億ドルという。そんな金がいったいどこから出るというのか。『壁の費用はメキシコ政府に払わせろ』とトランプは言う。『アメリカはメキシコに対して580億ドルも貿易赤字があるんだから』もちろんメキシコ政府は絶対に払わないと言っている。払うはずがない。トランプも本気で壁ができるとは思っていないだろう。ただ、彼は知っているのだ。敵を設定し、憎しみを煽り、戦時的ムードを作り出せば、人々は強力なリーダーシップを求めることを」
・「FOXニュース・チャンネルは、ニュース専門ケーブル・テレビ局の業界トップ。400万人といわれる視聴者の過半数は(中略)68歳以上の白人。ニュース・チャンネルというが、その内容は共和党の堂々たるプロパガンダである」
・「ティーパーティは最初、草の根の市民運動と報道されたが、10年に『ニューヨーカー』誌の潜入取材で正体が暴かれた。実は石油化学コングロマリットのコーク産業が資金を出して組織したアストロターフ(人工芝、ニセ草の根)団体だった。オバマは1300万人の小口寄付者から総額9500万ドルの選挙資金を集めて圧勝したが、共和党を支える大富豪や大企業がいくら莫大な寄付をしたくても法律で限度額が定められている。そこで作られてたのがティーパーティだった」
・「しかし、ティーパーティはもう、ない。政治に金を投じる隠れ蓑が必要なくなったからだ。10年、最高裁が法人も『人』として政治に参加する権利があるという画期的な判決を下した。この判決によって、PAC(政治活動委員会)という応援団体なら献金の額の上限がなくなった」
・「トランプはずっとクルーズを『ライイン・テッド(嘘つきテッド)』と呼んできた。彼は福音派であることを強調しながら、ティーパーティ議員としてコーク兄弟の支援を受け、妻が取締役を務めるゴールドマン・サックスをはじめ、ウォール街からも多額の寄付を得てきた。それをトランプはずっと批判してきた」
・「サイレント・マジョリティとは具体的には、南部や中西部の白人ブルーカラー(労働者)を意味する。彼らは伝統的には民主党支持だったが、公民権法で黒人の権利を認めた民主党に反発していたのを、ニクソンが取り込んだ。これを『南部戦略』と呼ぶ」
・「(前略)トランプも『強いアメリカ』を復活させると言うが、日本と韓国、NATO各国に安全保障を自己負担させようと主張している。つまり『世界の警察』からの撤退案だ。が、トランプ支持者はそれを求めている。彼らにとって世界とは遠い遠い、自分とは無関係なものだ。アメリカ人の8割はパスポートを持たず、兵隊にならない限り、一生に一度も外国旅行をしない」
・「トランプはイデオロギーにも現実性にも国際情勢にも頓着せず、ただ庶民の求める政策だけを提示する。そんなポピュリズムに、金持ち優遇の共和党の政治家が勝てるわけがない」(明日へ続きます……)

三池祟史監督『太陽の傷』その3

2016-12-06 05:54:00 | ノンジャンル
 一昨日の東京新聞で、法政大教授の山口二郎さんが「価値観の共有?」と題するコラムを書いてらっしゃいました。引用させていただくと、「安倍首相は同盟国を訪問すると、中国への当てこすりという意味も含め、日本と同盟国は自由、民主主義、法の支配などの価値観を共有すると必ずいう。この無意味な自画自賛に、最近腹が立つようになった。いったい日本のどこで民主主義や法の支配が尊重されているというのだろう。
 臨時国会は会期延長され、重要法案がまさに駆け込みで処理されようとしている。年金改革法案の審議では安倍首相はこれ以上議論しても無駄とうそぶいた。また、いわゆるカジノ解禁法案については、委員会ではほとんど審議されないまま採決され、与党はこの国会での成立を目指している。そこに現われているのは、議会あるいはそこでの議論に対する与党政治家の徹底した蔑視であり、冷笑である。(中略)国内向けに自民党の憲法草案を振りかざして、そのうえで欧米の指導者に価値観を共有していますと言える政治家は、日本語の読解力がゼロか、民主主義や法の支配という概念を全く理解していないかのどちらかである」。まったく同感です。

 さて、また昨日の続きです。
 少年、拳銃と実弾を若者たちの元へ運ぶ。「ネットで何でも手に入るんだなあ」「やっぱすげえ。あの人は」「何味がする?」。少年、実弾の匂いを嗅ぐ。
 「昼から酒なんか飲んで。何かあったの? まさか神木から? 一度でも会ったら、私とナツミを裏切ることになるんだからね」。幼児を抱いてるカオリ。
 “13歳は人を殺してもいい。罪にならない。法律に守られている”と書かれているメールを読む少年。スローモーションで歩いて来る少年。
 電話。「片山さん、須藤です。神木から3人で会いたいって」「とにかく、あいつの言う通りにしろ」。
 男、ヘルメットをかぶり、バイクで出発。滝沢、すぐに尾行開始。
 駐車場にバイク停まり、ヘルメットを取った男は廃墟へ。須藤「神木?」。背後に拳銃を構えた少年。タクシーで駆けつけた片山は滝沢を見つけて「どうしてここに?」。パパーン、ズドン、ズドンという音。片山、滝沢に「ここにいろ」。片山、死んでる須藤を発見。
 「タケシ、本当に殺したの?」「やぱいって」。タケシ、少女に向かって拳銃を向けて「バン!」と言って驚かし、笑う。「ちくったら、お前も殺す」。
 新田「米軍から流出した拳銃と実弾200発が転売されたそうです。片山名義で。すぐ署へ」。片山「車、借りるぞ」と滝沢の車を勝手に発進。
 「神木が職場に出ていない。片山は公務執行妨害で直ちに逮捕しろ」。
 女「主人がそう言ってた。3年前、木原さんを殺したのは神木だと。話したら娘に手をかけると」。
 「片山、命を無駄にするな。アヤノちゃんのためにも」
 片山の顔のアップ。雨。月。雲。オーバーラップ。
 タケシ、拳銃を手にして笑う。撃つマネ。ボーリングのピンが転がる。「誰? 誰かいるんでしょ?」。タケシ、近づいて来る。いきなり片山に殴られ、何発か発砲するが片山には当たらず、殴り倒されて、ゴホゴホ咳をし、苦しがる。「あの人って誰なんだ?」「痛い」。タケシのスマホには“こいつを殺せ”という文と片山の写真がメールで送られてきていた。
 若者たち「誰だ?」「殺れって言ってんだから殺っちゃおうぜ」
 滝沢からの電話「片山さん、今、神木君と一緒です」神木「僕を殺したいんでしょ? 彼女は人質です。場所を言いますから、すぐ来てください」。
 夜の工場の廃墟。滝沢「誰が須藤を殺した?」少年「この町には人を殺したい人がたくさんいる」滝沢「病気よ」少年「普通だよ」。片山、車で乗りつける。片山「神木! どこだ?」。パンという銃声。そして銃撃戦。「面白え。最高!」。片山も拳銃を持っている。相手を探して周る片山。光が明滅している階段を上る。電球が消える。真っ暗闇。待ち伏せる拳銃のアップ。急に明るくなり、銃撃戦。片山、3人を撃ち倒す。そのうちの1人「すいません。すいません」「神木はどこだ?」「あの人に会ったことはない。誰も」「本当か?」。明かり、また消える。突然明るくなり、片山は脚を撃たれ、片山も反撃するが、神木の前に立たされた滝沢を撃ってしまう。神木「あ~、外れちゃった」。片山、何度も引き金を引くが、もう銃弾が残ってない。神木「ついてないねえ。片山さん」。神木、仲間だった若者たちのとどめを次々に刺す。後ずさりする片山。そこに近づいてきた神木に、片山はナイフで切りつけ、乱闘となり、結局神木は倒れ、逃げようとしてはいずっていく。片山は神木の頭を床に何度も叩きつけ、殺す。滝沢、生きていて、半身を起こしている。
 月。朝。電話。「片山さん、今どこに?」「頼みがある。妹のカオリをよろしくな」。

 黒沢清を彷彿とさせるラストの廃墟での銃撃戦など、見どころ満載でした。画面構成、編集、演出、どれをとっても一級品だと思います。

三池祟史監督『太陽の傷』その2

2016-12-05 03:59:00 | ノンジャンル
 今日はロバート・オルドリッチの34回忌の日に当たります。素晴らしい作品を残してくれた彼に改めて、感謝したいと思います。

 さて、昨日の続きです。
  「片山さん、はじめまして。保護監察官の滝沢(佐藤藍子)です。神木君は仮釈放になりました。再犯行はさせません」「自分の目で確かめたい」「これが謝罪の手紙です。彼は独立する生き方を選びました」「まさか地元へ?」。
 電車を降りる片山。
 アパートの一室。男「ここなら1カ月くらい、いてもいいぞ。ただしもう協力はできない。俺の方にもマスコミが来てるし、家族もいる」「大さん、ありがとう」。キーを渡す大。「すまんな」。大、去る。水滴の音。血のしたたり。娘の遊ぶ姿。「パパ、遊ぼう」。片山、水道栓をギュウギュウに閉め、ハアハアと息をする。
 画面、カラーに戻る。吹奏楽の練習。オーバーラップで練習が終わり、帰る生徒たちとあいさつする女教師。
 職員室。兄の片山から電話。女教師「久しぶりね。今どこ?」「仮釈放の件、聞いたか? お前も危ない。横浜に来い」。電話が変わって男が出る。「~署の新田です。相談に乗らせてもらっています。カオリさんのことは私が守ります」カオリ「私にも守る子供たちがいるの。騒ぎを起こさないで」。
 片山、3人のうちの1人が働いているクリーニング屋をつきとめる。
 「神木とはもう関係ない。俺はあの店を継いで、結婚し、子供もいる」「須藤、手がかりになるのはお前しかいないんだ。何か思い出したらここへ連絡してくれ」。
 少年、次々に店頭のDVDやゲームを自分の袋に入れていく。店長「何やってんだ?」。少年、逃げ出し、店長追っかける。袋小路に追い込まれた少年。階段を上りだし、店長も階段を上ると、下から少年とは別の若者によって脚を切りつけられる。少年「おえ」。少年と若者は倒れた店長の両腕にもナイフを突き立てる。若者「このナイフ、買う?」。少年、札束を渡す。若者「持ってんじゃん」「お年玉貯めた」「へえ~」。少年と若者3人が去り、動けない店長は見送るしかない。
 夜。雨。カオリ「あなたの言う通り。子供を守るためなら、私も法律を破るかも」新田「何かあったらすぐに連絡してくれ」。
 商店街。子供連れの親。それを見つめる片山。
 クリスマスのネオン。住宅の庭でザクザクと音を立てている少年。レジ袋の中から猫の悲鳴。ギラリと光るナイフ。少年が振り向くと、無邪気な笑顔。しかし片山と認めると、怯えた顔になり、逃げだす。
 夜。カオリはソファに倒れ込む。起き上がり、外を見ると、大雨。
 ウィーンという音。製品を研ぐ若者たち。「石川、そろそろメシにしよう」。サーフボードをしまう石川。「仕事も慣れて来たし、そろそろ波乗りでもするか?」「あ、はい。よろしくお願いします」。
 幼児を抱き、家の中に入る男。片山が見ている。滝沢とその同僚の保護監察官が現れ、「神木君も須藤君も更生している」「ただ会いたいだけなんだ」「須藤君に近づかないように」「どうして皆、加害者の権利ばかり守ろうとする?」「弁護士に相談させて。神木君を担当していた赤津弁護士に」。
 赤津「報告する義務はない。かえってあなたが訴えられることになる」。
 滝沢「力になれなくて、すみません」。片山、滝沢を振り切り、夜の街へ。3人の若者。片山を捜す滝沢。若者たちを捜す片山は、ナイフを持っていた少年を見つけ、尾行。
 少年、滝沢とすれ違うと「滝沢さん、ケガしたくなかったら、お金をちょうだい」とナイフを突きつける。「あなた、まだ子供じゃないの。そんなもの、しまいなさい」。少年が滝沢を切りつけようとしたところに、片山が駆けつけ、少年を殴り倒す。「何してんだ? こんなところで」「片山さんを捜してて」。少年に「このナイフ、どこで手に入れた?」「あの人の……」。少年、逃げ出し、片山は追いかけるが、結局まかれる。へたり込む片山。そこへ滝沢。
 早朝。片山「神木の持っていたナイフによく似てる。あいつを見つけたら神木にたどり着く」滝沢「それは危険です」「本当に更生してるなら安心できる」「彼は偽名で生活しています。遠くから見るだけなら。声をかけないと約束してください」。
 「工場のオーナーも保護司です。もう一人の若者も保護観察中で、神木君と一緒に住み込みで働いています」。ウィーンという音。研磨。片山、車を降り、滝沢の制止も聞かず神木の元へ。「神木に会いたい」オーナー「そんな奴はいない。家宅侵入罪で訴えるぞ。まだ保護観察中だ」。
 神木、自室に逃げ込み、飴を舐めている。
 滝沢の上司「保護更生プランが台無しだ」。謝る滝沢。片山「人殺しが3年やそこらで更生できますか?」「娘さんのことはあなたにも責任があるのでは? 差し違えるつもりだったとか。いずれにせよ、神木には会わないでください。あなたを逮捕する可能性もあります」。
 滝沢の上司「片山を見張れ。どんな小さいことでも逮捕する」。
 クリーニング屋。電話「久しぶり。片山がそっちに行っただろう? 分かってるよ」「俺は何も言ってない」。(また明日へ続きます……)

三池祟史監督『太陽の傷』その1

2016-12-04 03:34:00 | ノンジャンル
 三池祟史監督の’06年作品『太陽の傷』をWOWOWシネマで見ました。
 通勤中の男(哀川翔)が電車から降りる。自転車置き場で自転車を出していると、携帯が鳴り、「今、どこ? 『パパの誕生日』って、アヤノも楽しみにして待ってるのよ」と妻。「駅前だよ。遅くなってごめん」と男。
 コンビニの前のベンチに座る男2人。「一応、警察には電話しといたけど」。その2人の前を自転車で男が通過していくと、ベンチの2人はそれを見送る。
 一人の若者に対し、殴る蹴るの暴力を振るう3人の若者。自転車の男は、それに気づき、一旦は見過ごそうとするが、結局自転車を停める。3人の暴力はエスカレートし、ダムダム弾を被害者の若者の顔に連射。「だめじゃん、頬に穴が開いてないじゃん」。一人の若者、大きな飴を舐めている。自転車の男「おい、やめろ!」。無視して暴行を続ける3人。間に入った自転車の男と3人は格闘となり、3人のうちの1人はナイフを取り出す。パトカーの音。自転車の男は、ナイフを持った男を組み伏せ、顔を何度も殴る。駆けつける警官。「ケンカじゃない!」と自転車の男。ナイフを持っていた若者の死んだような瞳のアップ。ギラリと光るナイフ。
 警官「片山さん、相手は中学生ですよ。浮浪者に暴力をふるっていたとしても……」傷だらけの片山ddd「あれは正当防衛です。あいつらをもう、帰したんですか?」「しょうがありません。そうするしかないんです。今度やったら過剰防衛になりますよ」。
 かすかな風の音。夜。一軒家に帰宅した片山。「警察から電話なんて驚いたわ。ほっとけば良かったのに」。娘が描いた絵を見る片山。「家族のことだけ考えてて」「わかった。もうこりごりだ」「週末どこかへでかけましょうよ」。
 眠り込んだ娘をベッドに寝かす片山。
 金属音。無音。職場。パソコンで製図する片山。
 夜。自転車置き場から自転車を出す片山。
 コンビニ店員は一瞬、片岡を見る。「家族で遊ぼう」という雑誌を手にする片山。道をはさんで先日の若者のうちの1人が見える。片山は駆け出すが、店を出ると、もういない。
 帰宅すると、妻「買い物中に変な男に尾行されたの」。
 警察の地域課に電話する片山。「奴らは私の家族を付け回してる。名前と住所を教えてくれ」「未成年だし、プライバシーの問題もあるから」と一方的に電話を切られる。
 金属音。3人の若者。
 職場に電話。「歩道橋の下で人が死んでたらしいぞ」。
 片山は自宅に電話するが、誰も出ず。喫茶店で男と話す妻。娘は一人で店を出て、目の前の公園で遊んでいる。やがて妻は娘がいなくなっているのに気づく。「アヤノ!」。娘を探し回る妻。
 ナイフの若者に手を引かれて商店街を歩くアヤノ。監視カメラを見つめるナイフの若者。探し回る妻、ナイフの若者とアヤノ、この2つのカットがカットバック。
 ナイフの若者、レジ袋の中にグチャグチャした赤い塊を持って廃墟となった場所を歩く。
 帰宅した妻。「アヤノ!」
 草むらに捨てられたアヤノの遺体。
 少年、片山の自転車に例のレジ袋を提げる。
 携帯に出た片山「おい、どうした?」
 遺体。「パパ、パパ」。
 走る片山。看護師によって運ばれるアヤノの遺体に妻は泣きついている。走ってきた片山に刑事の尾崎が「話を聞きたい」と言う。「15 ,6歳の少年といたらしい。少年はすでに確保してある」。駆け出す片山。追う青年刑事。タクシーに乗って去る片山。
 警察署前。ごった返す報道陣の中を少年が連れられてくる。片山も駆け寄り、警官に制止される。殴られた痕のある少年の横顔。片山「ぶっ殺してやる!」。
 アヤノの葬式を報じるニュース番組。葬儀で泣き崩れる妻。茫然としてニュースを見ている片山。「少年と殺された少女の父との間にトラブルがあり、少年はその父親に暴行を受けていた」と報じるニュース。
 ごった返す報道陣。
 片山「奴は被害者みたいになってる」刑事「報道には手を出せない」「妻はノイローゼ寸前だ」。
 片山に男。「少年の弁護士の赤津ですマスコミはすぐに静かになります」。
 妻「約束したのにね」とぬいぐるみを抱く。風の音。
 うっそうとした草むら。風。片山「2年前にも殺人未遂をしている。神木は少年院行きだ。この手で死刑にしてやりたい」。
 片山に男(勝野洋)「うちの会社に来い。学生の頃にバイトを世話してくれたお礼だ」妻の妹「お姉ちゃん、知らない?」
 歩く妻。
 片山が外に出ると、屋上から飛び降りた妻が車の上に降ってくる。ワイパーからしたたる血。暗転。
 “3年後”の字幕。画面、白黒に。歩く片山。ドアから事務所へ。「飲み物をどうぞ」と女子社員。「少し休んでは?」上司「片山はワークホリックだからなあ」。
 墓参りをする片山。
 電車内。雑誌の吊り広告に「アヤノちゃんの殺人犯、偽名で既に社会復帰?」の文字。
 少年院。片山に「1年8カ月で出所しました。居所は教えられません」。(明日へ続きます……)