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ジェイムズ・キャメロン監督『タイタニック』その2

2019-12-13 18:25:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。

 ジャック「最初は漁船の手伝い。そしてサンタモニカの海岸で1枚10セントで肖像画を描いた」「私も好きな道を歩みたい」「安いビールを飲んで遊園地の乗り物に乗って吐く。馬に乗って浜辺を走る」「女が馬にまたがるの? 手ほどきをしてほしいわ」「いいとも」ローズの母が通りかかる。ローズ「お母さん、ジャック・ドーソンさんよ」。ナレーション「私の命の恩人に皆は興味と関心を示した。母だけは虫けらを見る目つきだった」。モリ―「あの人たちと食事することは蛇の巣に入ることよ。服はあるの? 来なさい」。
 モリ―「良かったわ。私の息子のサイズと同じよ。とても素敵」。
(中略)階段でローズと出会ったジャックはローズの手を取りキスをする。「映画で見て一度やりたかったんだ」。ローズ「ダーリン、ドーソンさんよ」キャル「ドーソン? 驚いたな。本物の紳士かと思った」。
 ローズ、ジャックに船の一等客たちの説明をする。「すぐ慣れるわ。自分も金鉱を持ってると思えばいいの」。(中略)ナレーション「緊張を隠した彼の芝居は見事だった。ただ母だけは案の定辛辣だった」。
 おしゃべりを楽しむ一等客たち。
 別れ際にローズと握手したジャックは、秘かに彼女の手の中に紙片を入れる。紙片には「今を大切に。時計の前で待つ」と書いてある。
 時計の前で待ち合わせた二人。ジャック「本当のパーティへ行こう」。
 ダンスに興じる三等客たち。ローズ「ステップは?」ジャック「自由にやればいいのさ」。台に乗り、タップダンスに興じる二人。(中略)
 ワインをごくごく飲むローズ。「一等の娘は飲めないと思った?」「よし、皆音楽だ」。
 キャル「昨夜待ってたのに」ローズ「疲れて…」「階下で騒いだからだろう?」「私にスパイをつけたのね」「あんなことは二度とするな」「私はあなたの使用人? フィアンセよ!」「そう、僕のフィアンセだ!! フィアンセで妻だ!! 法的にはまだだが、実質的には僕の妻だ!! 夫を甘く見るような妻は絶対に許さん!! 分かったな?」「ええ」「それでいい」。
 ローズの母「あの男ともう会わないで、ローズ、分かったわね」「興奮すると鼻血が出るわよ」「ふざけないで。うちにはもうお金がないのよ」「知ってるわ」「お父様の遺産は家名だけ。あとは借金の山。この結婚が私たちの生きる道なのよ」「責任を私の肩に?」「自分勝手な娘ね」「自分勝手は私?」「私に縫子をさせたいの。持ち物を競売に?」「不公平だわ」「仕方ないのよ。私たちは女。それが女の運命なのよ」。ローズの頬にキスする母。
 教会で聖歌を歌う一等客たち。そこへジャックが現れる。執事「だんな様とブケーター夫人は君に感謝しておられる。これはお二人の感謝の“しるし”だ」「金なんかいい」「君は三等客のはずだ。ここにはもう来ぬように」「一目ローズに」「すまんがドーソン君を三等船室へ連れ戻してくれ」。
 操舵室。「操舵輪が2つも?」「ノートルダム号から氷山の警告が」船長「ご心配なく。この季節にはよくあることです。全ボイラーを点火。スピードを上げます」。
 ローズ「救命ボートに乗れる人数は、乗客全員の数より少ないのでは?」「半数です。あなたは鋭い。新式の吊り橋でもっとボートを積めるんですが、デッキが見苦しくなると反対意見が。それで仕方なく」「沈まない船にはムダだよ。次は機関室を」。ジャック、後方から現れ、ローズを部屋の中へ入れる。「ジャック、困るわ。“あなたに会うな”と」「話がある」「ダメよ、ジャック。私、婚約してる。結婚するの。キャルを愛してる」「君はカチンと来る女の子だ。甘やかされたわがまま娘。だけど本当の君は驚くほど心の美しい、誰よりも素晴らしい娘、いや女性だ。聞いてくれ。僕だって世の中を知ってる。ポケットには10ドル。君にあげられるものは何もない。それは分かるけど引き下がれない。飛び込む時は一緒。君を見守っていたい。心配だから」「私は大丈夫よ。心配しないで」「本当に? 嘘はよせ。君は捕われた蝶だ。逃げなきゃ死んでしまう。君は強いけど、君の中で燃えている熱い炎はやがて消えてしまう」「あなたの助けは不要よ」「そうだな。闘うのは君だ」「もう私には構わないで」。
「印刷屋も大変だったとか」ローズの母「招待状を二度刷り直したわ。ブライドメイドのドレスは急遽あつらえ直し、ローズは私の嫌いな“すみれ”色を。私への嫌がらせよ」「私がデザインしたドレスが雑誌に載ったの。マルボロ―公爵夫人のお嬢様のものよ。早く私に相談して下されば素敵なドレスをお作りしたのに」。

(また明日へ続きます……)

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ジェイムズ・キャメロン監督『タイタニック』その1

2019-12-12 18:40:00 | ノンジャンル
 遅ればせながら、ジェイムズ・キャメロン監督・共同製作・脚本の1997年作品『タイタニック』をWOWOWシネマで観ました。

 セピア色のタイタニック出港の様子。
 潜水艦が海底に沈みタイタニックの中にカメラを動かし、ホックリーのベッドを見つける。今日は給料日だとはしゃぐブロック。
 ブロック・ラベットは海の墓泥棒として知られた男だが、信じられないと言う。
 ローズ・カルバートはそのニュースを聞き、ブロックに連絡を取る。
 ローズ・ブケーター(ケイト・ウィンスレット)は当時17歳。来年で101歳になる。元女優だ。
 孫娘のリジ―に車椅子で連れられてきたローズは絵画の写真のヌードモデルが自分だったと言い、その首を飾るルイ16世のブルー・ダイヤモンド、別名“碧洋のハート”はピッツバーグの鋼鉄王の息子キャルドンが婚約者のローズに贈ったもので、1924年4月14日に沈没した当日に身に着けていたダイヤだとも言い、当時の鏡も興味深く見ると、現在のタイタニックにもう一度会いに行きたいと言う。(中略)
 “サウサンプトン港”。できたばかりのタイタニックに乗船する人々。
 ジャック・ドーソン(レオナルド・デカプリオ)はポーカーで勝ち、仲間のファブリツィオとともに故郷のウィスコンシン州に帰れることになる。「今日から王侯貴族だ」とはしゃぐ二人。
 シェルブールでモリ―・ブラウンが乗ってくる。彼女は“不沈のモリ―・ブラウン”と呼ばれ、夫が西部で金鉱を当てた“新興成金”そのものだった。翌日にアイルランド沖から一路西へ進路を取ったタイタニックはいよいよ外洋へと進み、全速前進する。船首にいたジャックとファブリツィオは船が21ノットで進んでいると知らされ、船首と並んで進むイルカを見て興奮し、「世界は俺のものだ」と叫ぶ。
 タイタニックは動く建造物だと語る設計士。
 デッキでスケッチをするジャック。上のデッキに現われたローズに目を奪われたジャックはファブリツィオに「やめとけ。手の届かない高嶺の花なんだから」と戒められる。
ローズの独白「当時の私には人生の先が見えていました。来る日も来る日もパーティとダンス、ヨットとポロ競技の観戦、いつも同じ顔ぶれでくだらないおしゃべり。断崖に立たされた気持ちでした」。
 デッキを走るローズは、柵を越えて海に飛び込もうとする。それに気づいたジャックが近づいていくと、ローズは「来ないで」と言う。「こっちへ来い。飛ぶものか。どうせ飛ぶんなら僕も一緒に」と言って靴を脱ぐ。ウィスコンシン州が故郷だと言うジャックは寒くて、湖に落ちた時は痛みしか感じなかったと言うと、ローズは「イカれた人なのね」と答え、ジャックは「皆そう言う」と言う。「手を僕に」と言ってジャックと手をつないだローズは足をすべらし、本当に海に落ちそうになる。「助けて!」と叫ぶローズ。ジャックは何とかローズを引き上げるのに成功したが、ローズの叫び声を聞いて駆け付けた警備員に誤解されて連行される。
 ローズの婚約者のキャルは「絶対に許さん。僕のフィアンセに何をした?」と咎めるが、ローズは「事故だったの。プロペラを見ようと思って」と答える。ローズを助けてくれたお礼に20ドルを渡そうとして断られたキャルは、「では明日の晩、僕らと食事をしよう」とジャックに言ってくる。
 キャル「なぜ暗い顔を? 来週の婚約発表パーティで贈るつもりだった56カラットのダイヤを今あげる」と言う。それはルイ16世由来の王族が持つものであり、「君のほしい物は何でも与えよう。僕を受け入れてくれ」とも言う。
 ジャック「15の時に両親が死に、故郷に親類がいなかったから思い切って故郷を捨てた。今はこの通りの根無し草だ。僕の話ばかりしたけれど、本当は何を話したい?」ローズ「お礼を言いたいの。“金持ち娘の悩み? ふざけるな”と思ってない?」「そんなこと思ってない。それよりも“何が彼女を追い詰めたのか”が知りたい」「すべて。私の周りの世界のすべてが惰性の世界なの。フィラデルフィアの社交界に500通の招待状を出したのよ」「愛してるのかい?」「お礼は言ったわ」「侮辱もしたね」「ここは一等客の場所よ」「君こそぶしつけだなあ」「画家を気取ってるの?(ジャックのスケッチブックを見て)上手ね」「パリではけなされた。でもパリでは女がすぐに服を脱いでくれるから助かる」「この人に恋したの?」「恋したのは美しい手だけ。脚の悪い売春婦だった」「あなたは人を見抜く目を持ってるわ」「君もね」。
 船長「最大速度はエンジンを慣らしてから」新聞社の社長「君の最後の航海を飾るニュースになるぞ」。

(明日へ続きます……)

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山田詠美『唇から蝶』その2

2019-12-11 12:26:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 そんな生活を続けている内に、かのじょは 体の調子を崩して床に着いた。ひどい頭痛と口内炎に悩まされている様子だった。ぼくは、彼女の体温を計り、頭を氷で冷やした。
「あなたに看病されると治るものも治らなくなる。だって醜男なんだもん」
 彼女は、そう言って、ぼくを困らせた。青虫は、からからに乾いて苦し気に暴れていた。それらを湿らせるために、何度もキスをしなくてはならなかった。
「そういうことしても無駄みたい」
 彼女は言った。それは本当だった。緑色の青虫は次第に茶色に変色して行ったのだ。嫌な予感がした。ぼくは、これと同じ状態に変わって行った青虫を小学校の時に見たことがある。完全変態という言葉を、ぼくは久し振りに思い出した。
「ねえ、私が、あなたのことを、すごく悪く言ったの怒ってる?」
 彼女は、掠れた声でそう言った。ぼくは、首を横に振った。
「その全部を帳消しにするような言葉を思いついたんだけど」
 彼女は、その言葉を口にする前に昏睡状態に落ちた。唇は、すっかり固くなっていた。ぼくは、彼女の寝床の側に膝を抱えて、顔の上の二体のさなぎを見ていた。(中略)
 いつのまにか、ぼくは眠りこけてしまったらしい。小さな羽音で我に返ると、彼女の顔の上には、二匹の大きな蝶がいた。(中略)羽には、うっすらと金色がかかり、それは、いつか行った川べりで開けたワインを思い出させた。ほら、見てごらん。彼女はそう言った筈だ。どっちにいっぱい太陽が入っているでしょうか。
 ぼくは立ち上がり窓を開けに行った。外の空気が室内に流れ込むと同時に、蝶は、彼女の顔の上を飛び立った。そして、部屋の中を飛びまわり、二匹で遊ぶように、窓から出て行った。(中略)
 彼女は、いつのまにか目覚めていた。ぼくは、慌てて彼女の許に駆け寄った。唇は、もぬけの殻になり干からびていた。
「大丈夫かい?」
 彼女は、ぼくに答えようとしたが、さなぎの脱け殻は、もう言葉を紡がないのだった。彼女は、それでも、必死に口を動かしていた。しかし、自分でも、無駄な抵抗だと悟ったようだった。彼女は、悲し気な瞳を、ぼくに向けた。ぼくは、彼女を抱き締めて、こころの中にしまっておいた名前を呼んだ。
「みみちゃん」
 彼女は、顔を上げて、恨めしげにぼくを見た。そして、寝床の側に置いてあったヴァニティケースを指差した。ぼくは頷いて、それを開け、いつもの口紅を選んだ。慣れない手付きで紅筆を持ち、ぼくは、彼女の唇の皮に紅をのせた。指は震えて、はみ出してしまったけれども、ぼくにしては上出来だった。彼女は、もどかしそうに唇を動かしてぼくに何かを伝えようとしたけれども、ぼくは、そんな彼女を制して、初めて、やわらかくその体をシーツの上に押し倒した。

 何とも官能的な作品でした。

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山田詠美『唇から蝶』その1

2019-12-10 18:39:00 | ノンジャンル
 文芸雑誌『群像』2016年10月号「創刊70周年記念号・群像短篇名作選」に掲載されていた、山田詠美さんの1993年1月の作品『唇から蝶』を読みました。

 ぼくの妻の唇は青虫である。(中略)
 妻の話によると、唇が青虫になる可能性は、幼い頃からあったらしい。大人たち、特に男の大人たちは、いつも、彼女の唇をうっとりと見詰めて、大きくなったら、さぞかし、魅力的な唇になるだろうと呟いたそうだ。(中略)
 いつ頃から、その動きある唇が、青虫に変わったのかは、はっきりとは言えないそうだ。(中略)
 彼女は、外出する時には、いつも念入りに口紅を塗る。ファンデーションを塗り、白粉をはたき込み、その上に、幾重にも紅を重ねるので、他の人々には気付かれることがない。(中略)
 初めて、彼女を見かけたのは、ある冬の朝のことだ。ぼくは、アルバイト先の職場をくびになり、職探しをしている最中だった。(中略)停まったバスから、黒いコートの衿を立てた彼女が降りて来た。(中略)厚い、肉感的な唇だった。ぼくは、仕事の面接のことなど忘れてしまい、彼女の後をつけた。(中略)
 どのくらいの時間が過ぎただろうか。ようやく彼女は立ち止まり振り向いた。
「変質者なの?」(中略)ぼくは、おそるおそる頷いた。(中略)
「その唇のことですが」(中略)
「一回、二万円よ。ちょっと高いかもしれないけど、私の唇は特別なの。お金あるの?」
 金などなかった。いったい、何を、二万円でしてくれるのか見当もつかなかった。仕様がないので、ぼくは、結婚してくれと、その場で申し込んだ。半分冗談のつもりだったが、驚いたことに彼女は、あっさりと承諾した。そうして、ぼくたちは夫婦になった。
(中略)
 赤く塗った唇で、彼女は、時折、ぼくに良いことをしてくれた。これが二万円の内容なのかと、ぼくは彼女の頭を股間に置きながら思った。(中略)ぼくたちは、体を重ねたことがない。何故なら、彼女が、望まないからだ。(中略)
「でも、結婚したんだから」
「結婚すると、愛し合わなきゃいけないってものでもないでしょう? 違う?」
「さあ」
「あなただって、私の唇だけ追いかけて来て求婚したんだから、文句は言えない筈よ」
 そう言われればそうだ。(中略)だいいち、彼女のことは何も知らない。婚姻届けを見たら、青木美代子という平凡な名前があった。結婚して、ぼくの鈴木という姓になった彼女は、ますます平凡な名前を持った訳だ。(中略)
「きみのこと、みみちゃんて呼ぼうかなあ」
「よしてよ。そんなくだらない」
 可愛い呼び名だと思ったが、彼女が露骨に嫌な顔をしたので、ぼくは、心の中で彼女を思う時にだけ、その名を使った。
 彼女は、時折、とても汚ない言葉で、ぼくをののしった。(中略)
「きみ、昔から、そうなの?」
「何が?」
「そういうふうに、人をののしって来たの?」
「そうよ」(中略)
 彼女は、何週間かに一度、まるで発作を起こしたかのように泣きわめくことがあった。そういう時、いつもの口汚ない言葉はなく、うなるような泣き声だけが部屋中に響いた。(中略)
 夏の初めに、ぼくは、彼女をデートに誘った。山の方の川べりにでも行ってみないかと言ったのだ。(中略)
「あなたといると退屈しちゃうかもしれないから、ワインとか、お弁当とか、詩集とかも用意しなきゃ。ああ、忙しい」(中略)
 (中略)彼女は、川の水で冷やした白ワインを注意深く開けて、プラスティックカップに注いだ。
「ほら、見てごらん」
 彼女は、カップを、陽ざしにかざした。ワインには光の粒が沢山溶けているように見えた。
「一杯の川の水と一杯のワインのどちらにいっぱい太陽が入ってるでしょうか」(中略)
「でも、ワインだと思うな。私は、ちゃんと飲めるものが大事だもん。ほうら、太陽を飲んでやるぞ」(中略)
「そんなに急に飲んじゃって大丈夫なの」
「あなたの精液も、こうやって飲んでるんだよ」(中略)
「どうして、いつも、口紅塗ってるの?」
「おいしいから」
 ぼくは、ただ頷いただけだった。彼女が本当のことを言う訳がない。
「口紅は、おいしいよ。ほんとだよ」
 彼女は、そう呟いて、ぼくを見たが、なんだか悲しげだった。(中略)
 その夜、彼女は、眠っていたぼくを起こして、話があると言った。ぼくは、眠い目をこすっていたが、彼女の話を聞く内に、すっかり目が覚めた。彼女の話とは、もちろん、唇の秘密のことだった。(中略)
 ぼくは、彼女をそっと抱き寄せた。(中略)優しく、つぶさないように、泣きたいような気持でキスをした。
 その夜以来、彼女は、ぼくの前であまり口紅を塗らなくなった。(中略)ぼくは、彼女の顔を、まじまじと見詰めたりもした。しかし、やがて、慣れた。(中略)
 (中略)彼女は、相変わらず、ぼくをののしっているし、ぼくに断りもなく、どこかに出掛ける。体を重ねるようなこともない。(中略)

(明日へ続きます……)

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斎藤美奈子さんのコラム・その48&前川喜平さんのコラム・その10

2019-12-09 18:14:00 | ノンジャンル
 恒例となった、東京新聞の水曜日に掲載されている斎藤美奈子さんのコラムと、同じく日曜日に掲載されている前川喜平さんのコラム。

 まず12月4日に掲載された「桜の新語・流行語」と題された斎藤さんのコラム。その全文を転載させていただくと、
「【前夜祭】公職選挙法または政治資金規正法のどちらかに抵触する可能性のある危険な宴会
 【ニューオータニ】お一人様五千円の格安価格でパーティを請け負うこともできる都内の一流ホテル。主催者にかわって領収書を出す等の特異なサービスも話題。
 【首相枠】税金を用いた宴席などで首相(夫人を含む)が差配できる招待客の数。伸縮性に優れ一千のキャパシティーを三千や五千に拡張することも可能。別名「60」。
 【反社会的勢力のみな様】税金を用いた宴席などで「出席は把握していなかったが結果的には入った」人々が指す敬称。
 【招待状】マルチ商法のツールとしても利用できる便利グッズ。
 【招待者名簿】絶対に漏らしてはならない第一級の国家機密。
 【シュレッダー】書類の廃棄処分または証拠隠滅の際に用いられる細断機。内閣府では順番待ちの人気機種だが、野党からの資料請求があった直後は優先的に使用可。
 【復元不可能】「データの復元はできてもしない」「復元されたらマジヤバイ」の婉曲(えんきょく)表現。
 【シンクライアント】データの復元は不可能と強弁しようとして、逆に墓穴を掘った方式。
 【丁寧な説明】同じ紙を何度も読むこと。
 これで幕引きなんて冗談でしょう。世論が味方だ。今はワンチームで頑張れ野党、負けるなメディア。」

 そして12月1日に掲載された「官邸記者の変化」と題された前川さんのコラム。
「官邸記者の姿勢が前向きに変化してきた。
 11月15日の安倍晋三首相への声かけ。「桜を見る会について国会で説明する考えは?」との問いに、安倍氏は「国会から求められれば説明するのは当然」と答えて立ち去ったが、その背中に「集中審議に応じる考えは?」と記者の声が飛んだ。数秒の躊躇(ちゅうちょ)ののち、安倍氏は戻ってきて、また「国会が決めれば説明を果たすのは当然」と答え、「よろしいですか」と立ち去ろうとした。そこへさらに「公職選挙法や政治資金規正法の違反の疑いについては?」と声がかかった。安倍氏は再び戻って「事務所で対応していると聞いている」と答えた。
 同28日の菅義偉官房長官会見。記者「名簿管理のデータを復元する考えは?」。菅氏「復元することはできないと聞いている」。記者「復元できないのは技術的にかルール上か」。菅氏「技術的にかルール的にか承知していない」。さらに記者「技術的に復元できるか検討もしないのか」。菅氏「復元できないと聞いている」(これは答えになっていない)。東京新聞望月衣塑子記者の孤軍奮闘だった会見の場が明らかに変わってきた。
 官邸記者諸君、頑張ってくれ。首相や官房長官に鋭い質問をぶつけてくれ。国会に出てこない安倍首相を国民に代わって追及できるのは、君たちしかいなにのだから。」

 さらに12月8日に掲載された「PISA2018」と題された前川さんのコラム。
「OECDが15歳児を対象に3年ごとに行う国際学力調査PISA。2018年度の結果が出た。OECD加盟37カ国中、数学は一位、科学は二位だが、読解力が十一位だった。「ピザ・ショック」といわれた03年の十二位に次ぐ低順位だ。文部科学省は、その理由としてコンピューター仕様の導入を挙げるが…。
 日本の順位が過去最も高かったのは12年の調査だ。読解力一位、科学一位、数学二位。おかげで、当時初等教育局長だった僕は「学力低下批判」を浴びずに済んだ。「脱ゆとり教育」の成果とも言われたが、それは違う。12年調査の対象者は、小一から中三まで授業時数が最も少ない「ゆとり教育」(02-━11年)を受けた世代なのだ。むしろ18年調査の対象者こそ、授業時数を大幅に増やした「脱ゆとり教育」の世代だ。だから、読解力は「ゆとり教育」で上がり「脱ゆとり教育」で下がったとも言える。
 しかし、そもそも読解力テストは文化バイアスが大きく出る。18年の成績低下は、単に問題文が日本の生徒になじみのない内容だったからかもしれないのだ。三年後には成績急上昇ということもありうる。要は、三年スパンで上がった下がったと一喜一憂しないことだ。少なくとも「授業時数をもっと増やせ」などという暴論が暴走しないよう気をつけよう。」

 どれも一読に値する文章だと思いました。

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