低温注意報が出る。曇り空に時おり降る冷たい雨。上着が欲しくなる。外を見れば、緑は濃くやはり季節は初夏である。本棚から漢詩のアンソロジーを出して、立夏の項を拾い読みをする。明の于謙という詩人の、この季節の詩が目についた。題して「偶題」。
薫風何れの処よりか来たり
我が庭前の樹を吹く
啼鳥繁陰を愛し
飛び来りて飛び去らず
作者の鳥を見る目の確かさに驚かされる。木々の葉が茂るころ、鳥たちにとっては餌を探す絶好の季節でもある。普段は見ることのない鳥たちが、木々を目がけて飛んでくる。付近の草木の伸びたあたりでしきりに餌を探す。詩意を記す。
かぐわしい初夏の風がどこかからやって来て、
我が家の庭先の木々に吹いている。
さえずる鳥たちは茂った木陰が気に入って
飛んだ来たまま飛び去ろうとしない。