滴るような緑。湿った初夏の空気の匂い。絶間ないウグイスの囀り。木の間を通して、そそいでくる日光。開けた場所から垣間見える、麓の集落。そこで営なまれる人々の暮らし。山道を一歩進むごとに変わる風景。一緒に登る仲間たちの談笑の声。長く山に親しんで来て、体力を消耗して、平気で登っていた山に行けなくなったもの最後の砦。それが低山だ。家のまわりのウォーキングでは得られない、山歩きの楽しみが低山にはある。
秋田の湯沢市にある東鳥海山(777m)に登ってきた。標高からみて、ここは低山という名にピッタリの山だ。かつての林業でつかった林道歩きが長く感じられる。ジグザグなつづら折りを越えると、神社へ行く参道になっている。埋め込んだ石が苔むした階段、近郊の人々が拝礼のための道であったことが体感できる。ワラビ、フキ、コシアブラ、ウド。初夏の山菜を、夜の晩酌のために採取する人も多かった。緑したたるなかの山菜は、手に触れただけでその柔かさが伝わってくる。山菜採りだけを入山する人も多いのも頷ける。参加者9名。うち男性2名。
FBの趣味グループに「低山をのんびり愉しむ」というサイトがある。最近の低山ブームを反映してか、このサイトへの入会者が急増している。九州から関東まで、知らない低山の魅力が次々と発信される。登山の経験のない若者、家族、自分のような高齢者。その層は幅広い。だが、忘れてならないのは、低山が多くの人が入山しやすい一方、明確な登山道のない山も少なくなく、道迷いなどリスクがあることだ。山歩きの装備、JPS、山用の登山靴など注意して歩くことが必要だ。
低山では様々な動植物に出会うこともできる。それこそ、牧野博士の図鑑など、じっくりと時間をかけて、植物の生態を学び直すことも低山歩きの特徴である。歩きながら、知識を持った人から、花は、木の名。山菜の獲り方、調理方法など、年老いても学ぶことはいっぱいある。