常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

月山回顧

2023年05月12日 | 登山
昨日、残雪の月山に登った。国道112号線から月山への道は、例年なら雪の回廊ができる。今年は少ない雪と早い春の到来で新緑の美しさが際立っている。斜面に雪を残したまま葉が萌え出ている。こんな緑は何度も見ているが、加齢とともにその美しさが増していくようだ。リフトを降りると目前に聳えるのは姥ヶ岳だ。まだ孫が4歳ごろのころ、夏道を一緒に登ったことが思い出される。小さな子の足は、山道をトントンと小走りに登っていく。止まって振り返ると、「ばあば早く」と声をかけてくる。もう20年前の話だ。

姥が岳には雪が積もり、中間にロープトウがスキーヤーを待っていた。アイゼンを履き、その斜面を直登する。およそ40分、喘ぎながら頂上に着く。ここからの圧巻は、朝日連峰の眺望だ。連峰の主稜の手前は、主稜を取り囲む山々。雪が融けかかって、自然のつくり出す造形はこの時期にしか見られない。あと何回、この光景を目にすることができるだろうか。しっかりと記憶に取り込み、写真にも残しておく。
視線を月山の頂上に戻す。朝がた全容をあらわしていた山容に、雲がかかり少し隠れてしまった。牛首の稜線付近では、風が強く、気温も低い。立ち止まるると寒くなる。手元に30年ほど前の山頂で撮った写真の引き伸ばしがある。総勢8名青空に手を上げて万歳の姿だ。もう名前すら忘れたメンバーの姿もある。あの日の月山の記憶はいまだに忘れることはない。微風のなか、風の吹かれた雲が、雪の上に陰をうつして流れていった。あの日の記憶に近づければという願いが昨日の月山行になった。脚力が衰え、牛首までが限界であった。心配した二人のメンバーに付き添われての下山となった。参加者11名。8名のメンバーが頂上を踏んだ。

山岳写真家の石橋睦美に、「月山の四季」という一文がある。この季節の自然美をとらえた目が、季節の移り変わりを見事に表現している。

「木々の芽吹きの時は充分な水分を必要とする。その頃になると春の雨が静かに森に降り注ぐ。あたかも自然が生物に恵みを与えているかのようだ。そんななかで若葉は数を増し、山の色を黄緑色から緑色へと染め変えていく。冬から春への境がないように、春から初夏へもまた、流れるように移り変わっていく。」

雪谿の雪のさかひ山草は
 やうやく萌ゆるその芽愛しも 斎藤茂吉
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