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長谷川櫂の『日めくり四季のうた』の今日の俳句は
月天心家のなかまで真葛原 河原枇杷男
である。一番たかいところまで上がった満月。野原の一軒家には、伸びきった葛の蔓が家のなかまで入り込んで花を咲かせる。うち捨てられた廃屋が、荒れ果てて、住む人のない凄惨さを月が照らし出している。能舞台では、こんな廃屋で3年も帰らぬ夫を待ちわびる哀れな妻の話も演じられる。
月天心。本来、冬の月が空の真ん中にある状態を示している。俳句では秋の季語として扱われる。明月が空の中央で、煌々と輝き、廃屋と対比されたときその景色はいっそうの侘しさをかもしだす。真夏日が80日も続いて、地球の明日が読めない不安の日々。月天心の景色が、その侘しさをさらに深いものにする。