常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

枯枝に鳥のいる風景

2020年11月15日 | 読書
芸工大のキャンパスを散歩していると、葉を落とし始めた木の枝に烏が止まっていた。餌の時間が終わって、枝に止まってで一休みしているのであろうか。ふと、16世紀のオランダの画家ブリューゲルを思い出した。かの「バベルの塔」を描いた画家である。私の本棚は、いつでも取り出せる文庫本を中心にした質素なものだが、一冊だけ高価な本がある。中央公論社刊森洋子編著『ブリューゲル全作品』だ。一サラリーマンの身で、53000円もの高価な本を何故買う気になったのか、いま考えてもよくわからない。ただ、近代化が始まる前の西洋の中世に興味があった。ずっしりと重い本には、ブリューゲルの絵がカラー写真で収められている。

この画家の生年も生地も、判然とはしていない。絵は残されているが、その生涯についてひとつの伝記があるのみで詳しい資料はほとんどない。1530年頃のフランドルのブリューゲル村の生まれとされている。フランドルは、フランダースという英語読みだと知っている人も多いだろうか。スペイン、オランダ、フランスに跨る地域である。ブリューゲルの絵に「鳥罠のある冬景色」というフランドル地方の冬景色を描いた絵がある。

川には氷が張り、スケートやホッケー遊びを楽しむ人々が描かれ、遠景には河口の風景が見事に描かれている。家々の屋根には雪がともり、木々の枝にも雪がついて枯れ枝には鳥が止まっている。しかし、この絵を単なる風景画として見てはいけない、と編者森洋子は解説している。左手前には氷の穴がぽっかりと開き、木立の中には鳥を取る罠が仕掛けられている。おそらくまき餌をしたのであろう、罠の近く鳥が集まり、穴の近くで遊ぶ子どもたちがいる。

罠に落ちるのはフランドルの諺で騙されるを意味する。この絵が人気の高い絵であったのは、冬の風景を楽しませてくれると同時に、穴に落ちたり騙されたりするなという人生の教訓を知ることができるからだ。このブリューゲルの画集を見て、ヨーロッパ中世の豊穣の世界を読み取るができる。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 一念峰 | トップ | 小春日和 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿