一日、歩き回ったミモロですが、今夜、旅の最後の夜とあって、夕食後も京都の町に出かけます。
行き先は、祇園。京都の5つの花街のひとつです。近年、祇園の入口の「一力茶屋」から続く花見小路は、電柱を地中に埋めて、古き佳き趣が復活しました。道の両脇に連なる町家の軒先につるされた赤い提灯の灯りが、なんとも花街らしい華やかさと艶を漂わせています。
「赤い提灯に描かれているのは、みたらし団子なんだよ」
花見小路には、ほろ酔いかげんの人達が、楽しげに歩く姿があちこちに。
旅のポイント:祇園には、料理屋さんがいっぱい。女性だけでも、気軽に予約なしで入れる店もあり、一度は、夜に訪れたいところ。またおしゃれなワインバーやカウンターのバーもおすすめ。
ミモロは、「一力茶屋」から、ちょっと夜の祇園を歩いてみることに。「どこかに舞妓さんいないかなぁ」。通りを見渡しても、和服姿の人はいても、会いたい舞妓さんの姿は見つかりません。
旅のポイント:祇園で舞妓さんに会えるのは、やはり夕暮れから夜。ただ夜は、お仕事中なので、写真などをお願いしても無視される可能性大。舞妓さんは、携帯電話を持っていません。だから、メルアドの交換などは不可能です。もし舞妓さんとゆっくりお話したいなら、お茶屋さんなどから紹介してもらい、お座敷に呼ぶことから。京都の男性にとって、夜、花街を歩いていて、「○○さん、こんばんわ!」と、舞妓さんや芸子さんから挨拶されることがステイタスだとか。
さて、ミモロは、舞妓さん探しを諦めて、花見小路から、祇園ホテルの裏側の方向に細い道を進みます。
観光客が歩く花見小路の奥にも、実は、料理屋さんやお茶屋さんがいろいろ。
ミモロは、一軒の町家の格子戸を開けて中に。ここは、祇園のお茶屋さんの「も里多」です。外からは、まるで個人のおうちのような佇まいです。
玄関に立ち、「こんばんは」と声を掛けると、家の中から和服姿の女主人が、にこやかな笑顔と共に出てきました。お茶屋さんは、お客さんが、舞妓さんや芸子さんを伴って、いっしょに、お酒を飲みながらくつろぐ場所。この家の2階にも、お座敷があり、お客さんの要望で、料理屋さんから料理を頼んだり、舞妓さんの踊りなどが楽しめます。
旅のポイント:お茶屋さんの多くは、外にさりげない表示があるだけ。格子戸を開けて中に入っても、「一見さんお断り」のため、見知らぬお客は、「どちらさんどす?」と言われるのがオチ。行くなら、最初は、そこをよく知る人といっしょに。次からは、よほど嫌われていなければ、入れてくれます。
「いやぁ、ミモロちゃん、久し振りどすなぁ。さ、はよう、おあがりやす」。
「こんばんは、おかあさんも元気そう・・・・」
ミモロは、馴染み客なので、女主人を舞妓さんたちのように、おかあさんって呼んでます。
玄関を上がると、奥は、大きなテーブルとカウンターがあるバーになっています。
今夜は、おひとりさまのミモロ。カウンターに座って、バカラのグラスに注がれた絞りたてのオレンジジュースを使ったカンパリオレンジを飲みながら、おかあさんやカンターのほかのお客さんたちと今回の旅の話などで、盛り上がります。
食いしん坊のミモロをよく知るおかあさんは、ミモロの前には、次々と美味しい小鉢の料理をだしてくれました。「これ、美味しい!」
しばらくすると、「おとなり、よろしゅうおすか、あれ、かわいいクマちゃんどすなぁ」と声が。横を見ると、なんと会いたかった舞妓さんが・・・。
「あ、あの、ネコなんですけど・・・」ミモロは、しどろもどろに。
「かんにんどすぇ。かわいらしいネコちゃんどすなぁ。はじめまして、孝まりどす」。
昼間の稽古姿の舞妓さんもかわいかったけど、だらりの帯姿の舞妓さんは、やはりすごくキレイです。髪の花かんざし、紅をさした小さなお口、みんなかわいい!
孝まりさんや連れのお客さんの話に、ときどき加わりながら、楽しい夜を過ごします。
「ほな、そろそろご飯食べに行こか」と、お客さんに促されて、孝まりさんは、お鮨屋さんに出かけることに。「へぇ、ほなおかあさんいってきます」と言って席を立つ孝まりさんに、「あの写真いっしょに撮ってください!」思い切ってミモロはお願い。
「よろしゅうおすかぁー」連れのお客さんに尋ねます。「いいよ」と言われ、「ほな、いっしょにね」と写真をいっしょにパチリ。
憧れの舞妓さんといっしょに、記念撮影に、ミモロはとても嬉しそう。
旅のポイント:お仕事中の舞妓さんや芸子さんは、連れのお客さんが第一。ほかのお客さんと、何かするときは、必ず連れのお客さんに、いいかどうかお伺いを立てます。いつか舞妓さんを連れて歩きたい・・そんな憧れをもつ男性が多いのも頷ける心遣いです。ぜひ、いつかそんな経験をしてください。
「ミモロちゃん、またご贔屓に・・・おおきにぃ」別れ際に、ミモロは、「孝まり」と書かれた名刺代わりの小さな千社札をもらいました。
「じゃ、またね・・・」もらった千社札を大切に抱えながら、名残惜しげにお別れします。
のんびりお茶屋さんのバーで過ごしたミモロが、ホテルに戻ったのは、もう夜中。
「ウー飲みすぎた・・・クー苦しい・・・」ミモロは、ベッドに直行です。
明日の二日酔いが心配です。