東は青い空で、西は黒い雲が広がり、時々稲妻が走る。風は東から西へと吹いていた。しかし、午後4時になって辺りは真っ暗になった。すると激しく雨が降り出した。いつの間にか、風は西から東へと吹いている。雷の音はしなくなったけれど、雨はいっそう激しくなった。いや違う、街中が暗闇に包まれ、稲妻が走り、雷鳴が響く。
大丈夫だろうかとルーフバルコニーにあるミカンの木の植木鉢を心配する。直径が50センチはある大きな植木鉢なのでひっくり返ることはないが、ミカンの木の中にいるアゲハチョウのサナギが落ちないか、心配なのだ。10日くらい前にヘビ模様の幼虫を見つけた。2日前に見ると、古い葉の中でじっとしている。もっと若い葉を食べないと大きくなれないぞと思い、古い葉の枝ごと切って若い葉が多い枝の間に置いた。
今朝見るとサナギになっていた。風が吹いて落ちてしまうと羽化できない。羽化する時に羽が広げられないと奇形になってしまう。そんなことを考えながら枝にくくりつけたけれど、この強い風雨に耐えられるように縛っただろうかと心配なのだ。それにしても本当に異常気象が続く。埼玉で起きた竜巻の映像を各局が流していたけれど、凄まじい。東北大震災の津波の映像も凄かったけれど、自然の猛威を見せ付けられると、人間はたいしたことはないようにさえ思える。
宇宙にロケットを飛ばす。何億光年か先の宇宙が分かる。細胞から新しい細胞を作る。卵子を冷凍保存していつでも体外受精できる。人間は数え切れないほどの技術を生み出した。これは産業革命以後の社会、資本主義社会の賜物である。研究には莫大なお金が要る。お金を集中できる資本主義社会にならなければ科学はこんなに発展することはなかった。とてつもない社会を人間は作り出した。
大雨洪水警報が発令された。13年前の東海豪雨を思い出す。あの時も夕方には街の主な道路は冠水していて、車が走るたびに大きな水しぶきが上がっていた。このまま明日まで降り続けるなら、明日の朝は13年前と同じように街は湖になっているだろう。大丈夫だろうか。アゲハチョウのサナギのことではなく、近くに住む長女一家のことや街の人々のことを思う。