友だちがフェイスブックに、「映像も音楽も桁違いの大迫力。ストーリーももちろん魅力だが、コンサート会場に近い大迫力の音響で音楽が楽しめた。やはり映画館は違うと痛感。魅力的な映画があれば、老人夫婦にはいいかもと思ったほど」と書いていた。
彼から映画の話は聞いたことが無かったので、そんなに感動した映画を観てみたいと思っていたら、新聞でも話題になっていたので、カミさんに「行ってみないか」と誘ってみた。友だちは恩田陸さんの小説『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎文庫)を読んで、「あまりにも素晴らしい内容に惹かれ、読み終わってすぐに、再び最初からページをめくり始めた」と書いている。
彼は小説を読み、映画製作を知って、どんな作品になるかと期待して映画館に出かけたが、私はそんな彼からのメッセージに動かされた。映画の感想を一言で表すなら、「凄い」である。映画だから表現できたと思ったが、これは小説を映画化したものなので、小説を読んで感動した彼は「凄い」と思った。
天才ピアニストが腕を競うピアノコンクールが舞台で、中心となるのは母の死で課題曲が弾けなくなってしまった天才少女が、20歳になってもう一度挑戦するところから始まる。子どもの頃に彼女の母から習っていたマサル、ピアノは持っていないが天賦の才能がある養蜂業の息子、楽器店で働くピアノが好きな生活者、この4人の舞台での演奏が凄い。
第1次予選はピアノの独演で、第2次予選はオーケストラとの共演で、審査が行われる。映画のほとんどがピアノ演奏という変わった映画なのに、全く飽きさせることもなくグイグイと映画に引き込んでいく。音楽映画なのに、どうして涙が流れるのかと思うくらい何度も泣けた。音楽を聴いて涙を流すと、何故か心が満たされる不思議な体験だった。