「シルバーに頼んだが、なかなかやってくれん。1本じゃー仕事にならんみたいで困っとる」と言うので、「じゃー私がやりましょう」と約束した。家の北側の道路に面したところにクロガネモチのような木が植わっている。剪定するほどではないと思うが、「道路にはみ出している枝が気になるんで」と周囲の人の目を気にしている。
今日は朝から車が使えたので、作業服に着替え、剪定ハサミを持って出かけた。1時間もかからないうちに刈り込むことが出来た。作業をしていると近所の人が通って行く。その都度、「私は梯子に登れんで、来てもらってやっとる。あんたは歩けるからいい」「ワシだって杖が無ければ歩くのは出来ん。家にばかりいてはいかんので歩いている」。道行く人と盛んに会話をしている。
彼は元気で行動派でおせっかいだった。名古屋から移って来て縫製業を営み、一時はたくさんの人も使っていた。「商売はカミさんのおかげでやって来れた」と言う。そのカミさんがよく分からない病気になり、デイサービスを受けている。彼も週に何日かサービスを受けているが、カミさんよりも軽いので、カミさんの世話から飼い犬の世話、買い物や料理もしている。
「結局、みんな私がやらなきゃーいかん。話し相手もいなくてストレスが溜まって、つい、あんたを呼び出して、すまん。あんたに話を聞いてもらうとスッキリして、元気になれる」と言う。動けない身体で切り落とした枝を拾い集めてくれた。何だか危なっかしいが、自分もやらなくてはいう気持ちが伝わってくる。
いつもの店でウナギを食べ、彼の溜まった話を聞くが、以前聞いたことと変わってはいない。子どもたちは独立してしまうと、こんなに具合の悪い両親でも元気なうちは手を出さない。その方が、親は何とかやるからだが、そうできなくなった時はどうするのだろう。