小4の孫娘の学校は今日が運動会だという。雨さえ降らなければ運動会としてはベストだろうが、さすがに平日だけあって父母の参加は少ない。それでも母親の姿はよく見かけたし、父親だけが応援に来ている家庭もあった。私は、先日の地域の運動会で昔の知り合いに出会ったから、ひょっとしたら今日も会えるかも知れないと思いながら歩いていると、偶然その人に声をかけられた。
以前は同じマンションに住んでいて、こちらに引っ越してからも旅行などはわざわざ出て来てくれた。明るく生真面目でよく動く人だから、「こちらでもすぐに友だちが出来るよ」と言った通り、ジョギングや卓球の仲間が出来て、「一緒に活動している」と言っていた。「健康づくりには人一倍気を遣っている」と言うので、「あまり気を遣い過ぎると、かえってぽっくり逝くよ」と冗談に言うと、「そうなれば、一番いい」と笑う。
「ただ、気がかりなのは次男と4男が引き籠りで、部屋から一歩も出ず、家に居ても話もしない」と零す。そんな苦労を抱え込んでいるとは全く知らなかった。「働いていないの?」と聞くと、「家庭教師には行っているが、私と口を利かない」と答える。「こちらから話そうとすると、『お父さんとは時代も価値観も違う』とピッシャとやられてしまう」と言う。確かに私たちの時代は努力すれば報われた。しかし、今の若者は努力してもダメなものはダメだと分かっている。
ほんの僅かな時間だったが、彼の苦悩を垣間見て、だが、何を言っていいのか言葉が見つからなかった。午後になると少し小粒だが雨が降り出してきた。小4の孫娘の出番だけ見て、私たちは帰って来た。「中止になったの?」とカミさんに聞くが、「誰からも何の連絡もない」と言う。子どもたちのことを考えれば、残りの2種目くらい中止でもいいのにと私は呟く。