風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

宮崎駿監督の引退

2013-09-12 23:34:38 | スポーツ・芸能好き
 遅ればせながら・・・もしかしたらオリンピック開催地決定に影響を与えたんじゃないか、と前々回のブログで書いた、宮崎駿監督の引退について印象を記します。宮崎駿監督のアニメを、中でも「トトロ」をこよなく愛する一人として(「トトロ」はいつ見ても泣けてしまいます)、関心があります。
 会見は、オリンピック開催地決定の前日の6日に行われました。会場には海外13の国・地域を含む国内外のメディア関係者約600人が詰めかけたそうです。即座に主要国の主要紙で報道されたことでしょう(そしてIOC委員のもとへも?)。
 なぜ引退を決意するに至ったか、ご本人は次のように心境を述べておられます。

(前略)『風立ちぬ』は『ポニョ』から5年かかった。その間、シナリオを書いたり漫画を書いたり、いろんなことをやっていましたが、やはり5年かかる。今、次の作品を考え始めると、5年じゃすまないでしょう。この年齢ですから。次は6、7年かかるかもしれない。僕はあと3カ月で73歳。(作品完成までに)80を過ぎてしまう。この前、83歳の半藤一利さんとお話をして、本当にいい先輩がいると思った。僕も83歳になってこうなれたらいいなと。だから(創作を)続けられたらいいと思いますが、今までの仕事の延長線上にはない。僕の長編アニメーションの時代ははっきり終わった。今後、やろうと思っても、それは年寄りの迷い言だと(後略)

 ぶっちゃけた話、寄る年波には勝てないということですが、宮崎駿監督の制作スタイルが、いわば寿命を早めたと言えそうです。通常、アニメ作画の細部は監督がスタッフに指示して制作するものですが、宮崎駿監督の場合には、「膨大なコンテに加え、1秒24枚とされる原画の核となる部分を手書きし、出来上がった作品の人物の表情なども自身で直すこだわりを貫いてきた」(産経新聞9月2日付)のだそうです。だからこそ、芸術作品並みの写実性と独特のしなやかで柔らかさを帯びた動きを見せる優しさに溢れた宮崎駿監督ワールドが現出するわけですが、こうした手法で長編を制作するケースは今では宮崎駿監督以外になく、映像研究家の叶精二氏に「50代でもありえない奇跡に近い仕事ぶり。いつ引退してもおかしくないと思っていた」(同)と言われるほどです。8月26日放送のNHKドキュメンタリー「プロフェッショナル 仕事の流儀」では、「これまで絵コンテにこだわり続けてきたが、『線に力強さが失われてきた…』と高齢による筆力の低下を痛感した」(産経新聞7月21日付)と明かした」そうです。
 こうした、ある意味で「古き良き」制作スタイルが、デジタル化した現代のアニメ制作現場(の若い人々)に受け入れにくくなって来ているであろうことは、想像に難くありません。エプロンをかけた宮崎駿監督の写真を見たところ、なるほど、ご本人は「町工場のおやじ」と自称されていますが、まさに「アニメ工房の職人さん」風情で、実に微笑ましい。これから、長編というプレッシャーのかかる一種の軛(くびき)から解き放たれて、気ままに「山椒は小粒でもぴりりと辛い」小編をものして行かれるのでしょうか。今後のご活躍を祈念致します。
 上の写真は、以前シドニーに住んでいた頃、日本人ワーホリの間で、「トトロ」のモデルだと噂されていた、ウォンバット。なかなかいい雰囲気だと思いませんか。もっと言うと、ウォンバットとコアラを足して2で割ったような感じでしょうか。また、オーストラリアには、宮崎駿監督の制作のヒントやモデルになった街や名所が多いと言われます。ウルルのそばのカタジュタには、「風の谷のナウシカ」のモデルとされる風の谷(文字通り“Valley of Wind”)がありますし、「魔女の宅急便」の関連については、下記ブログをご参照下さい。

(参考)「魔女の宅急便」2008年12月23日 
     http://blog.goo.ne.jp/sydneywind/e/867ff6523b594d4d2de3c6f3de4ad132
コメント (1)
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