風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

祝・2020年東京五輪決定

2013-09-08 13:15:59 | 日々の生活
 東京へのオリンピック招致は、最近の報道を見ていて、PR下手な日本には難しいかもしれないと、楽観から悲観へと移ろい、昨晩は起きていられませんでした。そのため、今朝、目が覚めて、東京に決まったことを知って、正直なところ驚きました。祝福するかのように、今朝の東京には虹が出ていたそうです。
 東京、マドリード、イスタンブールともに問題を抱え、三つ巴の、言わば懸念を払しょくする、悪く言えば陰に陽に足を引っ張り合う争いでした。この第125次IOC総会の開催地がアルゼンチンで、旧宗主国を支援する雰囲気に包まれ、フェリペ皇太子の精力的なロビー活動もあって、直前の下馬評では一歩リードしていると報じられたスペインは、失業率が26%に上る中、五輪開催どころではないとする意見も見られましたが、それでも経済回復の後押しになるとの期待が高く、結局、8割近い国民が五輪招致を支持したと言われました。しかし、経済・財政問題だけでなく、4日付スペインの全国紙エルムンドが、オリンピック招致に関連して、マドリードがIOC委員の過半数に当たる50人の支持を得たと実名入りで一面に堂々と報道してしまい、IOC委員の心象を悪くしたのか、真っ先に落とされました。逆に真っ先に落とされると予想されていたトルコは健闘しましたが、反政府デモや隣国シリアの内戦が課題となった上に、今年に入ってドーピング問題が続出していることが、IOC委員の心象をさらに悪くしていたものと思われます。片や日本も、福島原発の汚染水漏れ問題が、日本はもとよりヨーロッパで連日報道され、形勢を悪くして行ったのは、所謂ネガティヴ・キャンペーンだったのでしょう。ヨーロッパだけでなく、お隣の韓国メディアも、「五輪辞退を」(中央日報)、「(対策は)五輪招致のための姑息な手」(毎日経済新聞)などと扇情的に報じた上、追い討ちをかけるように、韓国与党セヌリ党は、日本産水産物の全面輸入禁止を求める声明まで直前に発表してくれました。他方、IOC会長選が影を落としていると解説する向きもあります。ジャック・ロゲIOC会長は明後日に12年の任期を終えて退任する予定で、次期会長選で本命視されるドイツのトーマス・バッハ氏が当選したら、2024年五輪を欧州に持って来たがるだろう、その場合、2020年は欧州から遠い都市を選びたいに違いないから、手を結べるのではないか、というわけです。現に2024年誘致を狙うフランスとは手を結んだと言う声もありました。健全なスポーツの祭典には似つかわしくないパワーゲームが蠢く世界で、いろいろ詮索するのは面白くないわけがありません。
 それはともかく、これで夏季五輪を2度以上開催するのは、パリ、ロンドン、ロサンゼルス、アテネに続いて5都市目になりました。アテネはともかくとして、パリ、ロンドン、ロスに並び、世界に誇るべき都市として、オリンピックを契機に、他にはない都市の魅力をアピールして行きたいものだと思います。
 さて、今回の決定報道で、先ず思ったのは、安倍さんは強運だなあ・・・ということでした。約1年前の自民党総裁選では決選投票で逆転しましたし、その後の衆院選、参院選と連勝し、アベノミクスは、いろいろ批判を受けながらも、順調に経済が離陸しつつあるように思われます。ロイター通信は、「安倍晋三首相の演説が2020年東京五輪大会決定への決め手となった」と報じたそうです(産経新聞)。「国家指導者のなめらかな演説は、IOCが懸念する福島原発問題の不安を解消するために行われた。日本は60対36でイスタンブールを大差で勝利したことから、演説はその目的にぴったりと合っていたようだ」と指摘しました。確かに、安倍さんは、家柄の良さが人柄の良さに表れ、実ににこやかに堂々とプレゼンテーションされていて、さすがでした。
 その最終プレゼンテーションは、安倍さんをはじめ、チーム日本は実に良い連携のもとで行われ、全てを見たわけではありませんがwell-organizeされていたと思います。堂々とされていたという意味では、安倍さん以上に高円宮妃久子さまが素晴らしい。元通訳だったという英語・仏語力だけでなく場馴れしていて品があり、まるでお手本のようなプレゼンで、しかも、招致には直接触れず、先ずは東日本大震災時の各国の支援にお礼を述べられ、ご自身を含む日本の皇族のスポーツ支援を訴えたのは、心憎い演出でした。パラリンピックの選手の生い立ちを語る熱意も良かったですし、安倍さんの演説でも、自ら大学でアーチェリーを始めたのは、その前年のミュンヘン・オリンピックでアーチェリーが競技として復活したのがきっかけであり、「スポーツこそは世界をつなぐ。そして万人に等しい機会を与えるものがスポーツであると私たちは学びました。オリンピックの遺産とは建築物ばかりをいうのではない。国家を挙げて推進した、あれこれのプロジェクトのことだけいうのでもなくて、それは、グローバルなビジョンを持つことだ、そして、人間への投資をすることだ」と、オリンピック精神を訴えたのも、また、東京五輪の翌年、日本はボランティアの組織をつくり、「広く遠くへとスポーツのメッセージを送り届ける仕事に乗り出した」というエピソードを紹介したのも良かったと思います。「学校をつくる手助けをするでしょう。スポーツの道具を提供するでしょう。体育のカリキュラムを生み出すお手伝いをすることでしょう。やがて、オリンピックの聖火が2020年に東京へやってくる頃までには、彼らはスポーツの悦びを100を超す国々で1000万になんなんとする人々へ直接届けているはずなのです」と。ネットでは、反原発を掲げるツイッター・サイトを中心に、安倍さんが、福島原発の汚染水問題については完全にunder controlなどと大嘘をついたと非難轟々で、確かにプレゼン・テクニックとして当然とは言え違和感は禁じ得ませんでしたが、それよりもスポーツの価値訴求と日本のポジティブな取り組みが評価されたことは間違いありません。こうした演出の裏には、オリンピック招致の広報戦略コンサルタントで、2012年ロンドン招致に貢献したニック・バーレー氏の存在があるようで、このあたりを解き明かしてくれると、なかなか興味深い(企業秘密でしょうが)。そして、東京都知事の猪瀬さんにとって、この日は奥様の49日だったと聞きました。プライベートでの悲劇を乗り越えて頑張って来られて、奥様の良い供養になったことと思います。
 などと、いろいろ書いて来ましたが、東京の、ひいては日本の良いイメージを訴えるのに最も貢献したのは、これまでの招致レースや最終プレゼンとは、案外、別のところにもあったのではないかと、秘かに思っています(ただの憶測ですが)。よりによって・・・かどうか、前日に行われた宮崎駿さんの引退記者会見は、子供たちに夢を与えるアニメの世界と日本のイメージが重ね合わされて、強力な掩護射撃になったのではないかと。その当否はともかくとして、2020年東京オリンピックのイメージ・キャラクターは、日本が世界に誇る宮崎駿さんに是非とも描いて欲しいものだと思ったりします。
コメント
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