風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

青梅への道ふたたび(6)

2016-03-09 00:31:13 | スポーツ・芸能好き
 瀬古利彦さんによると、生活の中でいかにマラソンに不用なことを省いていけるかが最後の最後で勝負を分けるのだそうで、1970年代後半から80年代にかけて、修行僧のように黙々と走り抜いて絶対的な強さを誇った瀬古さんの面目であろう。しかし私は普段の生活を1ミリたりとも崩すことなく、ただ走る。高校時代、陸上部で中距離を専門にしていた頃、あの若さでも筋トレやマッサージをこまめに欠かさなかったが、この歳になって体力が衰えてなお、身体を全くケアしない。そのため、疲れが抜けないし、ただ走るだけの身体が出来上がり、上半身はすっかり筋肉が落ち、体幹もさほど鍛えられていないように思う。食生活は、マラソンを再開する前の習慣のままで変わらず、体重を10キロ落としても筋肉が増えたせいか、最近はむしろ常に飢餓感を覚えるようになった。そして練習は、ここ二年ほどはレース1ヶ月前になると週一を週二(週末に17キロ、週日に帰宅後10キロ)に増やしているが、ただ漫然と走るだけだ。
 こうした、自然体の、と言えば聞こえはよいが、何とも無防備なトレーニングでは、どうも記録的に限界にぶち当たっているように感じる。しかも備えがないものだからレースを走り終えた後の身体へのダメージは大きい。一昨日、温泉につかったとき、乳首はシャツで擦り切れ(時にはゼッケンが血まみれになる)、股間は股ずれで、いずれもヒリヒリした。左足の人差し指の爪は、青梅マラソンの時の靴ずれで、爪の中が血マメのように赤黒く染まり、死んでいる(数週間後には爪がポロリと抜け落ちる)。走るときの足や膝には体重の三倍の重圧がかかると言うから、歩幅1メートルとして42195歩の負担は決して小さくない。
 もう少し科学的に対策を考えた方が良さそうだ。何しろ、年々齢を重ね、同じ練習を繰り返しても体力とともに記録は落ちる一方なのだ。量を増やすのが難しければ(そりゃ他にもいろいろやりたいことがある欲の固まりなので、これ以上マラソンに時間を割くのは難しい)、質を上げるほかない。ということで、いろいろ課題がある。
 先ずは足に合う靴を選ぶことが必須だ。私の場合、ワン・サイズ大きかったようで、42195歩の末の靴擦れの影響ははかり知れない。また、フルマラソンを1回走っただけでも、靴のミッドソール部分のクッショニングが落ちるし、アウトソールの左右も多少なりとも擦り減って、本来靴が持っている機能が劣化するので、反発力、クッション性、グリップ力などの観点から、レースでは(意外なことに履き慣れた靴ではなく)真新しい靴を履くことを勧められる。
 カーボローディングに代表されるように、レース前は予め炭水化物を多く摂っておくことを勧められる。アメリカではレース前日の夜に主催者側がパスタ・パーティを開催することがよくあるのは、炭水化物摂取が目的だろう。また、本番のレース前(及び10キロ毎)だけでなく、走り終わった後や、普段の練習の後、更に就寝前にも、ジェル状の栄養補給(タンパク質、とりわけアミノ酸摂取)を行うのが、筋肉の疲労回復やコンディショニングに有効らしい。レースでは、低血糖や脱水症状により瞳孔散大することがあるので、こまめに水分を摂るだけでなく、万が一のためにブドウ糖のタブレットも欠かせない。
 練習では、ビルドアップ走により、漫然と走るのではなく、また疲れたら手を緩めるのではなく、後になるほどスピードを上げるなど、身体に負荷をかけるトレーニングが重要らしい。とりわけ10キロを毎日走るより、週一回、ゆっくりであっても長距離走ることが重要らしい。今回の静岡マラソンでは初めて腰痛を抱えて走ることになったが、普段から体幹を鍛えておけば、こうはならなかったかも知れない。
 レースの後や練習の後、知人はプロのマッサージ師に時々通って疲労回復に努めている。特に今回のように青梅マラソンから二週間しか間が空いていないような状況では、ダメージ緩和にもっと気を遣うべきだったのだろう。レースの二週間前にやったものは疲労として残るだけで、何かトレーニングをやり始めたとしてもレース本番には結びつかないため、レース二週間前からは、徐々に練習量を減らして疲労回復に努めることが大事らしい。
 レースを走っている最中や走り終わった後、市民マラソン・レベルでは心肺機能に負担はなく、胸から上は至って元気で、専ら足腰の筋肉や足・膝の関節にダメージがある。煎じ詰めれば、足腰を鍛え、地面との接点である靴をよく選び、走っているときのガス欠を避けることが出来れば、何の問題もないわけだが、その道のりは口で言うほど平坦でも簡単でもない。生身の人間の限界に至る力が試される競技だけに、ダメージは大きいが、その分、奥が深いし、それをどうマネージするかが問われ、ひとそれぞれに工夫がある。そのあたりにマラソンの魅力があるのだろう。
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