風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

リオ五輪番外・ロシア編

2016-09-12 21:45:26 | スポーツ・芸能好き
 ドーピング問題で揺れたロシアの金メダル獲得数は19個(4位)に終わり、前回ロンドン五輪の24個には及ばなかった。
 ロシア研究者の袴田茂樹氏は、クリミア問題で国際的に孤立して以来、ロシアでは皇帝アレクサンドル3世(在位1881年~94年、改革派の父アレクサンドル2世とは反対に、ロシアの独自性を強調した反動政策や軍事大国化の政策で有名)の次の言葉がよく想起されるのだと言う。「我々は常に次のことを忘れてはならない。つまり、我々は敵国や我々を憎んでいる国に包囲されているということ、我々ロシア人には友人はいないということだ。我々には友人も同盟国も必要ない。最良の同盟国でも我々を裏切るからだ。ロシアには2つの同盟者しかいない。それはロシアの陸軍と海軍である」
 実際に、ドーピング問題でも同様の反応が見られたというわけである。当時の報道を紐解くと、世界反ドーピング機関(WADA)の調査チームが、検体をすり替えるなどロシアが国家ぐるみでドーピングを隠蔽していたとする報告書を発表し、WADAは、リオデジャネイロ五輪・パラリンピックでロシア選手団の全面的出場禁止を検討すべきだと国際オリンピック委員会(IOC)と国際パラリンピック委員会(IPC)に勧告したことに対し、プーチン大統領は、東西冷戦期と同様に、スポーツが「地政学的圧力の道具」とされており、「五輪運動は再び分裂の瀬戸際に立つかもしれない」と主張、米国などの反ドーピング機関がロシアのリオ五輪出場停止を訴えていることについて、「一国の組織が世界のスポーツ界に意思を押しつけている」とし、今回の調査報告の背後には米国の存在があるとの考えを滲ませたのだった。
 さらに、袴田氏は、昔から「法とは馬車の長柄のようなもの、どちらにでも御者が向けた方に向く」という諺があることに触れ、ロシアのある世論調査では、国民の82%がその通りだと認めていると言う。つまり、オリンピック憲章、国際法、国連憲章、国家間の合意やその時々の指導者や政府の声明なども、ロシア側は「単なる方便」と見ており、利用できるときは徹底的に利用するが、その解釈などはその時の都合で勝手に変更され、また不都合となれば反故にされる、つまり、法や合意、約束を尊重するという、秩序のための基本的精神が欠如しているのだと解説される。
 それに引き換え、日本はどうだろう。かつて空白の一日を衝いて、江川卓氏が巨人と入団契約を結んだとき、日本中の非難を浴びた。本来、法に不備があったことを問題視するべきところ(と、大学でローマ法を専攻する教授は、日本法の諸相と題して講義してくれた)、日本人は法の不備ではなく、法の精神を尊び、不備のある法の抜け穴を利用することを許さなかったのだった。
 お人好しな私たちの隣人たち(中・韓・露)はかくも特異なのだと、あらためて心してかからなければならないのだろう。
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