風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

バリウム検査

2016-09-27 23:07:46 | 日々の生活
 人間だれしも生きている限りは健康でありたいと思う。寝たきりなんて真っ平御免で、生きている甲斐がない。何より子供たちをはじめ他人様の手を煩わせることになる。というわけで予防が肝心とばかり、健康診断は真面目に受けることにしている。ささやかながら、健康保険の厳しい財政事情を救う一助にもなる。なお、春先にマラソン・シーズンが終わってから秋の気配が漂うまで完全休養する(つまり夏場に走るような無茶をしない)ズボラな私は、健診は、一年の内で最も不健康と思われる、再びマラソン・シーズンが始まる前の秋口に受けることにしている。
 私の会社では、ご多分に漏れず、法定の定期健診のほか、年齢によって生活習慣病(予防)健診が義務付けられる。かつては成人病(予防)健診と呼ばれ、加齢と言うより生活習慣が深く関与していることから、予防に意識を向かわせるために生活習慣病健診と呼び換えられたものだ。目玉は、超音波検査とバリウム検査で、この内、私はバリウム検査がどうにも苦手だ(まあ世の中広しと言えども得意な人はいないだろうけど)。胃がんや食道がんの早期発見のためとは言え、どうしてこんな非人間的な検査が21世紀の現代に生き残っているのかと、訝しく思う。というわけで、いまいましいので、ちょっと調べてみた。
 正式には「(上部消化管)造影検査」と呼ばれ、造影剤としてバリウムを飲まされる。バリウムと言えば、学生の頃に習った記憶が曖昧ながら、金属の一種だ。そんなものを体内に取り込んでどうするのかと思うが、X線を透過しにくいという性質を利用し、通常のレントゲン写真(つまり静止画)ではなく、連続して照射しながら、バリウムが口腔から食道、胃、十二指腸へと流れていく様子を動画で見て、ポリープや潰瘍などで狭くなっているところがないかどうか、また、胃の粘膜についても、胃潰瘍によるくぼみや胃炎で荒れた状態がないかどうか、調べるのだそうだ。
 そのために、先ずは胃を空っぽにする必要があり、検査の前日、夜9時以降の絶飲絶食を言い渡される。次いで胃を膨らませて胃の中のひだひだを伸ばして病変を発見し易くする必要があり、検査直前に発泡剤を飲まされた挙句、ゲップをしてはいけないと殺生なことを言い渡される。そしてあの、ドロドロとして比重が高く、とても飲み物とは思えないバリウムを、たっぷり大き目の紙コップ一杯分、少しずつ流し込む。そんな苦労をしながら、撮影後は、バリウムを速やかに体外に排出する必要があり、大量の水とともに下剤を飲まされる。身体に悪いはずの異物を入れて、速やかに流し出す・・・検査のためとは言え、なんと理不尽なことだろう。
 尾籠な話になるが・・・このバリウムを長らく体内に残しておくと固まってしまい、腸閉塞を引き起こす危険すらあるので要注意だ。下剤は、ご存知の通り、大腸壁を刺激して腸の動きを促進し、排便を促す。水分を多く摂ると、より効果的だ。下剤の効果は(個人差があるものの)凡そ4~5時間位で出るので、その間はなるべく(キンチョーするような)会議の予定を入れないとか、外を無闇にうろうろしないなどの注意が必要になる。もし夕方までに排出しない場合、夕食後に2度目の下剤を飲むことを勧められる。しかし、どれだけ頑張っても、全てを出し切るのに、早くて検査の翌日まで、つまり2日かかる。そのため、食事は通常どおり摂っても構わないのだが、野菜などの繊維質が多い物を勧められるし、アルコールは、腸内の水分を奪ってしまってバリウムが固まり易くなるため、ご法度だ。出しきった目安は、色が白からいつもの茶色に変わるので、簡単に分かるが、検査日の内に出来るだけ排出しておかないと、翌朝にはコンクリートの塊もどきに変わるので、後悔することになる。
 さらに調べてみると、バリウム検査は30年前の理論だと突き放す専門家(医者)がいる。ネット上の情報だから、本当の医者かどうか分からないし、そういう意味では話半分に聞いておいた方がいいのだろうが、「御意」である。しかも、粘膜の凹凸の変化が出るのは、ある程度がんが進行している状態なので、バリウム検査では早期がんは見つからないとまで断言する(そのため、内視鏡で表面の色を見て発見することが最新のやり方なのだ、と)。へええ、である。更に、バリウムが体内で固まり、臓器に穴を開ける重大な事故(穿孔)が多く、ひどい時には死に至ること、そして通常の胸部レントゲン撮影の150~300倍もの放射線を浴び続けるため、発がんリスクが高まることも指摘されている。では、どうして30年来、事態はあらたまらないのか。胃カメラは高給取りの医師しか操作が許されない検査方法だが、バリウム検査はレントゲン技師が行うことができ、検査機関にとって安上がなのだという。また、レントゲン医師の雇用を奪わないためともいう。さらに利権の存在を指摘する声もある。国立がんセンターや集団検診を行なう地方自治体からの天下り組織となっている日本対がん協会と全国の傘下組織が検査を推奨・実施し、メーカーや医者・病院も潤うのだと。話半分にしておくにしても、なんとも憂鬱な話だ。
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