アニメ「ルパン三世」の銭形警部役で知られる声優の納谷悟朗さん(享年83)の「お別れの会」が、昨21日、恵比寿で行われたそうです。
今年3月に慢性呼吸不全で亡くなられて、かつて「ルパン三世」の放映を毎週楽しみにしていた私たちも含めて、皆、年を重ねた現実を、あらためて突きつけられたものでした。“初代”ルパンの山田康雄さん(享年62)が亡くなられたのは、かれこれ18年前の1995年3月のこと。後を継いだ栗田貫一さんは55歳と、当然、まだ若いですが、石川五ェ門役の井上真樹夫さんは74歳、二代目・峰不二子役の増山江威子さんは77歳、次元大介役の小林清志さんに至っては80歳です(以下、いちいちまどろっこしいので、勝手ながら呼び捨てにさせて頂きます)。
それはともかく、Wikipediaの納谷悟朗の項には、初代「ルパン三世」役だった山田康雄が急逝した際、葬儀で弔辞を読んだのは納谷悟朗で、山田康雄の遺影に向かって、銭形警部がルパン三世に怒鳴るような口調で「おい、ルパン。これから俺は誰を追い続ければいいんだ」「お前が死んだら俺は誰を追いかけりゃいいんだ」と涙ながらに呼びかけたエピソードが紹介されています。そして昨日のお別れの会では、栗田貫一がルパンの声で「とっつぁん、さみしいね。ずっと追いかけてもらいたかったぜ」と納谷悟朗を偲んだそうです。泣かせるエピソードです。
「ルパン三世」の存在を知ったのは、小学5~6年の頃、担任の先生が授業中の雑談で「面白い」と夢中で話したのが最初で、大の大人が・・・と不思議に心にひっかかりました。私自身は、その後しばらくして、TV番組より先にコミックで知って、衝撃を受けました。日本人が描くマンガとは思えないような軽妙洒脱なタッチに加えて、「粋でイナセな」という帯コピー通りのルパンのキャラクター造成と、漫画にも係らず子供だましではない洒落た大人のストーリー展開に、更に、TVアニメでは、世界を股にかけるという舞台設定に、世界への夢を掻き立てられ、一気に夢中になりました。
再びWikipediaからエピソードを拾います。
納谷悟朗は、様々なジャンルの作品に声を当て、出演作は100本以上にのぼるそうですが、その内の一つにジョン・ウェインがあり、山田康雄、小林清志、大塚周夫、野沢那智らと共に、テレビ洋画劇場におけるマカロニ・ウェスタンの放映を支えたそうです。西部劇での繋がりがあり、いずれも、まさに西部劇らしい、熱さを秘めつつ熱さを抑えたクールな雰囲気を感じさせるわけですね。
ルパン三世のキャラクター・デザインは「リオの男」のジャン=ポール・ベルモンドをモデルにしており、その吹き替えを山田康雄が担当していたのは、ただの偶然だったのでしょうか。別の項によると山田康雄と「ルパン三世」の出会いは劇的です。ある舞台での役作りに悪戦苦闘していた山田康雄に、知り合いのスタッフが「参考になるから」と手渡したのが「漫画アクション」から切り取った「ルパン三世」で、「漫画でアドバイスはないだろう」と思いつつも、読み始めるやたちまち夢中になり、毎週「漫画アクション」を買っては、作中のルパンの「エッセンス」を自らの役に盛り込んでいったのだそうです。そして舞台本番で、「ルパン三世」(TV第1シリーズ)パイロットフィルムでのルパン役がスケジュールの都合で本編に出演できず、代わりの声優を探していた演出担当氏の前に、彼がイメージしていたルパン像にピッタリの山田康雄の演技が飛び込んで来た、というわけです。演出担当氏は「ルパンがここにいると思った」と、後に語っています。演出担当氏の誘いに、山田康雄が二つ返事で応じたのは言うまでもありません。
次元大介のイメージは、原作者モンキー・パンチによると、「荒野の七人」のジェームズ・コバーンだそうで、その吹替えを持ち役としていたのが小林清志だったという縁だそうです。小林本人の弁によると、次元大介の声は完全に地声であり、今まで演じてきた役の中で、最も無理をせずに自分にとって楽なトーンで喋れる役だそうで、次元大介は自分の集大成であり、自分と一体化した存在であるとも語っているそうです。なるほど、はまり役だったわけですね。
石川五ェ門と井上真樹夫を繋ぐエピソードはとりたてて見当たりません。が、「声優である以前に俳優である」という姿勢とポリシーを貫く井上真樹夫は、声優という呼ばれ方を余り好ましく思っておらず、役を演じる際にはキャラクターとの関係と役者との関係も同じようにするという拘りを見せており、「巨人の星」で花形を演じた際にはライバル関係である星飛雄馬役の古谷徹と意図的に親しく接しないでいたくらい(収録が終わってから、それは演技に集中するためだったと古谷に明かして謝ったらしい)ですから、山田康雄や小林清志とも、普段からクールに仲良くやっていたことでしょう。
峰不二子と増山江威子を繋ぐエピソードもとりたてて見当たりません。ただ、「キャラクターのイメージを壊す」という理由で顔出しをあまり好まなかった増山江威子は、顔出しを拒否するような発言もあり、声優の声がキャラクターのものとなってしまう「現実」と、役作りを大事にしている姿勢が窺えます。
ルパン・ファミリーの、これら初代とも言うべき声優さんたちは、こうして見ると、かけがえのないメンバーだったと思います。2011年12月のテレビスペシャル「ルパン三世 血の刻印〜永遠のMermaid〜」では、石川五ェ門(浪川大輔)、峰不二子(沢城みゆき)、銭形警部(山寺宏一)の三人で、声優がついに変わりました。しかし私にとってのルパン・ファミリーは、これら初代の人たちをおいて他には考えられません。ただ時代の移り変わりを感じるだけです。
今年3月に慢性呼吸不全で亡くなられて、かつて「ルパン三世」の放映を毎週楽しみにしていた私たちも含めて、皆、年を重ねた現実を、あらためて突きつけられたものでした。“初代”ルパンの山田康雄さん(享年62)が亡くなられたのは、かれこれ18年前の1995年3月のこと。後を継いだ栗田貫一さんは55歳と、当然、まだ若いですが、石川五ェ門役の井上真樹夫さんは74歳、二代目・峰不二子役の増山江威子さんは77歳、次元大介役の小林清志さんに至っては80歳です(以下、いちいちまどろっこしいので、勝手ながら呼び捨てにさせて頂きます)。
それはともかく、Wikipediaの納谷悟朗の項には、初代「ルパン三世」役だった山田康雄が急逝した際、葬儀で弔辞を読んだのは納谷悟朗で、山田康雄の遺影に向かって、銭形警部がルパン三世に怒鳴るような口調で「おい、ルパン。これから俺は誰を追い続ければいいんだ」「お前が死んだら俺は誰を追いかけりゃいいんだ」と涙ながらに呼びかけたエピソードが紹介されています。そして昨日のお別れの会では、栗田貫一がルパンの声で「とっつぁん、さみしいね。ずっと追いかけてもらいたかったぜ」と納谷悟朗を偲んだそうです。泣かせるエピソードです。
「ルパン三世」の存在を知ったのは、小学5~6年の頃、担任の先生が授業中の雑談で「面白い」と夢中で話したのが最初で、大の大人が・・・と不思議に心にひっかかりました。私自身は、その後しばらくして、TV番組より先にコミックで知って、衝撃を受けました。日本人が描くマンガとは思えないような軽妙洒脱なタッチに加えて、「粋でイナセな」という帯コピー通りのルパンのキャラクター造成と、漫画にも係らず子供だましではない洒落た大人のストーリー展開に、更に、TVアニメでは、世界を股にかけるという舞台設定に、世界への夢を掻き立てられ、一気に夢中になりました。
再びWikipediaからエピソードを拾います。
納谷悟朗は、様々なジャンルの作品に声を当て、出演作は100本以上にのぼるそうですが、その内の一つにジョン・ウェインがあり、山田康雄、小林清志、大塚周夫、野沢那智らと共に、テレビ洋画劇場におけるマカロニ・ウェスタンの放映を支えたそうです。西部劇での繋がりがあり、いずれも、まさに西部劇らしい、熱さを秘めつつ熱さを抑えたクールな雰囲気を感じさせるわけですね。
ルパン三世のキャラクター・デザインは「リオの男」のジャン=ポール・ベルモンドをモデルにしており、その吹き替えを山田康雄が担当していたのは、ただの偶然だったのでしょうか。別の項によると山田康雄と「ルパン三世」の出会いは劇的です。ある舞台での役作りに悪戦苦闘していた山田康雄に、知り合いのスタッフが「参考になるから」と手渡したのが「漫画アクション」から切り取った「ルパン三世」で、「漫画でアドバイスはないだろう」と思いつつも、読み始めるやたちまち夢中になり、毎週「漫画アクション」を買っては、作中のルパンの「エッセンス」を自らの役に盛り込んでいったのだそうです。そして舞台本番で、「ルパン三世」(TV第1シリーズ)パイロットフィルムでのルパン役がスケジュールの都合で本編に出演できず、代わりの声優を探していた演出担当氏の前に、彼がイメージしていたルパン像にピッタリの山田康雄の演技が飛び込んで来た、というわけです。演出担当氏は「ルパンがここにいると思った」と、後に語っています。演出担当氏の誘いに、山田康雄が二つ返事で応じたのは言うまでもありません。
次元大介のイメージは、原作者モンキー・パンチによると、「荒野の七人」のジェームズ・コバーンだそうで、その吹替えを持ち役としていたのが小林清志だったという縁だそうです。小林本人の弁によると、次元大介の声は完全に地声であり、今まで演じてきた役の中で、最も無理をせずに自分にとって楽なトーンで喋れる役だそうで、次元大介は自分の集大成であり、自分と一体化した存在であるとも語っているそうです。なるほど、はまり役だったわけですね。
石川五ェ門と井上真樹夫を繋ぐエピソードはとりたてて見当たりません。が、「声優である以前に俳優である」という姿勢とポリシーを貫く井上真樹夫は、声優という呼ばれ方を余り好ましく思っておらず、役を演じる際にはキャラクターとの関係と役者との関係も同じようにするという拘りを見せており、「巨人の星」で花形を演じた際にはライバル関係である星飛雄馬役の古谷徹と意図的に親しく接しないでいたくらい(収録が終わってから、それは演技に集中するためだったと古谷に明かして謝ったらしい)ですから、山田康雄や小林清志とも、普段からクールに仲良くやっていたことでしょう。
峰不二子と増山江威子を繋ぐエピソードもとりたてて見当たりません。ただ、「キャラクターのイメージを壊す」という理由で顔出しをあまり好まなかった増山江威子は、顔出しを拒否するような発言もあり、声優の声がキャラクターのものとなってしまう「現実」と、役作りを大事にしている姿勢が窺えます。
ルパン・ファミリーの、これら初代とも言うべき声優さんたちは、こうして見ると、かけがえのないメンバーだったと思います。2011年12月のテレビスペシャル「ルパン三世 血の刻印〜永遠のMermaid〜」では、石川五ェ門(浪川大輔)、峰不二子(沢城みゆき)、銭形警部(山寺宏一)の三人で、声優がついに変わりました。しかし私にとってのルパン・ファミリーは、これら初代の人たちをおいて他には考えられません。ただ時代の移り変わりを感じるだけです。