前回に引き続き、もう少し東日本大震災について考えてみたいと思います。五大危機と呼ばれた中で、一番深刻なのは、間違いなく原発危機でしょう。これについては、二つの思いが交錯します。「何だか本当のことがよく分からないなあ」という戸惑いと、そもそもの原因は「原発について、私たちは余りに知らな過ぎた」という慙愧に堪えない思いです。
前回、大震災と太平洋戦争とのアナロジーを思いつくままに書き綴りましたが、原発に対するこうしたMixed Feelingsもまた太平洋戦争と重なります。すなわち、未曾有の原発危機に瀕して、安全神話を飽くまで布教する御用学者をはじめとする原発推進派が跋扈する一方、ここぞとばかりに反・原発派が勢いを増し、思う存分、最悪の事態を書き立てて危機感を煽るのは、さながら右派と左派の争いに似て、真実を把握するのを妨げます。太平洋戦争の評価を難しくするのもまた、こうした感情的な右派と左派の無用な争いなわけです。もう少し事実に基づく科学的な知見と建設的な議論ができないものかと思ってしまいます。
原発教育を握りつぶして来たのは日教組だという説もありますが、敢えて、責任の所在は、私たち国民一人ひとりの問題にしておきたいと思います。今なお真実は霧の中、といったところがありますが、少なくとも、原発は最もクリーンで低コストだという経産省のマジックに騙されて、私たちは自ら検証する努力を怠って来たことを大いに反省しなければなりません。核燃料リサイクル施設の六ヶ所村は今なお稼働せず、私たち現代人は、今後、廃炉のため十年という単位で冷却し続けた挙句、放射性廃棄物を(プルトニウムに至っては半減期2万4千年という途方もない長期間にわたって)ガラスに閉じ込め隔離し続ける十字架を将来世代に背負わせようとしているわけです。
こうした事実を一時的にせよ忘却できたのは、政・官(経産省)・財(電力業界と建設業界)の鉄のトライアングルに学(御用学者)を加え、支えられてきた補助金漬けの原発行政のお蔭です。日経は5月12日の春秋で、かつての石炭「六法」に対して、原発を受け入れた自治体を潤す電源「三法」に触れ、週刊ダイヤモンド5月21日号は、原発をめぐる人脈と利権とカネを詳しく報じました。
それによると、運転停止が決まった浜岡原発のおひざ元・御前崎市の場合、今年度の一般会計当初予算約168億円弱の内、原発関連の交付金や固定資産税の総額は実に42%を占め、プールや図書館やレクリエーション施設をはじめ、今なお道路や歩道の整備が続けられていることに加え、1200人余りの住民が浜岡原発で働いており、市の財政当局者は「浜岡は国の要請で停止するので、交付金は100%要求して行きたい」と語り、海江田経産大臣も「従来通り」と応じているそうです。福島第一でも、地元の三分の一は原発で働いていると言われていました。もし原発を受け入れた場合、当該市町村に隣接市町村と都道府県まで加えて、2009年度予算ベースで総額1200億円もの交付金が支給される上、一般家庭や企業に対する電気料金の割引措置もあるそうです。更によくできたもので、交付金が地元に集中的に投下されるのは着工から運転開始までの10年間で、その後は段階的に減って行くそうですし、建設費数千億円に及ぶ原発の法定減価償却期間16年を越えると、自治体に入る固定資産税も微々たるものとなるため、福島のように40年使われるにしても、潤うのは最初の内だけで、ひとたび原発を誘致してその美味しい味を覚えた自治体は、麻薬中毒患者のように、新たなカネ欲しさに原発増設に手を伸ばす仕組みだと言います。東電社長が初めて福島を訪問した際、「土下座しろ」と叫んだオバサンがいましたが、きっとどこか他所から呼ばれた市民運動家だったのでしょう。もしもこうした地元の実態を知っていれば、あんな破廉恥なマネは出来なかったでしょうから。だからと言って、福島の方々の辛苦を軽んじるつもりは毛頭なく、リスクとともに暮らしてきて、いったんリスクが顕在化した以上、騒がず喚かず静かに補償を求めるべきです。
繰り返しますが、原発を誘致した自治体を自業自得だと責めるつもりはありませんし、原発行政がオカシイなどと疑問を呈するつもりもありません。そのお蔭で大多数の私たちは、原発の差し迫った危険に晒されることなく、原発による安定したエネルギー供給という恩恵を受けて来たのです。そうした現実から目を背けて来た不勉強を恥じるのみです。菅さんからは一向にエネルギー政策の何たるかが明確には聞こえてきませんが、私たちが、今、出来ることは限られているように思います。今すぐ原発から脱却できるかどうか疑問ですが、原発が多大なるリスクを内包していると同時に、今回の原発危機の本質は安全管理にあることが分かった以上、当面の措置として安全管理を徹底しつつ、必要な電力をなんとか確保し、中・長期的に(あるいは可及的速やかに)再生可能エネルギーへの転換を実行することしかありません。原発危機以上に、この国の第六の危機として、リーダーシップの欠如を挙げたいくらいですが・・・
前回、大震災と太平洋戦争とのアナロジーを思いつくままに書き綴りましたが、原発に対するこうしたMixed Feelingsもまた太平洋戦争と重なります。すなわち、未曾有の原発危機に瀕して、安全神話を飽くまで布教する御用学者をはじめとする原発推進派が跋扈する一方、ここぞとばかりに反・原発派が勢いを増し、思う存分、最悪の事態を書き立てて危機感を煽るのは、さながら右派と左派の争いに似て、真実を把握するのを妨げます。太平洋戦争の評価を難しくするのもまた、こうした感情的な右派と左派の無用な争いなわけです。もう少し事実に基づく科学的な知見と建設的な議論ができないものかと思ってしまいます。
原発教育を握りつぶして来たのは日教組だという説もありますが、敢えて、責任の所在は、私たち国民一人ひとりの問題にしておきたいと思います。今なお真実は霧の中、といったところがありますが、少なくとも、原発は最もクリーンで低コストだという経産省のマジックに騙されて、私たちは自ら検証する努力を怠って来たことを大いに反省しなければなりません。核燃料リサイクル施設の六ヶ所村は今なお稼働せず、私たち現代人は、今後、廃炉のため十年という単位で冷却し続けた挙句、放射性廃棄物を(プルトニウムに至っては半減期2万4千年という途方もない長期間にわたって)ガラスに閉じ込め隔離し続ける十字架を将来世代に背負わせようとしているわけです。
こうした事実を一時的にせよ忘却できたのは、政・官(経産省)・財(電力業界と建設業界)の鉄のトライアングルに学(御用学者)を加え、支えられてきた補助金漬けの原発行政のお蔭です。日経は5月12日の春秋で、かつての石炭「六法」に対して、原発を受け入れた自治体を潤す電源「三法」に触れ、週刊ダイヤモンド5月21日号は、原発をめぐる人脈と利権とカネを詳しく報じました。
それによると、運転停止が決まった浜岡原発のおひざ元・御前崎市の場合、今年度の一般会計当初予算約168億円弱の内、原発関連の交付金や固定資産税の総額は実に42%を占め、プールや図書館やレクリエーション施設をはじめ、今なお道路や歩道の整備が続けられていることに加え、1200人余りの住民が浜岡原発で働いており、市の財政当局者は「浜岡は国の要請で停止するので、交付金は100%要求して行きたい」と語り、海江田経産大臣も「従来通り」と応じているそうです。福島第一でも、地元の三分の一は原発で働いていると言われていました。もし原発を受け入れた場合、当該市町村に隣接市町村と都道府県まで加えて、2009年度予算ベースで総額1200億円もの交付金が支給される上、一般家庭や企業に対する電気料金の割引措置もあるそうです。更によくできたもので、交付金が地元に集中的に投下されるのは着工から運転開始までの10年間で、その後は段階的に減って行くそうですし、建設費数千億円に及ぶ原発の法定減価償却期間16年を越えると、自治体に入る固定資産税も微々たるものとなるため、福島のように40年使われるにしても、潤うのは最初の内だけで、ひとたび原発を誘致してその美味しい味を覚えた自治体は、麻薬中毒患者のように、新たなカネ欲しさに原発増設に手を伸ばす仕組みだと言います。東電社長が初めて福島を訪問した際、「土下座しろ」と叫んだオバサンがいましたが、きっとどこか他所から呼ばれた市民運動家だったのでしょう。もしもこうした地元の実態を知っていれば、あんな破廉恥なマネは出来なかったでしょうから。だからと言って、福島の方々の辛苦を軽んじるつもりは毛頭なく、リスクとともに暮らしてきて、いったんリスクが顕在化した以上、騒がず喚かず静かに補償を求めるべきです。
繰り返しますが、原発を誘致した自治体を自業自得だと責めるつもりはありませんし、原発行政がオカシイなどと疑問を呈するつもりもありません。そのお蔭で大多数の私たちは、原発の差し迫った危険に晒されることなく、原発による安定したエネルギー供給という恩恵を受けて来たのです。そうした現実から目を背けて来た不勉強を恥じるのみです。菅さんからは一向にエネルギー政策の何たるかが明確には聞こえてきませんが、私たちが、今、出来ることは限られているように思います。今すぐ原発から脱却できるかどうか疑問ですが、原発が多大なるリスクを内包していると同時に、今回の原発危機の本質は安全管理にあることが分かった以上、当面の措置として安全管理を徹底しつつ、必要な電力をなんとか確保し、中・長期的に(あるいは可及的速やかに)再生可能エネルギーへの転換を実行することしかありません。原発危機以上に、この国の第六の危機として、リーダーシップの欠如を挙げたいくらいですが・・・
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