風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

全米オープン

2014-09-14 15:28:22 | スポーツ・芸能好き
 錦織圭選手が、昨日、凱旋帰国しました。
 先ごろ行われたテニスの全米オープンで、アジア男子として初めてグランドスラム・ファイナルに進出するという、優勝こそ逃しましたが、快挙を成し遂げました。大会前に右足親指を手術し、1回戦当日まで出場するかどうか決め兼ねていたといいますから、多くを期待しないで虚心に迎えたのが良かったのか、4回戦で世界ランキング6位のミロシュ・ラオニッチ(カナダ)を深夜の4時間19分の激戦の末に退けたのに続き、準々決勝も同4位のスタニスラス・ワウリンカ(スイス)を炎天下の4時間15分に及ぶ激闘の末に制し、米メディアから「マラソン・マン」と称賛され、準決勝では同1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)にも競り勝ちました。決勝の相手は世界ランキングでは16位と格下のマリン・チリッチ(クロアチア)で、今大会、世界ランク3位のロジャー・フェデラー(スイス)や同7位のトマーシュ・ベルディハ(チェコ)を破って勢いに乗るとは言え、過去の対戦成績は5勝2敗、今季に限れば2勝0敗と負けなしで、もしや・・・と多くの日本人を期待させたものでした。しかし、勝負事はやってみないと分からないものです。そしてグランドスラム決勝戦という晴れの舞台ともなれば、魔物が棲むものです。それまでの粘り強さはウソのように、3-6、3-6、3-6のストレート負け。試合後のインタビューで「フェデラーの方がやりやすかったかもしれない」と率直に答えていたのが印象的でした。
 「相手がチリッチで、得意ではないですけれど何回も勝っている相手でした。なので、より考える部分は増えたと思いますし、勝てるというのが少し見えたのもあまりよくなかったし、集中できなかった理由の一つでもあると思います。ここまで硬くなったのは久しぶりで、試合に入り込めなかったですね。(4回戦の)ラオニッチだったり、(準々決勝の)ワウリンカの時は、2セット目から立て直していつものプレーに持ってくることができましたけれど、今日はほとんど最後まで、なかなか感覚がつかめないまま終わってしまいました」と。
 松岡修造氏は、このあたりを、「今大会を戦ってきた力の20パーセントしか出せなかったのではないか」と話していました。「返球がどんどん真ん中に寄ってしまったのは、緊張感からくるもの」で、「遊び心を持ちながらプレーする錦織にとって力みが一番の敵」だったと。
 それにしても、常にケガの不安に苛まれていた過去と比べると、7試合をよく戦い抜いたものだと思います。本人も、体力面では大いに自信をもったようですし、同時に、強い相手に2週間も挑み続けたという意味では、精神面でも逞しくなったことを、本人も実感していたようでした。
 業界用語で“ネタ枯れ”(視聴率の取れる、あるいは販売部数の伸びそうな大きなニュースがない)と呼ばれる時期で、デング熱の不安に晒される中で、錦織選手の活躍はとりわけ注目されました。中には、国籍こそ日本人ですが、フロリダのIMGアカデミーがはぐくんだ天才で、人生の半分はアメリカなのに、日本人の活躍と呼ぶのは甚だオカシイと水を差す人もいました。確かにその通りで、冒頭、「アジア男子として初めてグランドスラム・ファイナルに進出」と書きましたが、錦織の今のコーチで、両親ともに台湾系移民でアメリカ生まれのマイケル・チャンは、175cmと小柄ながらも全米を含むグランドスラム決勝に4回も進出し、17歳のときには全仏オープンに優勝していますので、「アジア男子初」という国籍によるメディア報道は、実情にはそぐわない。しかし、体格面で劣る日本人には難しいと思われてきたスポーツ領域で、やりようによっては日本人でも活躍し得るという事実を見せつけた快挙には変わりなく、大いに勇気づけられます。
 9月8日付の最新の世界ランキングでは、優勝したチリッチは9位、錦織は再びトップテン入りし自己最高の8位につけました。上位陣のポイントと比べるとまだまだと思わせますが、「ビッグ4」と呼ばれた強豪がグランドスラム決勝に進めなかったのは2005年以来なのだそうで、新旧交代の機運に乗じて、伸び盛りの彼の今後に期待したいと思います。
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