monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 冬 冬の月

2013年12月14日 | 日本古典文学-冬

冬の歌の中に 春宮大夫公賢
夕時雨過行山のたかねより村雲わけて出る月影
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

摂政太政大臣家歌合に、湖上冬月 藤原家隆朝臣
志賀のうらや遠さかり行浪まより氷て出るあり明の月
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

河辺冬月といふ事を 常盤井入道前太政大臣
すみわたる八十氏河の網代木に月の氷もくたけてそ行
(続後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

題不知 従二位宣子
冬河のはやせの浪のをのつからこほらぬ隙にやとる月影
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

さゆるよはつきもいくへかこほるらむなかれぬみつにかけをととめて
(嘉元百首~日文研HPより)

冬月を 藤原基綱
篠の葉のさやく霜夜の山風に空さへこほる有明の月
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

霜深き夜はにや空もさえぬらんかけまてこほる山のはの月
(宝治百首~日文研HPより)

冬の御歌中に、野冬月といふことをよませ給うける 亀山院御製
さひしさは色も光も更はてゝ枯野の霜にあり明の月
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

かたしきの衣のいたくさゆるかな霜おく夜はの袖の月かけ
(宝治百首~日文研HPより)

百首歌奉りし時、冬月 民部卿為明
さゆる夜は衣かたしく床の霜袖の氷に月やとるなり
百首歌奉りし時、冬月 権中納言時光
さゆる夜の霜をかさねて袖の上にやとれはこほる月の影かな
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

二品法親王覚助家五十首歌に、冬暁月 中納言為藤 
なかき夜のね覚の涙ほしやらて袖よりこほる有明の月 
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

冬の夜、月あかきに、賀茂にまうでて、
神垣や松のあらしもおとさえて霜にしもしく冬の夜の月
(建礼門院右京大夫集~岩波文庫)

なかめやるころもてさむくふるゆきに夕やみしらぬやまのはのつき
(正治二年後度百首~日文研HPより)

冬かれの庭に音せぬ風さえてうす雪こほる夜はの月影
(草根集~日文研HPより)

ゆきふかきやまのはいつるふゆのつきこころことはもおよはさりけり
(正治二年後度百首~日文研HPより)

八条院の冬の御方にて、雪降り月おもしろき夜、詩歌など奉り侍りけるに 笹分けし朝の関白
さえわたる池の氷も月影も同じ鏡と見ゆる夜半かな
頭中将
たとふべき方なきものは冬深み雪降りしける夜半の月影
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

高岳相如か家に、冬の夜の月おもしろう侍ける夜まかりて もとすけ 
いさかくてをりあかしてん冬の月春の花にもおとらさりけり 
(拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

弘安三年、伏見殿の御懺法とて、院の御方は御留守なりしに、十五夜の月も雪うち散りて、風も冷(ひや)やかなる枯野の庭の景色、物あはれなれど、同じ心に見る人もなし。(略)
すさまじき物とかや言ひふるすなる、師走の月夜なれど、宮の中はみな白妙に見えわたりて、木々の梢は花と見ゆ。池の鏡も戯れたるに、枯蘆のはかなくしほれ伏したる程、よろづ に見所あり。音なく静(しづ)まりたるに、たえだえ岩に洩るゝ水の音ばかりして、軒端の松のみぞつれなく見ゆる。
(略)軒ちかく一むら生ひたる呉竹の雪折したるも、なべて枯れぬる草よりもはかなく、よろづ に気近き様(さま)に、見所そひてぞ侍。
ながめわび心も空にかきくれて降る白雪にかすむ月影(イすむつきの影)
うきふしを思ひ乱れてはかなきは汀の蘆の雪の下折(したをれ)
(中務内侍日記~有朋堂文庫「平安朝日記集」)

廿日よひの月なれは、またいとあかきに、つきのひかりさえくまなくてひるのやうなるに、(略)
(狭衣物語~諸本集成第二巻伝為家筆本)

 雪のいたう降り積もりたる上に、今も散りつつ、松と竹とのけぢめをかしう見ゆる夕暮に、人の御容貌も光まさりて見ゆ。
 「時々につけても、人の心を移すめる花紅葉の盛りよりも、冬の夜の澄める月に、雪の光りあひたる空こそ、あやしう、色なきものの、身にしみて、この世のほかのことまで思ひ流され、おもしろさもあはれさも、残らぬ折なれ。すさまじき例に言ひ置きけむ人の心浅さよ」
 とて、御簾巻き上げさせたまふ。
 月は隈なくさし出でて、ひとつ色に見え渡されたるに、しをれたる前栽の蔭心苦しう、遣水もいといたうむせびて、池の氷もえもいはずすごきに、童女下ろして、雪まろばしせさせたまふ。
(略)
 月いよいよ澄みて、静かにおもしろし。女君、
 「氷閉ぢ石間の水は行きなやみ空澄む月の影ぞ流るる」
(源氏物語・朝顔~バージニア大学HPより)

 雪のかきくらし降る日、終日にながめ暮らして、世の人のすさまじきことに言ふなる師走の月夜の、曇りなくさし出でたるを、簾巻き上げて見たまへば、向かひの寺の鐘の声、枕をそばたてて、今日も暮れぬと、かすかなる響を聞きて、
 「おくれじと空ゆく月を慕ふかなつひに住むべきこの世ならねば」
 風のいと烈しければ、蔀下ろさせたまふに、四方の山の鏡と見ゆる汀の氷、月影にいとおもしろし。「京の家の限りなくと磨くも、えかうはあらぬはや」とおぼゆ。
(源氏物語・総角~バージニア大学HPより)