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古典の季節表現 春 一月 若菜

2018年01月07日 | 日本古典文学-春

天平元年班田之時使葛城王従山背國贈薩妙觀命婦等所歌一首
あかねさす昼は田賜びてぬばたまの夜のいとまに摘める芹これ
大夫と思へるものを太刀佩きて可尓波の田居に芹ぞ摘みける
 右二首左大臣讀之云尓 [左大臣是葛城王 後賜橘姓也]
(万葉集~バージニア大学HPより)

あらをたのこそのふるあとふみわけてゆきけのわかないまやつむらむ
あたちのののさはのこほりとけにけりますけにましるこせりつむなり
けふそかしなつなはこへらせりつみてはやななくさのおものまゐらむ
ななくさのかすならねともはるののにゑくのわかはもつみはのこさし
(夫木抄~日文研HPより)

君がため山田の沢にゑぐ摘むと雪消の水に裳の裾濡れぬ
(万葉集~バージニア大学HPより)

野べいでて誰がいへづとと折りつらむ春のわらびにまじるいたどり
(土御門院御集)

住吉社に奉りける百首歌の中に、若菜を 皇太后宮大夫俊成 
いさやこらわかな摘てんね芹生るあさゝは小野は里遠くとも 
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

三百六十首歌の中に 曽弥好忠 
ねせりつむ春の沢田におりたちて衣のすそのぬれぬ日(そ)なき 
(続後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

百首歌よませ給うける中に、沢若菜 伏見院御製
春あさき雪けの水に袖ぬれて沢田のわかなけふそ摘つる 
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

沢若菜
うちむれて野沢のわかなつむにたにのとけき御世の春そしらるる
春といへは野沢の氷かつ消えてわかなつむへき時をしるかな
今朝みれは野さはの水のあさみとりゑくのわかなや下萌えぬらん
(宝治百首~日文研HPより)

建保二年内大臣家百首歌に、朝若菜 前中納言定家
たかためとまた朝霜のけぬかうへに袖ふりはへて若なつむらん
(続後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

七日は、雪間の若菜、青やかに摘み出でつつ、例はことにさやうなるものも目に近からぬところどころにも、もてさわぎあつかひたるこそをかしけれ。
(枕草子~前田家本)

 むつきの七日中宮亮仲実かもとへなゝくさのなつかはすとてよめる
岡見河む月に映るゑこの畦をつみしなへてもそこの御為そ
 返し 仲実朝臣
心さし深きみたにゝつみためていしみゆすりて洗ふね芹そ
(散木奇歌集~群書類従15)

 正月七日若な人にやるとて
春日野のけふなゝ草のこれならで君をとふひはいつそ共なし
(赤染衛門集~群書類従15)

年替はりぬれば、空のけしきうららかなるに、汀の氷解けたるを、ありがたくもと眺めたまふ。聖の坊より、「雪消えに摘みてはべるなり」とて、沢の芹、蕨などたてまつりたり。斎の御台に参れる。
(源氏物語・椎本~バージニア大学HPより)

 故式部卿の宮、二条の御息所に絶えたまひて、またの年の正月の七日の日、若菜奉りたまうけるに、
  ふるさとと荒れにし宿の草の葉も君がためとぞまづはつみける
(大和物語~新編日本古典文学全集)

見渡せば、松の葉白き吉野山いく重積もりし雪ならん。
ツレ 深山には松の雪だに消えなくに、都は野べの若菜摘む、頃にも今やなりぬらん、思ひ遣るこそゆかしけれ。
ツレ 木の芽春雨降るとても、木の芽春雨降るとても、なほ消え難きこの野べの、雪の下なる若菜をば、いま幾日ありて摘ままし。春立つと、いふばかりにやみ吉野の、山も霞みて白雪の、消えし跡こそ道となれ、消えし跡こそ道となれ。
(謡曲・二人静~岩波・日本古典文学大系)

シテツレ 若菜摘む、生田の小野の朝風に、なほ冴えかへる袂かな。
ツレ 木の芽も春の淡雪に、 シテツレ 森の下草なほ寒し。
シテ 深山には松の雪だに消えなくに、 シテツレ 都は野べの若菜摘む、頃にも今やなりぬらん、思ひやるこそゆかしけれ。 
ツレ ここはまたもとより所も天離がる、 シテツレ 鄙人なればおのづから、憂きも命の生田の海の、身を限りにて憂き業の、春としもなき小野に出でて
シテツレ 若菜摘む、いく里人の跡ならん、雪間あまたに野はなりぬ。
シテツレ 道なしとても踏み分けて、道なしとても踏み分けて、野沢の若菜今日摘まん、雪間を待つならば、若菜ももしや老いもせん。嵐吹く森の木蔭、小野の雪もなほ冴えて、春としも七草の、生田の若菜摘まうよ、生田の若菜摘まうよ。
(略)
君がため、春の野に出でて若菜摘む、衣手寒し消え残る、雪ながら摘まうよ、淡雪ながら摘まうよ。
地 沢べなる、氷凝りは薄く残れども、水の深芹、掻き分けて
青緑、色ながらいざや摘まうよ、色ながらいざや摘まうよ。
(略)
佐野の茎立若立ちて、
地 緑の色も名に染む、 シテ 長安の薺 地 辛薺、 シテ 白み草も有明の、 地 雪に紛れて、摘みかぬるまで春寒き、小野の朝風、また森の下枝松垂れて、いづれを-春とは白波の、川風までも冴えかへり、吹かるる-袂もなほ寒し、摘み残して帰らん、若菜摘み残し帰らん。
(謡曲・求塚~岩波・日本古典文学大系)

(2013年1月7日の「若菜」の記事は削除しました。)