(承和元年正月)辛未(二十日) 天皇が仁寿殿で内宴を催し、内教坊が歌舞を奏した。天皇の寵を受けている近習が観覧し、詞を解する五位以上の者二、三人と内記らを特別に喚(よ)び、ともに「早春の花と月」の題で詩を賦させた。本日の夕刻、勅により正六位上大戸首清上に外従五位下を授けた。清上は横笛を能(よ)くし、それにより今回の叙位となった。
(続日本後紀〈全現代語訳〉~講談社学術文庫)
(承和十一年)春正月庚子(十七日) 天皇が仁寿殿で内宴を催した。公卿と文学に心得のある者五、六人が陪侍した。ともに「初春の詞」の題で詩を賦した。特別に勅により三品基貞親王を宴に参加させ、日暮れて差をなして禄を賜った。
(続日本後紀〈全現代語訳〉~講談社学術文庫)
(承和十五年)春正月壬午(二十一日) 天皇が仁寿殿に出御して、恒例の内宴を催した。咲いていた殿前の紅梅を詩題に入れ、宴が終了すると、差をなして禄を賜った。
(続日本後紀〈全現代語訳〉~講談社学術文庫)
早春内宴、聴宮妓奏柳花怨曲、応製。
(略)
舞(ま)ひは破(は)にして 緑なる朶(えだ)を飄(ひるがへ)すに同じくとも、
歓(よろこ)びは酣(たけなは)にして 銀(しろがね)の釵(かみざし)を落(おと)すことを覚(おぼ)えず
(略)
(菅家文草~岩波「日本古典文学大系72」)
賦新煙催柳色、応製。
何(いづ)れの処の新煙(しんえん)ぞ 柳色(りうしょく)の粧(よそほ)ひ
春来(きた)りて数日 青陽(せいやう)に映(は)ゆ
(略)
花なくして舞妓(ぶぎ) 怨(うら)みを含(ふふ)まむことを欲(ほ)りす
枝有りて行人(かうじん)折りて 腸(はらわた)を断(た)つ
翠黛(すいたい) 眉を開きて 纔(わづか)に画(えが)き出(いだ)す
金糸 繭を結びて 繰り将(おく)らず
(略)
(菅家文草~岩波「日本古典文学大系72」)
昌泰元年正月廿日庚寅。内宴。題云。草樹暗迎春。
(日本紀略~「新訂増補 国史大系11」)
早春内宴、侍清涼殿同賦草樹暗迎春、応製。
東郊(とうかう) 豈(あに)敢へて煙嵐(えんらん)を占(し)むや
陽気 暗(ほのか)に侵(をか)して草木(さうもく)に覃(およ)ぶ
千里懐(おも)ひを遣(や)る 鎖(き)え尽くる雪
四山(しざん)眼(まなこ)を廻(めぐら)す 染め初(そ)むる藍(あゐ)
剪刀(せんたう) 萱(かや)出でて 礪(といし)に由(よし)なし
絲縷(しる) 柳垂りて 蚕(かひこ)を待たず
臣は迎へて楽しぶ処 春毎(はるごと)に酣(たけなは)なり
(菅家文草~岩波「日本古典文学大系72」)
(略)予(われ)昔内宴に侍りて草木共に春に逢ふといふことを賦せし詩に曰く、「庭気色(きそく)を増して晴沙(せいさ)緑なり、林容輝く(ようき)を変じて宿雪(しゅくせつ)紅なり」といへり。(略)
(本朝文粋~岩波・新日本古典文学大系)
(延喜三年正月)廿二日甲子。内宴仁寿殿。以残雪宮梅為題。
(延喜四年正月)廿日。内宴。題云、花伴玉楼人。
(日本紀略~「新訂増補 国史大系11」)
(延喜十二年正月)廿一日庚子。内宴。題云。雪尽草芽生。〈萌を以て韻と為す。〉於仁寿殿被行之。
(日本紀略~「新訂増補 国史大系11」)
河畔(かはん)の青袍(せいほう)愛(め)づべしといへども 小臣(せうしん)の衣の上には太(はなは)だ心なし
(正月の叙位に漏れし年の内宴。雪尽きて草の牙(め)生ふ 菅淳茂)
この句に依りて叙位せらる。(臨時。)
(江談抄~岩波「新日本古典文学大系32」)
(長元七年正月)廿二日癸未。於仁寿殿内宴。詩宴。題云。春至鶯花。木工寮於綾綺殿前立舞台。
(日本紀略~「新訂増補 国史大系11」)
(平治元年正月)廿一日。内宴。妓女奏舞曲。如陽台之窈窕。我朝勝事在此事。信西入道奉勅。令練習其曲。
(百錬抄~「新訂増補 国史大系11」)
保元三年正月内宴最高の事幷びに次年内宴に主上玄象を弾じ給ふ事
内宴は弘仁年中にはじまりたりけるが、長元より後たえておこなはれず。保元三年正月廿一日におこしおこなはるべきよし、さたありけるほどに、その日は雨ふりて、廿二日におこなはれけり。次第のことゞも、ふるきあとを尋ねておこなはれけり。法性寺殿関白にておはしましけるをはじめて、人びとおほくまゐらひたりけるに、前太政大臣は、かならず詩をたてまつるべき人にておはしけり、太政大臣は管絃の座に必候べき人にておはしけるに、座敷うちなかりければ、いかゞあるべきとかねたさたありけるに、太政大臣、大臣につくべきよし、すゝみ申されけれども、殿下ゆるし給はざりけり。つひに前太政大臣、まづまゐりて詩をたてまつる。披講はてゝいで給て後、太政大臣かはりて座につき給けり。ありがたかるべき事なり。御遊の所作人、太政大臣、左大臣拍子、内大臣笛、按察使重通琵琶、左京大夫季朝朝臣・上総介重家朝臣笙、宮内卿資賢朝臣和琴、前備後守季兼篳篥、主上御付歌あり。ありがたきためしなるべし。呂、安名尊・鳥破・蓆田・賀殿急・美作、律、伊勢海・万歳楽・青柳・五常楽・更衣、これらをぞ奏せられける。(略)
(古今著聞集~岩波・日本古典文学大系)
内宴には、平中納言殿の御息所なり。かたちも清げなり。ある中に下ラフにて、賄ひたまふ。
(うつほ物語~新編日本古典文学全集)