かれ、この口子臣この御歌を白(まを)す時、いたく雨ふりき。(略)ここに匍匐(はらば)ひ進み赴きて庭中に跪(ひざまづ)きし時、水潦(にはたづみ)腰に至りき。その臣、紅(あか)き紐著(つ)けし青摺の衣(きぬ)を服(き)たりき。かれ、水潦(にはたづみ)紅き紐に払(ふ)れて、青皆紅き色に変(な)りぬ。
(「古事記・下〈全訳注〉」~講談社学術文庫)
はなはだも降らぬ雨ゆゑにはたつみいたくな行(ゆ)きそ人の知るべく
(万葉集~伊藤博「萬葉集釋注」集英社文庫ヘリテージシリーズ)
題しらす 本院侍従
庭たつみ行かたしらぬ物思ひにはかなきあはの消ぬへきかな
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)
世の中は有りて空しきにはたづみ己がゆきゆき別れぬる身を
にはたづみ流るゝ方の無ければや物思ふ人の袖に流るゝ
(古今和歌六帖~校註国歌大系9)
のとかにもたのまさらなんにはたつみかけみゆへくもあらぬなかめを
(略)
いつまてとしらぬなかめのにはたつみうたかたあはてわれそけぬへき
(狭衣物語~諸本集成第二巻伝為家筆本)
春雨のふる日、にこれる水に花の散かゝりたるをみてよめる 中納言兼輔
庭たつみ木のもとちかくなかれすはうたかた花をありとみましや
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)
さみたれにいけもひとつのにはたつみかはつすたきてみくさなみよる
(延文百首-忠季~日文研HPより)
まつひともとはてふるやはさみたれのなかめにまさるにはたつみかな
(宗良親王千首~日文研HPより)
さみたれもしけきよもきのにはたつみゆくかたしらぬわかこころかな
(新撰和歌六帖-家良~日文研HPより)
にはたつみなかれてひとやみえくるとくもれはたのむなつのゆふくれ
(好忠集~日文研HPより)
文保三年、後宇多院に百首歌奉ける時、夏歌 後西園寺入道前太政大臣
月うつるまさこのうへの庭たつみ跡まてすゝし夕たちの雨
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)
(さふのうたのなかに) 従二位為子
あらき雨のをやまぬ程の庭たつみせきいれぬ水そしはし流るゝ
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)
なかめのみたたつれつれのにはたつみよにふりはててゆくかたもなし
(新撰和歌六帖-為家~日文研HPより)