光の肉親、熱の姉妹、色の血族。八月はあらゆる色彩と光輝と炎熱との昏迷する鎔鉱炉である。怪物のやうに大きな八つ手の葉の無言の恐怖は黙黙したたつて地面にひそみかくれ、鉄の環を鼻にはめて追はれる牛のやうに青春の狂気の永遠性は法衣の香にむせびながら空鳴りするみづからの蹄のおとに夢をふみしだく。
(『限定版 大手拓次全集 別巻』(白鳳社、1971年、447p)より「季節題詞」)
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