たかまとののへのあきはきこのころのあかときつゆにさきにけむかも
(万葉集~日文研HPより)
娘女らに行相の早稲を刈る時になりにけらしも萩の花咲く
秋田刈る刈廬の宿りにほふまで咲ける秋萩見れど飽かぬかも
秋風は涼しくなりぬ馬並めていざ野に行かな萩の花見に
沙額田の野辺の秋萩時なれば今盛りなり折りてかざさむ
見まく欲り我が待ち恋ひし秋萩は枝もしみみに花咲きにけり
我がやどに咲ける秋萩常ならば我が待つ人に見せましものを
(万葉集~バージニア大学HPより)
これさたのみこの家の歌合によめる 藤原としゆきの朝臣
秋萩の花さきにけり高砂のおのへの鹿はいまや鳴らん
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
宝治百首歌めされける時、萩露を 後嵯峨院御製
白露もこほれて匂ふ高円の野への秋はき今さかりなり
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
さを鹿の朝立つ野辺の秋萩に玉と見るまで置ける白露
(万葉集~バージニア大学HPより)
うすくこくわきてやつゆもおきつらむまのゝむらはぎおのがいろいろ
(郁芳門院媞子内親王前栽合~「平安朝歌合大成3」)
露ながら折らまほしきはむらさきのたまをつらぬく庭の糸萩
(実材母集)
夕露のむすふと見ゆるいと萩を吹とく風に花そ乱るゝ
(永享九年住吉社奉納百首~「続群書類従14下」)
うつろはむことたにをしきあきはきにをれぬはかりもおけるしらつゆ
(伊勢集~日文研HPより)
九月十三夜、十首歌合に、朝草花 土御門院小宰相
露なからみせはや人に朝な朝なうつろふ庭の秋萩の花
(続後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)
秋の野に露負へる萩を手折らずてあたら盛りを過ぐしてむとか
(万葉集~バージニア大学HPより)
ゆふされはつゆのやとりとなりにけりはらはぬにはのあきはきのはな
(文保百首~日文研HPより)
題しらす よみ人しらす
ゆふされは玉ぬく野辺の露なから風にかつ散秋萩の花
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
秋の歌に 前中納言定家
風ふけは枝もとをゝにをく露のちるさへおしき秋萩の花
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)
白露に争ひかねて咲ける萩散らば惜しけむ雨な降りそね
雁がねの来鳴かむ日まで見つつあらむこの萩原に雨な降りそね
さを鹿の心相思ふ秋萩のしぐれの降るに散らくし惜しも
(万葉集~バージニア大学HPより)
(霊龜元年歳次乙卯秋九月志貴親王時作歌一首[并短歌])短歌二首
高円の野辺の秋萩いたづらに咲きか散るらむ見る人なしに
(霊龜元年歳次乙卯秋九月志貴親王時作歌一首[并短歌])或本歌曰
高円の野辺の秋萩な散りそね君が形見に見つつ偲はむ
(万葉集~バージニア大学HPより)
秋雨のいみしくふる日はきの花につけて人にやりし
つまこひにしかはしからむ秋萩を雨さへしほるおしき比哉
(赤染衛門集~群書類従15)
ちかとなりなる所に、方たかへにわたりて、やとれりときゝてある程に、ことにふれて見きくに、うたよむへき人なりときゝて、これか歌よまむさまいかてよくみむとおもへとも、いとも心にしあらねはふかくもおもはす、すゝみてもいはぬほとに、かれも又心みんと思ひけれは、はきのはのもみちたるにつけて、うたをなむをこせたる 女
秋はきのした葉につけてめにちかくよそなる人の心をそ見る
返し つらゆき
世中の人に心をそめしかは草葉に色もみえしとそ思ふ
(拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
秋にもなりゆく。身にしむ風も堪(た)へがたう、わが身一つに思し知らるるに、見出(い)で給へりし方(かた)の御壺の前栽も、人住まぬ所顔にわざと荒らし給へれば、吹き過ぐる風のけしきさへ心を告げ顔にもの悲しき。千草(ちぐさ)の中に、古枝(ふるえ)忘れぬ萩は、取り分きなつかしう見なさる。
荒れてゆく元(もと)の籬(まがき)を知り顔に古枝(ふるえ)忘れぬ秋萩の花
露けき御袖の上なり。
(恋路ゆかしき大将~「中世王朝物語全集8」笠間書院)
親につつむ事ありて、隠れてゐたる方(かた)の前に、萩のいとおもしろきに露のおきたれば
さは見れどうちもはらはで秋萩を忍びてをれば袖ぞ露けき
(和泉式部集~岩波文庫)
御溝水(みかはみづ)の流になみたてる色々の花どもいとめでたき中にも、萩の色こき、咲き乱れて、朝の露玉をつらぬき、夕の風靡くけしきことに見ゆ。これを見るにつけても、御覧ぜましかばいかにめでさせ給はましと思ふに、
萩の戸におもかはりせぬ花みても昔を忍ぶ袖ぞ露けき
と思ひ居たるを、人にいはんも、同じ心なる人もなきにあはせて、事のはじめに漏り聞えむ、よしなければ、承香殿を見やるにつけても思ひいでらるれば、里につくづくと思ひつづけ給はんとおしはかりて、これを奉りしかば、
思ひやれ心ぞまどふもろともに見し萩の戸の花を聞くにも
(讃岐典侍日記~岩波文庫)
後冷泉院くらゐにつかせ給ひけれは、さとにまかりいて侍りて又のとしの秋、東三条のつほねの前にうへて侍けるはきを人のおりてもてきたりけれは 麗景殿前女御
こそよりも色こそこけれ萩の花涙の雨のかゝるかきりは(イかかる秋には)
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)