七月はかりにわかき女房月見にあそひありきけるに、蔵人公俊新少納言かつほねにいりにけりと人々いひあひつゝわらひけるを、九月つこもりかたにうへきこしめして御たゝうかみにかきつけさせ給ける 後三条院御製
秋風にあふことのはや*ちりぬらんその夜の月のもりにけるかな(*イちりにけん )
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
百首歌たてまつりし時 摂政太政大臣
月みはといひしはかりの人はこて槙の戸たゝく庭の松風
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
しづかなるよの月のよ人々あまねくよむ いまひとつのだいなり
たづねくる人しなければ一人ゐてつきみるほどによさへふけぬる
(橘為仲朝臣集~「橘為仲朝臣集全釈(私家集全釈叢書21)」風間書房、H10)
いはんかたなき心ちにて、秋ふかくなりゆくけしきに、ましてたへてあるべき心ちにもせず、月のあかき夜、空のけしき、雲のたゝずまひ、風の音、ことにかなしきをながめつゝ、ゆくへもなき旅の空、いかなる心ちならんとのみ、かきくらさる。
いづくにていかなることを思ひつゝこよひの月に袖しぼるらむ
(建礼門院右京大夫集~岩波文庫)
題しらす 西行法師
終夜月こそ袖にやとりけれむかしの秋をおもひいつれは
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
雑歌の中に 如願法師
何となく昔恋しき我袖のぬれたるうへにやとる月影
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)
(たいしらす) 平時元
にこり江のあしまにやとる月みれはけにすみかたき世こそしらるれ
(新後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)
近衛院御時御物いみにこもりて侍ける夜、やり水に月のうつれるをみて思ひ出る事おほくて読侍ける 皇太后宮大夫俊成
いにしへの雲ゐの月はそれなからやとりし水の影そかはれる
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)