亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

ヨーロッパは何におびえているのか

2016年02月09日 23時58分51秒 | 金市場
慣れない方は日本時間今朝の経済市況などでNY市場の金価格が40ドル以上も上昇と見て驚かれただろうが、この価格は先週金曜日の午後1時半に終了したNYコメックスの先物取引の通常取引の終値(清算値)1157.70ドルとの比較でのもの。その後の電子取引では1175ドルの高値まで見ていたので感覚的には20ドル超の上昇というのが実態だった。

さて本日の日経平均が900円以上下がったように、世界的にまたリスク・オフ気運が満ち満ちてきた。昨日は目立ったニュースがない中で、欧州市場ではエネルギー関連や金融株から始まった下げが他の分野に広がる形で欧州全域の株式市場が全面安状態となった。一部の投資家が何かを察知して動き始めたのか、はたまた不安心理が単に連鎖したのか、“怯える欧州”発のリスク・オフが世界に波及という展開が8日の市場の特徴に見えた。

今朝見た国際ニュースでは、スペインTVEでは「新たなブラックマンデー」という表現を使っていた。同国株式市場の代表的指数「IBEX35」が4.44%もの下げになっていることと欧州全体が同様の下げに見舞われたことから、こうした表現になるのも当然か。ギリシャは昨日1日で7.8%もの暴落状態となったのは、年金減額など緊縮策に対する国民の不満が反政府デモにつながっており、かのチプラス政権も対応に苦慮しているようで政治不安もにわかに高まっているようだ。そして本日の欧州株は昨日ほどでなないものの続落となっている。

こうした状況の中で再び原油相場が下げ始めWTI原油は30ドル割れの水準で推移している。一部で高まったOPECと非OPECの減産に向けた話し合いへの期待も、やはり各国の政治性を帯びる思惑などもあり非現実性が意識され始めているということだろう。価格低迷の長期化で音を上げ始めたベネズエラなどが、減産に向けた話し合いの場を作ろうとするものの、サウジなどの強硬姿勢がそれを阻止しているようだ。こうして“音を上げる”ところが、エネルギー産業の民間部門に広がり始めると、そこに融資をしている金融部門への懸念につながることになる。原油相場の下げにはそうしたリスク要因が内包されており、株式市場との共鳴あるいは共振性がさらに高まっている。

こうした環境下で中央銀行は何が出来るのかという漠然とした不安感もリスク・オフの背景にありそうだ。日銀のマイナス金利の導入は、金融政策の限界を広く意識させるきっかけになったように思われる。債券では米国債やドイツ国債、通貨ではスイスフラン、ユーロ、円が買われているが、そこに金が含まれているのが昨年まで見られなかった現象といえる。


ヨーロッパ全体の株価の下げは金融株が主導しており、NYにも共通した。ヨーロッパは追加緩和に伴うマイナス金利の拡大の可能性などを悪材料視しているのか、他に何かクレジット・リスクに関連したイベント(出来事)を懸念しているのかという印象だ。業種別ではやはり資源エネルギー、素材関連などへの懸念が強い。

それにしても、10日(下院)、11日(上院)に予定されているイエレン議長の議会証言は、市場への影響を考えると難しい役回りだろう。楽観に傾きすぎても警戒感を感じさせてもだめだろうし、かといって利上げサイクルに踏み込んだ以上、当面はその方向でいくということを言わざるを得ない。そこで便利な言葉が、「指標次第」というものなのだが、果たしてどうなるか。FRB議長のアノマリーはいよいよ現実化する気配ではある。

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1 コメント

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当たり前の世界 (ささやか)
2016-02-10 18:28:03
ハワイで避寒して帰ってきたら、日本はマイナス金利の世界に突入してました。
「当たり前の世界」が壊れちゃった、と思った。

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