金市場でも注目されていた米雇用統計。雇用者数は前月比15万1000人の増加で下方修正された前月の26万2000人増はもとより市場予想の19万人増を大きく下回ることになった。
その一方で失業率は4.9%と2008年2月以来の水準まで下がり、米FRB(連邦準備理事会)が完全雇用と見なす領域に入ることになった。しかも、この低下は「労働参加率」と呼ばれる就業年齢に達している人口のうち現在雇用されている、もしくは職を探している労働者の比率が前月の62.7%から62.7%に上昇する中でのものであることが評価されることになった。1年前に比べて約131万人が新たに仕事に就きあるいは仕事を探している中での失業率の低下は、名実ともに改善を意味することによる。
これは、金融政策を非常にゆっくりとしたペースで進めること(低金利を長く続けること)で、景気後退局面で労働市場から完全に脱落してしまった多くの労働者を労働市場に戻すきっかけとなるとしてきたイエレン議長の見方と整合性のあるものといえる。さらに今回は、賃金が前月比で0.5%増となり12月の2.7%増に及ばなかったものの、前年同月比で2.5%の伸びとなったことも評価されることになった。賃金の増加はインフレ率の上昇につながるとみられるからだ。
こうした雇用統計の結果を受けた市場の初期反応は、雇用者数の弱い結果に米金利が低下する中でドル が売られ金は上向きというものだった。
しかしそれも、わずかな時間でのこと。失業率や平均賃金の予想を上回る結果が判明するや、金利が反発しドルも買われ金市場では一気に売りが膨らむことになった。早い段階で金価格は1150ドルを割れ1045.50ドルまで下値を見ることになった。
ただし、売りが一巡すると一転して買戻しの動きが巻き起こることになる。取引終盤に向けて徐々に値を回復し、結局NYコメックスの通常取引は前日の終値水準である前日比0.50ドル高の1157.70ドルで終了することになった。しかし買いの流れはこの後も止まらず、通常取引終了後の時間外の電子取引でさらに上値を追うことになった。1174ドル台まで上昇することになったが、NY株が取引終盤に向けて下げ幅を拡大しリスク・オフが意識されたことが、金の上昇を後押ししたとみられる。株はナスダックが、このところの成長株のフェイス・ブックやグーグルなどIT系の鈍化懸念から売られたのが大きかった。
モメンタム系のファンドが動きのよくなった金にシフトしたことで、回転が利いてきており、昨年10月の1191ドルを越えると、その先は昨年5月の1230ドル台だが、勢いが止まると急反落もありか。