さて結論から言って昨日、パウエルFRB議長の発言内容がNY金の方向性を決めると書いたが、そうはならなかった。というのも議会証言初日の下院金融サービス委員会での発言内容の大半が、金融政策に関連するものではなく、銀行規制の行方に関するものとなったことによる。
これは下院で多数派を占める共和党議員の質問が銀行規制の行方に集中したためだ。
6月21日のNY市場の金価格は最終的に小幅に続落となった。この日はパウエルFRB議長の半期に1度の議会証言を控え、引き締め継続のタカ派発言を警戒する見方から、市場横断的に売りが先行する流れとなっていた。
NYの早朝から売り先行のNY金は、議会証言が始まる直前に売り圧力が強まり下げ幅を拡大。一時1929.30ドルと3月17日以来3カ月ぶりの安値を付けた。その後、議会証言が始まり質疑応答に移行する中で、逆に買い戻され下げ幅を縮小し前日終値近辺まで回復するも、それ以上の上値は見られずに終了。NYコメックスの通常取引は、前日比2.80ドル安の1944.90ドルとなった。
東部時間午前10時に下院金融サービス委員会にて始まった議会証言での議長の発言は、年内2回の追加利上げの可能性に言及しながらも先週の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見の発言に沿ったもので、概して新鮮味はなかった。そもそも3時間余りに及んだ証言だが、下院で多数派を占める共和党議員の質問が銀行規制の行方に集中し、足元のFRBの利上げ戦略に関連するものが少なかったことによる。
春先に起きた米地銀の破綻からFRBは銀行監督・規制の見直しを検討しており、来月には新たな指針を発表すると見込まれている。その対象は地銀だけでなく、大手銀行の自己資本の上積みにまで及ぶとされている。
共和党はこうした規制を過剰として嫌う傾向があり、規制強化は経済に悪影響を与えるとする。 多くを銀行規制の質疑応答に当てられたことで、年内の利上げ見通しについて、さらなる情報を得ようと注目した向きには期待外れという結果になった。
それでも議長は、あと2回の利上げは「経済がほぼ予想通りに推移した場合にどうなるかをかなり正確に推測したものだ」とした。今回利上げを見送ったことについては、利上げペースを鈍化させ慎重さを保つための措置であり、年末までに必要と感じている追加利上げを決定する前に、より多くの情報を収集する時間を確保するためだとした。労働市場は一部で緩和の兆候が見られるものの、依然ひっ迫していると言及した。
今夜はパウエル議長議会証言2日目、上院銀行委員会がある。上院は民主党が過半数を握っているため委員会も民主党主導となる。したがって、本日は昨日に比べ金融政策に関連する質問が増えると思われる。